安宅和人『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』を読みました*1。サブタイトルに「AI×データ時代における日本の再生と人材育成」と書いてあるし、3章「求められる人材とスキル」と4章「「未来を創る人」をどう育てるか」のところは、学校でどのようなことを学べばいいのか、というヒントに溢れていると思いました。先生方にさまざまな機会にご紹介したいと思うとともに、自分としても、もっとスキルを高めていかなければいけないと思うところもたくさんありました。以下、メモを公開します。
4章 「未来を創る人」をどう育てるか
3章に続いて、4章でも「未来を創る人」をどう育てるかについて書かれています。そのなかで、「未来を仕掛ける人を育てる6つのポイント」(p.224-241)の部分は参考になることが多そうです。
未来を仕掛ける人を育てる6つのポイント(p.224-241)
- 意思、自分らしさ、憧れ
- 「その人なりの心のベクトル」を育てることが教育の最大命題の1つであることを強く認識し、その視点で教育課程のすべてを刷新、再構成すべき。
- そのうえで、以下の4つを推進する。
- 何を教えるにしても作業内容ではなく意味、目的を主として教える。
- スポンジのように引っかかりなく吸収することよりも、体験する、ものを読む中でその人なりに感じること、引っかかることを優先し、そこから生まれる気持ちを育てる。
- さまざまな近代・現代に異形を成し遂げた人の、過度に偶像化されていない話に触れ、考えさせる。
- 明らかに「その人らしい知覚と深み」の育成を阻害しているしくみを取り除く。
- 皮膚感を持って価値を生み出すことを理解する
- 仕事=力×距離(つまり、「どれだけ大きな存在に対して、どれだけ勢いよく、どれだけの変化(距離)を引き起こしたか」)
- サイエンスの面白さと意味への理解を深める
- 夢×技術×デザイン視点で未来を創る教育を刷新する
- 手を使う喜び、手から学ぶ喜びを。(これまでの図工、技術・家庭、美術、芸術の授業を刷新する)
- データ×AI(前提となるインターネット、その延長にあるロボティクスも含む)を学ぶ理由付けを与える。それにより、やる気と妄想が生まれる。これらの技術が世の中を変えている実例を多く見せ、実感を持ってもらう。
- データ×AI技術を道具として使うだけでなく、作る側、提供する側、直す側の視点を持ってもらう。MOOC、その他の自主学習やファブ的にさまざまなことができる場も案内する。
- 夢を描く部分を養成する。
- 作ったり検討する対象が絵やモノがほとんどで、風景、景観(ランドスケープ)に対する視点が十分に持ち込めていない。
- 道具としての世界語を身につける
- 言いたいことをソリッドに伝える力こそを養成すべき。そうすることで母国語(日本語)の表現力も格段に上がる。
- アントレプレナーシップの素養
- アントレプレナーシップ素養は、希望者だけでも高校、大学教養ぐらいまでの間にある程度学べる環境を作っておくべき。
- 基本的な概念を学ぶと共に、時折、実際に事業を起こした人と接し、肌感覚からでも学ぶのが望ましい。簡単な馴染みがあるかどうかだけでも、将来的に何をどういうふうに当たったらよいかを掴む大きな助けになる。
ここを読んでの個人的な感想は、「プログラミングはもっとがっつりやったほうがいいだろう」ということ。MOOCやその他の自主学習やファブ的な場なども具体的に書かれていますが、プログラミングが必修になることにもっと開き直って取り組むことができれば、いいところまでもっていける学校もあるのではないでしょうか。
見学させていただいたことのある学校では、高校生たちがMOOCでどんどんアメリカの大学のオンラインコースでPythonなどのプログラミングを学んでいて、自分でどんどんプログラムを組んでいました。学校は、そうした場を整え、社会と繋いだり他校と繋ぐときのサポートをしてあげる、という形で取り組めばいいのではないでしょうか。
また、以前に授業を見学させていただいた、掛川西高校の事例などもこれに近いように思います。
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どんどん未来に向かって進んでいこうとする若者の背中を押してあげられるような学校/授業ができるといいな、と思います。学校の先生方に多く読んでいただきたい本です。
(為田)