教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

見てみた:「自分の動画を使って授業をしてきました。」

 湘南学園中学校・高等学校の小林勇輔 先生がFacebookで紹介されていた、動画「自分の動画を使って授業をしてきました。」という動画を見ました。これは、先日のEdvation × Summitでも登壇されていた、「とある男が授業をしてみた」の葉一先生が、湘南学園高校を訪れて授業をした様子を見ることができます。
www.youtube.com

 動画を紹介されていた小林先生が、「学校や教員にとって「映像授業」「授業動画」は説明や文脈を間違えると「敵」になってしまいます」とFacebookに書かれていましたが、敵とは見ていなくても心配していたり、試さずに懐疑的にいる先生がいるなかで、こうした実際に授業のなかで使ってみるというのは、大変意味のあるチャレンジだな、と感じました。
 授業の様子も動画のなかで見ることができます。今回は、復習分野での問題演習教材として、動画を使っていたようでした。実際の授業の流れは以下のようなものだったそうです。

  1. 自己紹介
  2. 葉一先生による練習問題の解説
  3. 問題演習を動画で実施(葉一先生サポート)
  4. 植田先生による授業
  5. 問題演習を動画で実施(葉一先生は生徒に)
  6. 質疑応答

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 タブレットを使う人もいれば、ノートを使う人もいたそうです。このように、デジタルでもアナログでも、どちらを使うこともできる、という学びの環境を作ることが重要だと思います。さらに湘南学園高校は端末を指定していないBYOD方式なので、iPadを使っている人もいれば、ノートPCを使っている人もいます。学びの道具を自分たちで選ぶことができるのは、自律的な学習者を育ててくれると思います。湘南学園が、デジタルをただの自動出題・自動採点の道具として見ているのではなく、学びの道具のひとつとして評価しているように感じました。
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 また、今回は、葉一先生が自分の授業動画を使って授業をしてみただけでなく、湘南学園高校の植田先生も葉一先生の授業動画を使って授業をしたそうです。こうして現場の先生がチャレンジをしてみることも重要だと思います。動画を組み込んでみたときに、これまでと生徒たちの学び方はどう変わるのか。そして、変わった生徒たちの学び方に合わせて、教え方はどう変わっていかなくてはならないのか。授業動画では代替できないことは何が残るのか。授業の本質が問われるのだと思います。

 そのために、まずチャレンジすることが大事です。葉一先生は、動画が学校教育に入っていける可能性を感じた、と言っています。また、今回チャレンジした問題演習のところがいちばんハードルが低い、入りやすいところではないかという評価もしています。まずはそうしたハードルが低いところで、先生がコントロールできる教室という場でチャレンジを積み重ねていくことだと思います。
 生徒の学び方もいろいろだったようで、「1問ずつ区切ってやる子もいたり、一気にやる子もいたり、自分でどんどん進んでいく子もいる」と葉一先生は言っていました。
 湘南学園高校の植田先生が動画の中で言っていましたが、生徒にとって「いちばんいいことって何なのかな?」と考え続けていく学校の姿勢を見ることができたように思います。
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 今回の仕掛け人だった小林勇輔 先生、山田美奈都 先生に、今回の葉一先生とのチャレンジをしてみてのコメントをいただきました。

学校教育における映像コンテンツ(YouTube)利用の新たな可能性を見出せた時間であったと感じています。植田先生の言葉にもありますが、このような挑戦をすることで授業とは何かを「突き詰める」ことが重要なのではないかと感じています。(小林先生)


いつ、何のためにICTという文房具を使うと学びが面白くなるのか、生徒たちと共に模索し続けたいです。より良い形を追究していった先にある「変化」なのであれば、恐れずチャレンジしていくべきだと思うんです。(山田先生)

 湘南学園の今回のチャレンジはとても素敵だったと思います。こうして学校/授業を良くしていく試みがどんどん全国で積み重ねられていくことが重要だと思います。
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(為田)