鈴木二正『AI時代のリーダーになる子どもを育てる 慶應幼稚舎 ICT教育の実践』を読みました。自分の中で興味があった部分をメモしておきました。
鈴木先生は、ICTを導入するにあたり、最初に4つの仮説を立てたといいます。「ICT利活用を学習行動の一部として定着させる」ために、何を行えばいいのかを明確に最初に仮説を立て、実践していっているのがすばらしいと思いました。
最初に立てた4つの仮説(p.50):
小学校一年生の頃からタブレットは早いのではないか…?という声も聞かれますが、鈴木先生は逆に一年生からだからこそできる、タブレットとの出会いがあるというふうに書いています。
小学校一年生から学校と家庭で学習に使える文房具としてタブレット端末に親しんだ子どもは、情報モラルについての指導にも素直に耳を傾けるはずです。
大人でも、インターネット上でのトラブルに巻き込まれる人は、もともと情報活用リテラシーが十分ではないケースがほとんどです。本当によくわかっている人は、安全なものと危険なものの違いをしっかり読み取れます。そういうリテラシーを身につけた大人として成長するためにも、学校と家庭が協力連携しつつ、早くからの経験が必要であると考えているのです。(p.142)
この点については、192Cafe 公開イベント #1 私立小が創る未来の学び ~競争時代から共創時代へ~のなかで、さとえ学園小学校の 山中昭岳 先生も「最初からしっかり、教えていくことができる」と言っていました。
blog.ict-in-education.jp
また情報教室の環境、授業を作ることのポイントについても書いています。
テーブルは可動式の小ぶりなタイプを採用し、「ダイナミックに動く情報教室」を目指しました。授業の中での実習の時間には、児童は一人で作業に没頭してもよし、友だち同士で教え合いながら進めてもよしと自由にさせました。
とにかく、教員と児童の双方が「楽しい」と思えることに重点を置きました。授業は一年生から六年生まで各学年週一回とし、一年生から二年生は遊びを通してコンピュータに慣れ親しむことを、三年生から四年生は基礎・リテラシーの習得および情報を取得・共有・交換して発表することを、五年生から六年生は情報の取捨選択・整理をして、自分の都合に合った形に加工して効果的に活用することなどを教えていました。
手探り状態でやってきたとも言えるのですが、児童たちを見ていて驚いたのは、たとえば三年前に六年生に教えていたことを四年生に、五年生に教えていたことを三年生にやらせてもできてしまうということでした。より高度なICTスキルを身につける年代がどんどん下がっているのです。(p.165-166)
最後の「ICTスキルを身につける年代がどんどん下がっている」というのは、長期間に渡って、一年生から六年生までの情報の授業を通して見ている鈴木先生だからこその言葉ではないかと思いました。
「ICT利活用を学習行動の一部として定着させる」ためのヒントをたくさん得ることができました。
(為田)