2024年8月7日に山形市江南公民館で開催された山形市小学校教育研究会 メディア教育部会研修会に、講師として参加させていただきました。このメディア教育部会の研修会には、2018年・2019年・2023年と参加させていただいています。今年度の研修会のテーマは「教育DXに備える授業づくりのアップデート」で、40名ほどの先生方が参加してくれました。毎年参加してくださる先生もいらっしゃるので新しい授業事例紹介を入れつつ、「毎年同じこと言っててすみません、でも大事だから言わせてください」と伝え続けていることもあります。
多くの授業事例を紹介したのですが、何より山形市内で同じ環境にある小学校でICTがどのように授業で活用されているかを見せるのがいいだろうと思い、今年6月に参観させていただいた山形市立みはらしの丘小学校の授業の様子を最初に紹介しました。
山形市では電子黒板を各教室に配備しているので、電子黒板をどんなふうに使っているのかを紹介しました。電子黒板の強みは、大きい画面で自分の取り組んだことや作品などを見せられること、大きい画面上でオブジェクトを直接手で操作することができることだと思っています。また、プレゼンテーションをするときの練習などとしても、スクリーンとプロジェクタの組み合わせより操作性はいいかもしれません。そうした実践に繋がっていけばいいなと思って紹介しました。
もうひとつ、プログラミング教育で、子どもたちがどんどん試行錯誤するようにしてほしい、子どもたちがとにかく楽しくプログラミングをするようにしてほしい、ということを伝えたいと思い、「アルゴロジック」を紹介しました。プログラミングを学べるサイトでは、たくさん問題が出てきて、それに取り組むうちにブロックプログラミングの基礎が学べる、という形式が多いですが、ただ問題を解くだけになってしまうとおもしろくありません。
プログラミングの授業では、子どもたちがふざけて遊んで笑い合ってるくらいがいいと僕は思っています。例えばアルゴロジックで言うと、ロボットがゴールまでの最短距離をプログラミングするだけではなくて、ロボットが行ったり来たり、大回りしたりしてゴールへ行ってもいいのです。ロボットが画面からはみ出してどこかに行っちゃったりしてもいいのです。そんな変なプログラムを書いて動かして友達と笑い合う時間が、子どもたちにプログラミングをする楽しさ=ものづくりの楽しさを感じさせてくれると思っています。
そうした楽しさを感じられたら、子どもたちはどんどん試行錯誤をするようになっていきます。デジタルを使うことの大きな強みのひとつは、試行錯誤の数を増やせることです、とお伝えしました。
研修会の後半に、参加した先生方からコメントと質問をPadletで書いてもらいました。研修会の通知文書に、「演習としてアンケートをとります。QRコードが読み取れるよう、スマートフォンまたはタブレット+モバイルルーターをご準備ください」と書いていただいていたので、会場で投影したQRコードを読み込んでもらって、「コメントをブルー、質問をレッドで書いてください」と指定して書き込んでもらいました。
複数の先生が書いていた質問や、質問への回答とあわせて事例などを紹介したいと思った質問を優先的にその場で回答しました。
研修会終了後に、Padletのコメント機能を使って回答を書き込んでおきました。Padletのデータは残してあるので、継続的に質疑応答の記録も他の参加者のコメントも読むことができ、これもメディア教育部会として蓄積した知見のひとつになればいいなと思っています。
Padletには以下のようなコメントをいただきました。電子黒板やプログラミング教育、ICTの活用などについて先生方が自身の勤務校でも進めていこう、と思うきっかけになったらいいなと考えています。
- ICTの活用目的を職員室で共有していなかったことに気づくことができました。さっそくその機会をつくろうと思いました。
- 電子黒板が秋に全学級導入されることになり、どのようにして活用していったらよいかと思案していましたが、今日の話を聞いて、授業で活用できる視野が広がりました。
- 今日の講話でいちばん共感したのは、プログラミング教育で大事なことは、試行錯誤を学ばせたいとおっしゃっていたことです。(略)私も、失敗してもいいんだよと授業でよく言うのですが、子どもたちは、失敗したくないんですよね。気軽に失敗したり、失敗しても修正すればいいんだと感じたりできる機会をつくることは、本当に大事だなと感じました。
今年度は6月に山形市小学校長会「教育DX推進研修会」 の講師もさせていただいていて、そこでは「こうしたICTを活用した授業づくりのチャレンジを先生方ができるように背中を押してあげてください。多少失敗しても大丈夫、という心理的安全性のある学校をつくるのは校長先生にしかできない仕事です」と参加していた校長先生にお伝えしました。
それぞれの学校の状況や学校経営方針に合わせて、「うちの学校ではデジタルを使ってこういう学びをできるようにしよう」と定め、校内で広げていくことこそ、校長先生の役割だと思います。同じ山形市内の小学校と言っても、それぞれにICTの活用の進み具合も違うでしょうし、クラスの人数も違うでしょうし、地域性も違うと思います。だからこそ、校長先生が自校に合ったデジタルの学びを打ち出す必要があると思いますし、それが教育DXにつながっていくと思います。
そのために、「デジタルによって学校での学びがどんなふうに変わるのか」を校長先生は知らなければならないし、知ったうえで、学校で先生方と子どもたち・保護者の皆様に言葉として語らなければいけないと思います、と校長先生たちに伝えました。
この日僕が紹介したICTを活用した授業実践を聴いて、「うちの小学校でもやってみたいな」と思った先生が、校長先生をはじめ管理職の先生方に「やってみたいんですけど」と提案したときに、「やってみようよ、うまくいったところとうまくいかなかったところをきちんと評価して次に繋げよう」と言えるような学校が増えてくるといいなと思います。
その意味で、山形市で校長会とメディア教育部会の両方で連動した話をできたことが、次のステップに繋がっていくといいなと思います。
(為田)