教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

2022年度仙台白百合学園学校改革アドバイザー活動を振り返る

 2020年度からの2年間は教育ICTアドバイザー、そして2022年度からは学校改革アドバイザーとして仙台白百合学園の先生方、子どもたちと関わらせていただいています。公立小中学校ではGIGA端末の整備がほぼ完了し、個別最適な学びや協働的な学びのツールとしての利活用に重点が置かれ、高校では新学習指導要領が実施となった今年度の活動を振り返ってみたいと思います。

 昨年度までは主に小学校のICT活用や授業づくり、教員研修、各種アドバイスを中心に活動してきましたが、今年度は中学校・高等学校にも席をご用意いただいて、毎週1回勤務してきました。

 小学校での動きで大きな出来事は、東北大学大学院情報科学研究科ラーニングアナリティクス研究センターと株式会社内田洋行教育総合研究所との共同研究である「初等中等教育におけるラーニングアナリティクスに関する実践的研究プロジェクト」の実践協力校として参画したことでした。センター長である東北大学大学院情報科学研究科の堀田龍也教授のお導きで2021年11月にスタートしたプロジェクトで、2022年度は第3回オンライン授業研究会で幅広い方々に取り組みの様子を参観いただきました。堀田龍也先生には現地で授業参観いただきました。

 佐藤は同じタイミングで東北大学の客員研究員を拝命しました。6月には仙台白百合学園小学校の実践内容を中心にNEW EDUCATION EXPO 2022(NEE2022)に登壇し発表させていただきました。

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 また12月には日本教育工学会(JSET)研究会で発表しました。

LEAFシステム導入による小学校教師の授業設計・展開の変容に関する一検討

 2月には本研究で利用したラーニングアナリティクスシステムであるLEAFシステムを開発・研究されている京都大学学術情報メディアセンターの緒方広明教授御一行に視察訪問いただきました。

 教育データ利活用に関する研究という最先端に関わることで、先生方のモチベーションが高まるとともに、これからの教育をしっかり見通して、より良い学校を創造していくためのマインドセットがアップデートされた1年間でした。

 他にも、小学校の先生方から「非認知能力について学んでおきたい!」とのご希望に応じて選書して読書会を行ったり、先生方の情報モラル教育理解深化を目的とした研修を行ったり、その延長で第5学年児童を対象に授業をしたりしました。

 中学校・高等学校での大きな出来事は、校内授業研究のリスタートでした。様々な事情からしばらく中断されていた、指導案を作成した上での互いの授業を参観し合う機会を再開したもので、後期の半年間で7つの授業研究が行われました。若手から中堅、ベテランまでが積極的に授業を公開し、それぞれの授業には他教科や他校種の先生方もたくさん参加されました。佐藤はこれまで中高の授業を参観する機会がそれほど多くなかったので、どれもとても刺激を受けました。子どもたちのICT活用という点で特に興味深かったのは、中学校の家庭科の授業でした。

 宮城県で水揚げされる魚の特徴や栄養、調理方法、料理などを調べて、自分がその魚になったつもりで自己紹介のプレゼンテーションを作成するというものでした。グループごとに調べる魚を変えて設定し、これまでの学習内容やインターネットの資料をもとにオンラインで共有したプレゼンテーションをそれぞれ共同作業で完成させるという流れでした。小学校からの積み上げがあるせいか、生徒たちは全く澱みなく短時間で作業を進めていました。
 また高校英語の授業では、生徒が教科書を撮影してテキストを抽出し翻訳させることを、先生からの指示なく当たり前のようにやっていました。「これ、普段もやってるの?」と聞いたら「はい。便利なので。」と、何を今更そんなこと聞くの?みたいな対応でした。

 中学校社会科の授業でも生徒によるプレゼン作成がありました。前時に学習や作業について周知され、自分たちで課題を選択して取り組み始めた単元でしたが、2時間目の情報収集・整理・表現に向かう時点で、授業中の先生の発言・指示はほぼありませんでした。確認や手助けが欲しい生徒が個別に先生を呼び、また、先生は見守りつつつまずきそうな生徒に声がけして支援したりしていました。作業中心だから、という点を差し引いても、子どもたちの取組を支えることに徹していた姿が印象的でした。

 先生が授業でICTを活用する段階から、子どもたちが自分たちの学びに向けて、さながら文房具のようにICTを活用することが求められる今、そのスキル獲得も含めて積み重ねられる小中高一貫した取組みは仙台白百合学園ならではで、これからがますます楽しみになりました。

 仙台白百合学園高等学校には広域通信制であるエンカレッジコースがあります。エンカレッジコースでは100名以上の生徒が学んでいます。専属の先生方は子どもたちの学びを進化させようと遠隔でも活用できる授業支援システムを導入したり、これからの通信制学校の変革に対応しようと学びを深めたりしてきました。佐藤はICT利活用を中心に、先生方の研修を担当しました。また、小学校で導入されているプログラミングロボットRoot(iRobot社)を使ったプログラミング授業を実践させていただきました。

 他にも今年度は仙台白百合学園幼小中高の管理職が集い方向性を議論する会議にも月1回のペースで参加し、さまざま提案させていただきました。
 次年度はさらに学園アップデートを推進していきたいと考えています。

(佐藤)