2024年5月8日~5月10日まで東京ビッグサイトでEDIX東京が開催されました。EDIXはたくさんのセミナーやプレゼンテーションを聴き、最新情報や授業事例などを知ることができる場であり、「教育の情報化」を目指す仲間たちと会える場だと思っています。
5月9日に行われたセミナー「生成AIは現代教育のブレイクスルー ~ピンチか?チャンスか?現代教育の再定義~」に参加してきました。登壇者は、青山学院中等部の安藤昇 先生、東京学芸大学附属小金井小学校の鈴木秀樹 先生、つくば市立みどりの学園義務教育学校の中村めぐみ 教頭先生の3人です。3人の先生方の実践や、生成AIについての考えをたくさん伺うことができました。メモを公開しつつ、自分の考えも整理したいと思います。
鈴木先生、中村先生、安藤先生の実践発表
最初に、鈴木先生、中村先生、安藤先生がそれぞれに生成AIを使ってどのような授業実践をされているのかを紹介してくださいました。
- 鈴木先生「AIが問い直す教育」(小学校での実践事例)
- 生成AIの登場で教育はどう変わろうとしているのか
- 2023年12月のSuno.AI(音楽が作れるAI)にハマっている
- 脱学校の社会にハマっていた大学院生時代
- 学ぶ:どうやって、いつ、何を、どこで、誰から、誰が、がきっちり決められてしまっている→もっと学びは自由なものだろう、とイリッチは言っている
- 学ぶ:Learning WEB, Oportunity WEBとイリッチは言っていた→大学院生の頃はわからなかった、今はわかる。
- 学校の枠組みの変化
- オンラインで、いつだってどこでだって学べるようになった
- 生成AIは、「誰から学ぶか」と「どうやって学ぶか」を変えつつある=AIと対話しながら学ぶ、というのが起こりつつある
- 小学校で児童が国語を生成AIで学ぶ授業をしている
- 子どもたちは学びたい対象と向き合っている。たくさんある対象の中から、決められたものを学んでいる(教科というカテゴライズされたもの、教科の見方・考え方を学んでいる)
- 本当に学びたいものに出会ったときに、教科の学習で身につけた見方・考え方を働かせたい、となる。
- そうして本当に学びたい対象を学ぶ。そのときに生成AIを使えばいい。
- 結果だけを追い求めるために、AIを使うようになったら、学校はおしまいです。
- ただ要約をAIにさせるんじゃなくて、「何に焦点を当てて要約したんだろう?」と考えるような授業をしたい。
- 教科の見方・考え方を働かせられる子を育てる教育をしたい(恩師・沼野一男先生に教わったこと)
- 中村先生「みどりの学園義務教育学校はI(=AI)CTでワクワクしながら学ぶ」(小学校、中学校)
- みどりの学園義務教育学校は、2040年に世界を変えるチェンジメーカーを育てる
- グランドデザインを作るときに、Copilotで「この教育を受けている子どもたちの様子をイラストにして」と頼んでみた。
- 学校長がグランドデザインの中で、明確に「AIをやっていきます」と書いた。先生方全員がAIを使って、全員が授業をやってください、と言った。
- もともとやっていた課題解決学習のツールの1つとして、生成AIを取り入れていった。「ああ、それだったらできるかも」と先生方が言ってくれた。使ってみて「面白い」と言ってもらうことが大事。
- メロスの人物像を「走れメロス」から読み取り、読み取った人物像を生成AIにプロンプトで伝えて、作中の質問をしたときにメロスらしく返事をするか(8年生)
- 安藤先生
- AIを規制しても仕方ない。人間が今まで築き上げた叡智だってAIのほんの一部。
- どのようにAIを活用するのか、が問題。
- LINEアプリで執事AIを作っている。(安藤先生のYouTubeチャンネルで作り方が紹介されている)
- 先生のやるべき仕事って何だろう?
3人の先生方の学校でのいろんな場面での生成AIの活用がおもしろいです。使ってみることって大事だなと改めて感じました。
AIって教室でどう使うの?
3人の先生方が教えてくれた実践のなかには生成AIがたくさん登場していました。教室でどのように生成AIを使っているのかの話を伺いました。
- 鈴木先生
- CopilotやChatGPTは13歳未満は使えないので、小学校で教えるときには、先生が操作することになる。
- 子どもがその授業にノッてくれないと仕方ない。「それってほんと?」「どういうことなの?」と子どもたちの中に疑問を作り出すような使い方がいい。
- 「どんなプロンプトでやったの?」と疑問を持たせるのがいい?
- 人間の画家とAIの描いた絵を比較する、という授業をやったこともあります。
- 中村先生
- 先生が「生成AIに訊いてみよう」という言い方をしている。小学校課程でやっていた例では、花火の絵を描いているときに、何色にするかを考えていて、「こんな絵を描いているんだけど、何色がいいか訊いてみよう」と生成AIに訊いてみたら、火薬についての説明、花火についての背景情報が出てきてしまったこともあった。
- 中学校で課題解決の授業で活用していた。生徒たちが考えた課題解決の方法が本当に通用するのか、海外でそうした事例はあったのか、など他の視点から自分たちのアイデアを問い返すときに使っている。
鈴木先生の、「それってほんと?」と子どもたちに言わせるような場面を作るところとかすごく大事だなと思いました。また、中村先生の花火の色について訊いたのに関係ないことをいろいろ教えてくれる感じも、AIっぽくておもしろいなと思いました。こういう体験が子どもたちのなかに蓄積していって、上手な使い方をできるようになっていくんだろうなと感じました。
教育が変わる!AIの力を学びの場で活かす方法
次は、AIの力を学びの場で活かす方法についてお話を伺いました。
- 中村先生
- 出てくる事象に感性で応えるような授業ができる。
- 主体的な学びをする
- 鈴木先生
- AIの使い所を探す、というのはやめた方がいいと思います。
- コンクールの作品やレポート・小論文などに生成AIを使うのは不適切という。でも実は、不適切なのは、今までの「コンクールの作品、レポート・小論文」の方だ。コンクールこそ、結果しか見ていない。見るべきは、過程(読む、考える、理解する、感じる、交換する、評価する)。過程を見るのは大変。だからこそ、そこにAIを使えばいい。
- ふりかえりをスプレッドシートに書いてもらったら、「子どもたちがいちばん疑問を持っていたのはどこですか?」と生成AIに探して答えてもらえばいい。
- 安藤先生
- 生成AIは人の能力を加速化するもの。溢れ出る能力をどこかにぶつけたいという天才には、生成AIは最高だと思う。才能がある子に出会って、生成AIの使い方を見ると先生方もわかると思っています。
鈴木先生がおっしゃっていた、コンクールの作品やレポート・小論文に生成AIを「使う」のが不適切なのではなく、そもそも結果しか見られなかった「コンクール・レポート・小論文」こそが不適切だ、というところ、痛快でした。
AIの進化と先生の役割:これからの学校ってどうなる?
最後のトピックは、これからの学校はどうなるのか、ということでした。
- 安藤先生
- 生成AIが出てきたことが、人間がやるべきことを考える機会になっている。
- 私の授業は、教えていない。モチベーションを高める、環境を作る、ということをやっている。そうした役目が重要だと思っている。
- これからの学校は、AIが入ったことによって、教育の本質に戻れると思う。人間にしかできないことが学校の役割だと思う。
- 鈴木先生
- かつての学び Face to Faceから、Side by Sideになっていく。本当の意味で学習者に寄り添うのは人間。そこが先生の仕事。
- 人間が人間であることを求められている。それがAIによって証左されていると思う。
- 中村先生
- 人間とAIの違いは共感性だと思う。
- 児童生徒を見とるところは先生の仕事となる。その子に応じた声かけ、サポートを先生がする。それは人間にしかできないこと。
まとめ
セミナーを聴き終わって、僕自身が生成AIをもっと使っていかないといけないと思いました。使ってみないと、長所と短所が自分でわからない。人から言われた言葉を鵜呑みにするのでなく、知ったように評論するのではなく、自分で使ってみようと思います。強く背中を押してくれたセミナーでした。
さっそく、このセミナーのタイトルの「生成AIは現代教育のブレイクスルー」で生成AI(Copilot)にイラストを描いてもらって、サムネイルにしようと思います。
No.5に続きます。
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(為田)