8月14日に出た、安部総理の戦後70年談話ですが、首相官邸サイトにて全文を読むことができます。4つのキーワードを挙げて、それが含まれているかなどニュースなどでも取り上げられていました。
www.kantei.go.jp
また、「主語がない」などの批判も見られます。日本語は主語がなくても文意が通じますが、英語(をはじめとする外国語)に訳すときには、主語がなければ文法的におかしいことになるので、オフィシャルに訳されている英文を見れば、主語が何かは理解できるのではないかと思いました。
japan.kantei.go.jp
現在は、こうして首相官邸のサイトで日英全文が公開されるので、読み比べることが誰でもできます。でも首相官邸がサイトを持っていなかったときには、どうだったのだろう?というのも考えてしまいます。メディアの方々は、日英対訳を読むことができたのでしょうか。新聞や雑誌などで記事になるときに日英対訳が出ることはあまりなかったと記憶していますので、サイトがなかったころは、我々は「海外からはどう読まれるのか」を理解するのは非常に難しかったのだと思います。
サイトを見ることで、こうして日英対訳を読み、「どんな言葉が使われているのか」「海外からどんなふうに理解されているのか(理解されようとしているのか)」を知ることができるのは、非常に良い時代だと感じます。対訳を読みながら訳し方の違いなどを考えるのは、翻訳の良いトレーニングになると思います。また、使うボキャブラリーの選び方のトレーニングにもなると思います。
海外でどんなふうに報じられているのか、を読むことも簡単にできるようになりました。教材として、東洋経済オンラインの米国の学者8人、「私なら70年談話をこう語る」は非常におもしろいと思いました。
toyokeizai.net
この文章の中にある、5月15日に公開された、8人のスタンフォード大学の研究者が「自らが首相であれば何を述べるか」をテーマに作成した「太平洋戦争終結70周年に考える」についても、英語版を読むことができます。(日本語対訳は、上記の東洋経済オンラインの記事にて読むことができます)
aparc.fsi.stanford.edu
18歳選挙権が実現し、投票権を持つ高校生たち。また、グローバル・コミュニケーションのスキルを持つことを求められていることを考えても、こうした題材に触れておけるサイトは、良い教材になり得るのではないかと思いました。
安倍首相の談話とアメリカの研究者の書いた談話では、どんなところが違うのか、読み比べてみるのもおもしろいかもしれません。トピックを絞り込んで、どのような記述になっているかを読み比べてみるということもできるでしょう。
僕がSFCで学んでいた頃に、政治学の授業でグループに分かれて、1班は外務省、2班は通産省(当時)、3班は大蔵省(当時)、4班はインドネシア、5班は…というふうに、それぞれアクターとして役割を割り振られて、成りきってプレゼンテーションを準備する、という授業がありました。こうしたやり方をしてもおもしろいかな、と思いました。
こういう授業、やってみたいなあ。英語の先生方、社会の先生方、こうした教材の使い方はいかがでしょうか?
…と、原稿の準備をしていたら、翻訳家の山形浩生さんが官邸サイトの英文を日本語に訳したものが、Synodosのサイトで公開されました。
synodos.jp
こうして、英文を日本語に訳してみて、それをもとの日本語文(談話)と比べてみる、というのもグループごとにやってみてもおもしろそうだな、と思いました。
(為田)