教育ICTリサーチ ブログ

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湘南学園中学校高等学校 訪問レポート No.5(2020年10月28日)

 2020年10月28日に、湘南学園中学校高等学校を訪問しました。情報科・入試広報主任の小林勇輔 先生と、国語科・ICT主任の山田美奈都 先生に校内を案内していただいた後で、生活指導を担当されている斉木翔平 先生にインタビューをさせていただきました。

 斉木先生は、SNSでの問題や、高価な情報端末を持ってくるリスクなども考えて、当初は導入に大反対だったそうです。学校の方針として決まったからしかたない、というふうに否定的に思っていたそうですが、だんだん捉え方は変わっていったそうです。

斉木先生:1年間使ってみて、すごくいいものだなと思っています。安全面については、危惧していたよりも、子どもたちの方が、しっかりとコントロールして線引きして使ってくれている印象です。BYODなので端末は自分のもの。自分のものだと大切に使います。これが学校のものだと、もう少し雑に使うかもしれないな、とは思っています。故障については、1年半クラスを担当していますが、1件くらいです。ほとんどありません。

 当初心配されていたリスクなどについては、実際に生徒たちが情報端末を持ってみて、どうだったかを質問してみました。

斉木先生:導入するにあたっては、メディアリテラシーについて心配していました。悪戯などが心配で、導入してみてトラブルがなかったわけではないですが、BYODを導入していなかったら、そうしたトラブルはないのかというと、そういうわけでもありません。学校は、そういうことを教えていく場なので、社会に出るまでの間にメディアリテラシーを学んでもらう、そのための仕組みにBYODがなっているのではないかと思います。当初の考えとは方向性も変わりました。いまはどちらかというと積極的に使えるところは使っていこうと思っている。

 例えば、具体的にどんな場面での活用が効果があると思われているか、訊いてみました。

斉木先生:授業とかホームルーム運営で活用しています。クラス関連の情報共有も、クラスのなかにいくつか小さいグループがあって、一つに見えても、それぞれに独立しています。だからこそ、クラスみんなで見られる場がある意味があると思います。また、言葉で自分の思いを伝えられない子が多くなっていますが、そうした子たちとのコミュニケーションもオンラインでできるようになってきています。クラス運営では、はっきりプラスだと思います。オンラインだけになるのでなく、直接の関わり合いも今まで通り大切にしています。BYODの導入によって担任業務も簡素化され、さらに生徒との距離も縮めることができているので、マイナス面は全然ないと思います。

 授業中、あまりに自由に情報端末を触れるので、別のことをしていたりする生徒がちらほら見えて、それがいやだという先生はいらっしゃらないですか、と質問してみました。

斉木先生:授業中に寝ているのと動画を見ているのと、どっちがいやかという話かと思います。授業に注目させられないのは、教員力の課題だと思います。ただ、ゲームは禁止にしています。ゲームがもつ中毒性については注意しています。

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 最後に、これから一人1台の情報端末をもたせようと思っている学校や先生方に向けてメッセージをお伺いしました。

斉木先生:やってみてから否定するべきだと思います。やってみて、良いところは吸収していくことだと思います。大人は子どもたちにそういうことを求めているのに関わらず、大人たちが踏み込めていないというのがあると思います。

 最初はBYOD導入に積極的ではなかったという斉木先生から直接お話を伺えたのはとても良かったと思います。「ICTを活用してどんなことができるのか」ということを、先生方もどんどんやってみることが必要だし、良いところを吸収していくことが重要というメッセージは、湘南学園中学校高等学校が、保護者に向けて発信しているメッセージと同じだし、そうして作っていく学校文化のなかで情報端末を道具として使いこなす生徒たちが育っていくといいな、と思いました。

(為田)