教育ICTリサーチ ブログ

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京都教育大学附属桃山小学校 教育実践研究発表会 レポート No.4(2018年2月23日)

 2018年2月23日に、京都教育大学附属桃山小学校の教育実践研究発表会に参加してきました。テーマは、「主体的に情報を活用しようとする子の育成 ~各教科の学びを深めるメディア・コミュニケーション科~」でした。
 今回は、5年1組の理科の公開授業(長野健吉 先生)をレポートします。5年1組の理科のテーマは、「ふりこの動き」でした。

 5年1組は全員がiPadを持っていて、ロイロノート・スクールを起動していました。長野先生が「思考画面」と呼ぶ画面に、これまでに「ふりこの動き」の学習のなかでやってきた「ふりこの長さ(糸の長さ)」「重りの重さ」「振れ幅」についての情報や、自分で考えた仮説、仮説を確認する実験の結果などが、自分の好きな方法でまとめられていました。
 情報の整理の仕方は、思考のスタイルと同じで、一人ひとり違います。子どもたちの思考画面はみんなそれぞれでした。こうして一人ひとりが違う情報を、違うスタイルでまとめて、思考に使っていくということができるのも、一人1台で思考ツールとしてiPadを持っているからこそだと感じました。
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 授業が始まる前に、長野先生が、「どんなふうに情報をまとめているのかを教えて」と言い、何人かの児童が、自分の思考画面を前に投影して、説明をしてくれました。また、クラス全員分をサムネイル画面で表示して、「○○君、これ、どういうこと?」と質問する場面もありました。長野先生が、「思考画面を説明するのは、人の頭の中をのぞくみたい」と言っていましたが、まさにそんな感じで非常におもしろかったです。

 今回の授業では、パフォーマンス課題に取り組んでいました。パフォーマンス課題は、ふりこの規則性を用いて考察する問題で、そのためにこれまでの実験結果を活用することもできます。一人ひとりのロイロノートにあるこれまでの学びの過程、情報、ホワイトボードに書かれる板書、教室に映し出される提示教材、これらを行き来しながら、パフォーマンス課題に児童は取り組んでいきます。
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 長野先生の授業では、iPadが学びのツールとして完全に定着しています。児童がそれぞれにあった形で情報をまとめ、表現方法を考えていると思いました。教材を提示するための道具ではなく、児童がそれぞれ「考える」ための道具として使っているのがわかる授業だったと思います。
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 こうしてiPad(に限らず、タブレットPCでもノートPCでも同様です)を、「考える」ための道具として使うためには、下準備が必要だと思います。iPadを渡せばできるようになるわけではなく、「どう考えるのか」ということを紙などでしっかり身につけたうえで、手渡すことが重要だと思います。また、キーボードを使っての入力ができるようになることで、思考スピードと出力スピードに差がなくなり、より多くの思考を出力することができるでしょう。ここで、「タイピングができないから使わせない」というのではなく、思考の出力をより促すために、タイピングを練習する時間を設ける(あるいは授業の中でだんだんタイピングで文字を入力させる機会を増やす)などのような授業設計が必要だと思います。

 圧倒的な情報量とディスカッションをしている子どもたちは、楽しそうでした。こういう体験を小学校のうちにできることは、本当に大切なことだと思います。
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 No.5に続きます。
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(為田)