教育ICTリサーチ ブログ

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書籍ご紹介:『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』

 中学受験指導をされている矢野耕平 先生の『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』を読みました。

 ICTとは直接関係がなさそうなテーマではありますが、ICTを表現や思考のツールとして使う人が増えてほしいと思っている僕にとっては、表現や思考を磨いていくために豊かな語彙をもっているかもっていないかは重要な要素です。
 たとえば、検索ワードの設定ひとつにしても豊かな語彙をもっている方が、絞り込んで検索ができますし、そもそも検索結果で表示されたページの内容を読み込むときにも語彙は必要です。ICTを使って文章を書くときにも語彙がどれくらいあるかは大きな意味をもちます(いろいろ簡単にコピペできてしまうからこそ、というのもありますね)。自分ひとりで書くだけでなく、クラスメイトと読み合ってコメントをしたり推敲をしたりするときには語彙が豊かな方が実りある活動ができると思います。

 「はじめに」で矢野先生は以下のように書いています。

本書を活用して、親(大人)からわが子へことばの面白さを引き継いでやってほしいと願っています。このタイトルにはそういう思いを込めました。ですから、本書の「第一ターゲット」とする読者は、親です。子ども向けの内容に仕上げていないのはそういう理由です。
実際の中学入試で出された問題にまずは親が取り組むことで、わが子に対することばのメンター、先生になってほしいと考えました。そのために、さまざまな言語分野のポイントの解説だけでなく、言語の奥深さを皆様が十分に味わえるよう複数のコラムも収録しています。(p.5)

 目次を見ると、四字熟語(丸暗記の卒業)、かなづかい・送りがな(信用度を左右する)、故事成語(ストーリーに現れる本質の理解)、心情語(語彙の貧困が招くフィーリングプア)などの項目が並んでいます。これらのテーマを考える素材として、中学受験の問題が紹介されています。
 中学受験を合格するための解き方を紹介しているのではなくて、語彙のおもしろさに話が繋がっていくように書かれています。

「国語」という教科に留まらず、子どもの「語彙力」が他教科にも多大な影響を及ぼすのは言うまでもありません。いや、教科学習面だけではありません。社会の中で人とコミュニケーションを構築するに足る程度の語彙を身につけているかどうかはとても大切になるのです。(p.5-6)

 語彙力が高まることで、思考の解像度を高めることができるように思います。語彙を知っているからこそ、外部から取り入れられる情報もあると思います。語彙がなければ感じ取れないこともたくさんあると思います。その代表例がタイトルにもなっている「ヤバい」という言葉なのだと思います。

「ヤバい」の連呼で失われることばがある

当然のことではありますが、人間はことばで思考する生き物です。
手持ちの語彙が豊富であればあるほど、複層的な回路を有して物事に処することができるようになります。反対に、手持ちの語彙が貧困であればあるほど、物事を表層的なレベルでしかとらえられなくなってしまいます。たとえば、何かあるたびにわが子が「ヤバい」「キモい」「ウザい」などといった「決まり文句」ばかりを連呼するようになるのは語彙が不足していることのサインと言えるでしょう。(p.30)

 いろんな語彙をもっていることが、子どもたちが勉強だけでなく周囲の世界から得られる情報の解像度を上げてくれるし、子どもたちが周囲の世界と関係を築いていくときの助けにもなってくれると思っています。
 入口は中学受験であっても何でもよくて、学校の授業などさまざまな場面で、子どもたちが言葉のおもしろさに触れられる機会がどんどん増えていけばいいなと思っています。

(為田)