2020年10月28日に、湘南学園中学校高等学校を訪問しました。情報科・入試広報主任の小林勇輔 先生と、国語科・ICT主任の山田美奈都 先生に校内を案内していただいているなかで、「生徒たちがあまりに自由に情報端末を使えることで問題はないのですか?」と質問をしてみました。多くの学校で研修講師などをしていると、質疑応答のときに「一人1台の情報端末を持っていて、常に触っていても平気な環境で閲覧制限などをかけなければ、授業中に関係ない動画を見たり、関係ないサイトを閲覧したりするのではないか?」と質問をされることが多くあるからです。
しかし、「生徒たちがあまりに自由に情報端末を使えることで問題はないのですか?」という質問に対して、小林先生も山田先生も「そもそも授業に集中していない状況だったということが、ICTによって可視化されただけ」と言います。
たしかに、ICTを使っていなくても、別のことをしていたり、集中していない生徒のことは、教壇から教えている先生方はすぐにわかっていたことではありますし、可視化されたその状況をどう変えていくかを考えるほうが建設的だとお話を聞いて思いました。
「ただ、そうした学校の雰囲気というか文化は、担当の先生だけではなくて、管理職も含めて覚悟がいることなのではないですか?」と続けて質問すると、2019年2月に学校から保護者向けに出された、「生徒所有ICT端末活用について」という文書について教えていただきました。この文書は、小林先生・山田先生が“ガチガチiPad”だったとふりかえるトライアルの1年を経て、学校としてどのように使っていくのかということを保護者の皆さんに伝える内容になっていました。こうした校長先生の言葉を保護者に対して伝えていき、理解を求めていくことはとても大切なことだと思います。
当初、同一端末、一斉管理でのICT機器導入を想定しており、この形態でのトライアルを実施しました。その理由としましては、学習以外に使えないように制限をかけたいという思いからでした。しかし、残念ながら、実際にはゲームや動画などを学習以外で利用している姿が見受けられました。だから導入をすべきではないという考え方ももちろんあります。生徒のICT委員会をはじめ、そのような事態を招いている原因についてもさまざまな場面で議論を重ねました。その結果、時代の変化を鑑みても、このことを理由に効果的に利活用している生徒たちの可能性にフタをしてしまうのはあまりにもったいないという結論に至りました。ご心配の声も多々あろうかと存じますが、先延ばしにしても「課題」は解決するわけではありません。社会に出ていく生徒諸君の在学中にだけ目をむけるのではなく、社会で活躍するためのモラルとスキルをつけられるような教育に尽力いたします。
この後の、2019年4月には、高校1年生・2年生に向けて学校とICT推進委員会・生活指導委員会が出した「2019年度 ICT化に関わる約束について」という文書も配布したそうです。10の約束が参考になる学校も多くあるのではないでしょうか。
学校が、ICTをどのようなものとして捉えているのか、それを保護者にどう伝え、どのような学校文化を作っていくのか、ということに向き合っている文書だな、と感じました。これから一人1台の情報端末を導入する学校や自治体にとっては、参考になる文書ではないかと思います。
No.5に続きます。
blog.ict-in-education.jp
(為田)