教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

EDIX東京 イベントレポート No.1(2024年5月8日)

 2024年5月8日~5月10日まで東京ビッグサイトでEDIX東京が開催されました。EDIXはたくさんのセミナーやプレゼンテーションを聴き、最新情報や授業事例などを知ることができる場であり、「教育の情報化」を目指す仲間たちと会える場だと思っています。

 5月8日にSkyのブースで行われた、北陸学院大学の村井万寿夫 先生の講演「30分で分かる!ICT活用のポイント」に参加してきました。
 村井先生は学校の現状として、ICTの活用は不可欠のものになり日常的に使されていると評価したうえで、「授業の中でICTが効果的に活用されているか」と疑問を提起します。子どもたちの学びを深めるためにICTが効果的に活用されているかを評価するポイントとして、村井先生は以下の3つを挙げられました。

  1. デジタルならではの良さがググっと生かされていること
  2. 電子黒板と黒板の双方のメリットを巧みに組み合わせていること
  3. 学習者の意思決定の場面が意図的に埋め込まれていること


1. デジタルならではの良さがググっと生かされていること

 村井先生は、「デジタルならではの良さがググっと生かされている」かを考えるにあたり、「“良さ”の3段階」を提示します。

  • 代用活用:端末でもできるなら活用する
  • 有用活用:端末を使う方がいいなら活用する
  • 有効活用:端末ならでは活用ができそうなら活用する

 それぞれの活用の段階で、どんな教材が考えられるかということもスクリーンショットを見せて説明してくれました。「この3つの活用の段階をステップアップしていく、次のステップを目指すことが大事です」と村井先生は言います。

 村井先生のお話を聴いて、僕は多くの学校はいま「代用活用」と「有用活用」のステップにいるのではないかと思いました。こうして“良さ”のステップを提示することは、学校がICT活用を見直す機会になるのではないかと思いました。

2. 電子黒板と黒板の双方のメリットを巧みに組み合わせていること

 次のポイントとして村井先生は「電子黒板と黒板の双方のメリットを巧みに組み合わせていること」を挙げました。
 授業で黒板を使わない、そのこと自体が良いのではありません。電子黒板を使うときと黒板を使うとき、それぞれ何がメリットなのかを考えることが重要だということです。
 村井先生は、先生が授業のときに黒板に書く板書が時間の流れを表していると言います。横書きの教科ならば、黒板の左側からだんだん板書していって、授業が進行するにつれてだんだん黒板の右の方に板書が進んでいきます。授業の最後に、子どもたちと一緒にどんなことを考えてきたのか、授業の流れを見られるのが黒板の板書の良さです。こうした板書の良さを理解したうえで、そこに電子黒板を組み合わせたり、意図的に先生が使い分けることが大事だと村井先生は言います。
 授業中にタブレットなどの端末でノートをとっている子でも、授業後に板書を撮影しているところを見かけることもあるので、黒板の板書の良さを感じているのは先生方だけではないと思います。電子黒板と黒板の双方のメリットを巧みに組み合わせることで、良い授業を作ることができるようになると思います。

3. 学習者の意思決定の場面が意図的に埋め込まれていること

 3つ目のポイントは、学習者である子どもたちが、自分で「こうしたい」と意思決定をする場面があることだと村井先生は言います。例えば、「紙でやる?タブレットでやる?」と先生が質問したときに、子どもが「タブレット、使わなくてもいい?」と言えることが大事だということです。
 ICTを使っているように見えても、「先生が使うと言ったときだけタブレットを使いましょう」というふうにしている授業もあります。そうした授業では、学習者の意思決定はされていません。学習者である子どもたちがICTを活用するかどうかを決定する場面を先生が意図的に作ってあげて、「自分たちで選んでいいんだ」と子どもたちが理解するようにならないといけません。
 そのためには、ICTを活用することの良さを先生が知って教えていることが前提になります。そうすると子どもたちもICTを活用する良さがわかって、「ICTを効果的に使おう」と自分で意思決定ができるようになると思います。

まとめ

 子どもたちの学びを深めるためにICTが効果的に活用されているかを評価する3つのポイントを知ることで、ICTを活用した授業の評価をする手立てを学ぶことができた30分の講演でした。


 No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)