2019年11月11日に、関西大学初等部を訪問し、授業を見学させていただきました。関西大学初等部は、一人1台のiPadを活用している学校で、Appleのビジョンを実践している教育機関として認定されている、Apple Distinguished Schoolです。
堀力斗 先生が担当されている、1年生の国語の授業をレポートします。今回の授業では、自動車図鑑のページをiPadを使って作ります。図鑑のページには、車の“しごと”と“つくり”の文章を自分たちで書いて載せます。
最初に、堀先生と一緒に文章を考えます。例として、ゴミ収集車の説明をみんなで考えました。ゴミ収集車は、「にもつをはこぶしごとをしています」(しごと)→「そのために」→「にもつをのせるところがひろくなっています」(つくり)のように文章を書いていきます。“しごと”と“つくり”をつなぐ「そのために」のところがしっかりつながるように、時間をかけてみんなで文章を作っていきました。
堀先生は、授業中に「おとなりと話して」と言って、隣同士でどんな文章を作ればいいかを一緒に考える時間をとるので、教室ではたくさんのコミュニケーションが行われていました。1年生なので、まずは話し言葉で考えていくということを重視しているのかなと思いました。
子どもたちに“つくり”のところの文章を発表してもらいました。ある児童が「うんてんせきがひろい」と言うと、別の児童が、「そしたら、にもつがはこべない」と反論しました。そこで堀先生は、「なんで、にもつがはこべないとだめなの?」と問いを重ねます。何度も子どもたちと堀先生の間で問いが重ねられて、みんなで考え話し合って、“しごと”と“つくり”をつなげる文章を完成させました。
みんなでゴミ収集車の文章を作ることができたら、いよいよそれぞれの車について調べて、文章を書いていきます。堀先生は、「書き方は何でもいいんです。大事なのは、“しごと”が“つくり”につながっていることです」と言って、それぞれのiPadで図鑑のページを書く時間が始まりました。
Keynoteで開いた空のページには、「車」「しごと」「つくり」というふうに見出しだけが書かれています。児童は好きな車を選んでページを作っていきます。自分の選んだ車の写真を入れ、文章を書いていきます。救急車だったら、“つくり”には、ベッド、ストレッチャー、サイレン、車載モニターなどがあるということを書いていきます。
検索もみんな自分でしていました。iPadだとキーボードの入力をひらがなにするのも簡単なので、どんどん入力していきます。
文章を書けた児童は、どんどん堀先生のところに持ってきます。パトカーについて書いている児童が、“しごと”は「どろぼうをつかまえること」で、そのために“つくり”として「サイレンがついている」と書いてきた児童に、堀先生は「これ、“しごと”と“つくり”とどうつながっているの?」と質問していました。授業を通して、このような論理の繋がりをしっかりと意識させるやりとりがとても多いと感じました。
関西大学初等部は、思考スキルの習得に特化した「ミューズ学習」をはじめ、「自ら考える力」の育成に取り組んでいるのですが、1年生でも、こうして言葉を丁寧に使うことを通じて、みんなで考えるのが楽しい雰囲気ができているのが、とても素晴らしいと感じました。
堀先生は、紙よりICTを活用することによる利点として、「おかわりしやすい」と言っていました。何度も試行錯誤をすることも、新しいページをどんどん作っていくことも、両方「おかわり」です。紙でやると、新しいものを配らなければならないし、消しゴムで消して文章を書き直すのも大変です。こうしたところは、ICTを活用することで、子どもたちの表現活動をどんどんサポートすることができます。
授業の終わりには、堀先生は「続きをやりたい人は、休み時間にやってもいいよ」とも言っていました。自分たちでどんどん「おかわり」ができるので、休み時間にどんどん進めていくこともできます。
一人ひとりの思考や表現のツールとして、iPadが積極的に活用できている授業を見ることができたと思いました。
No.2に続きます。
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(為田)