教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

『学校アップデート ―― 情報化に対応した整備のための手引き』読書感想文大会 No.1

 東北大学の堀田龍也 先生と東北学院大学の稲垣忠 先生と宮城教育大学の安藤明伸 先生とご一緒させていただき、弊社フューチャーインスティテュートの為田と佐藤が執筆した書籍『学校アップデート ―― 情報化に対応した整備のための手引き』が2020年4月30日に発売されました。

 おかげさまで、多くの方にお読みいただき、FacebookTwitterなどで感想を書いていただいている方も多く、大変うれしかったです。
 感想をシェアしていただくフォームを作り、「読書感想文大会をしましょう!」という呼びかけにも、全部で13件の回答をいただきました。本当にありがとうございます。そのまま全文、掲載させていただきます。

『学校アップデート』を読んでの感想を教えて下さい。

 最初に、『学校アップデート』を読んでの感想を伺いました。こうしてお寄せいただいた感想は、僕にとっても非常に学び多いものとなりました。

  • アマゾンで単行本を予約注文していましたが、届くまで我慢できずに発売日にKindle版も購入してダウンロードし、イッキ読みしました。どのページも面白く本当に勉強になりました。特に印象に残ったのが「アジャイル」の考え方です。学校の取り組みをアップデートしていくという考え方、本当に大切だと思いました。どうしても学校は「慎重に」「計画を立てて」「全員が同じ、平等に」「うちの学校だけできない。周辺の学校と足並みを揃えて」などの考え方に陥りがちです。そうして、今回のコロナのようにICTの遅れやオンライン授業の取り組みの遅れが生じます。そんな学校の「足並み揃えましょう」文化が、逆に「格差」を生み出していく皮肉な結果になってしまいます。この本には、そんな「格差」が生まれつつある、「コロナの世界」、そしてこれから待ち受ける「アフターコロナの世界」に向けて、私たち教師がポジティブに、全力で、精一杯できる「事例」がたくさん載っています。ICTの普段使い、プログラミング教育、情報活用能力、環境整備など、自分が取り組んでいける、自分たちの学校で取り組んでいけるヒントになる事例がたくさん載っています。この本を職場で同僚や管理職などに広めて、多くの方の参考になるようにしていきたいです。素晴らしい本をありがとうございました。(塩谷直大@北海道斜里町立斜里小学校)
  • これから「教育の情報化」に向けて頑張りたいすべての教師に読んでもらいたい一冊だと思いました。本の構成が「教育の情報化の必要性」→「先行実践」→「必要な準備」という流れになっていて納得しながら読むことができた。また,ICTの環境整備だけでなく,情報モラルやセキュリティ,研修会などによる人材の養成など必要なことが多岐にわたっていたことも再確認する機会になりました。学校が社会の標準に追いつくことが必要なことは誰しもが感じているけれど,一体どうすればいいのか…という悩みに答えてくれるような一冊だと思いました。(齋藤純@仙台市立広瀬中学校)
  • 学校のアップデート。確かにとても魅力的なものばかりである。これらが学校に整備されていくことで、効率化できたり、より深い学びへと子どもたちを連れて行くことが出来るであろう。しかし、同時に課題もたくさんあるように感じる。
    1. 金銭面の問題
      • パソコンや電子機器はどんどんアップデートされて機能が追加されていく。無料で対応できる範囲もあるが、ある一定のアップデートを超えると、その機種ではサポートがされなくなっていく。例えば、Windows7のサポート終了などは最近のICTの面で学校で悩まされた方も少なくないと思われる。その際に、OSだけでなく本体やCPUそのもののアップデートが必要となり、それによりアプリやOSのUIや仕様が変わっていくのがITの世界の常であると考える。そのスピードに学校とその予算がついていくかどうかという点で課題を感じる。著しいITの変化の中では、2~3年で新世代のものに変える人も少なくない。敏感な人は、新機種が出る度に買い替えている人々も居る。今後小学校6年間で学ぶ期間だけでも、1つのOSの世代が始まり、終わりを迎えるのではないかと思う。そのような中では、最初の1年生で学んだ「基本的事項」が学年があがると急に使えたり、禁止されていたことが急に解禁されてしまう可能性もある。その度に、教員は対応に追われてしまい、授業そのものへ注ぐ熱量を削いでしまわないだろうか。
    2. カリキュラムに対する課題。
      • インターネットや学校外の情報に触れれば触れるほど、カリキュラムを超え出た学習が生まれる可能性がある。例えば、ただひたすらに昆虫に興味をもちその生態について学びたがる子どもが出てくるとしよう。その子にとって、眼中に興味のある昆虫の生態について、インターネットやオンラインサービスを浸かって、専門家に質問していくことができるのはとてもプラスの側面である。しかし、45分という授業時間や単元の時間数などによって、それはどこかで打ち切らなければならなくなってしまう。彼・彼女のために必要な学びは昆虫の生態について深めさせることなのか、それとも英語会話のアクティビティをさせることなのか、教員側が応えを出していくことになってしまうだろう。そこに怖さや、難しさ課題が潜んでいるのではないかと思う。
    3. 情報と「真実」・「正しさ」などに対する批判的思考の必要性
      • インターネットを使う中でメディアリテラシーをどれだけ養成したとしても、広告や情報操作、サーキュレーターによる厳選など、確実に誰かのバイアスのかかった情報を入手する機会が増加する。例えば、日本の歴史における北方領土問題についての問題について、子どもたちに、誰のどこまでの意見を見せるのか、教員側というよりも政府側がとても頭を悩ますことになるだろう。公立学校においてその情報の制限をかけることが是なのか非なのか。その点についても考えていかなければならないと思う。
        (あさこん@特支学級担任)
  • noteに「本書の書評」を書いたので、そのURLです。感想文でなくて申し訳ありません。(hohohoo1125 )
  • 学校を「世間並みに」アップデートしよう…情報化、1人一台タブレット、eラーニング…もう何年も前から言われていたが、なかなか進まなかった。
    昔は学校で新しいことを学ぶ、学校に行けば新しいことを知ることができる…学校はそんな場だったはず…それがいつの間にか世間からも置いてけぼりを喰らうような状態に…
    コロナの影響で、オンラインの学びに注目が集まっている。オンライン授業をどうするか…が大事なのではなく、学校自体をアップデートすることが大事だ。
    もちろん予算云々の関係があるから、パッとできることではないけれど、この本は様々なアイディアをくれる。(藪田顕嗣@瀬戸SOLAN小学校)
  • 【アップデートが必要なのは?】
    これまで通りはもうない。時代の流れはコロナによって加速した。
    「今、何が必要か?」という視点だけではなく、「これからどうしたいか?」という、未来のことを含めてデザインしていかなければならない。(井上拓也@公立小学校教諭)
  • これからの学校教育を考えていくことについて、具体例も交えて、分かりやすくまとめられていました。自分の立場で何ができるのか。何をしなければいけないのかなどを読み進めながら考えました。まず、同じ職場の方々に勧めて、一緒に内容を話し合うことができればと思いました。若い先生方との勉強会でのテキストとしても良いのかなと思っています。(遠藤 浩志@仙台市 八乙女小)
  • 学校を、どのような視点で変革していくのかについて具体的に示されておりイメージがついた。コロナのこの時期だからこそできること、新しく挑戦したいことなどが思いついた。(木村明憲
  • 教員、教育委員会、教育センターだけでなく、家庭まで、それぞれの立場で、今後の教育について必要なことや、今検討されていることが記載されており、非常に読みやすい構成でした。特に家庭では教育委員会でどのようなことを検討されているかは分かりません。基本的に関わりがないため、学校アップデートを読むことで理解することができます。個人的には地域との連携についての記載もあり、街づくりにも関わる本でもあると感じました。(末永幸@テクノ・マインド)
  • 「学校アップデート」これがなかなか進まないことを実感しています。それは「こうしたらいいんじゃない?」という反省や振り返りを行事や授業研究会などのたびに行っている学校がほとんどだと思いますが,それを基に以後の活動を「とても細かいところでアップデート」しているのけれど,「大きく大胆にアップデート」することに躊躇してしまっている現状があるからだと思います。これまでの「学校」「教育」を「アップデート」することに,不安や戸惑いを隠せない自分もいます。それほど「学校アップデート」に書かれていることは大きな変化なのだと思います。
    教育の情報化は,次代を担う子供達にとって間違いなく必要であるとほとんどの教師が思っているはずです。でも自分が使えるものではないことや主導権を譲ってしまうことへの不安,将来的に必要なことはわかっているがそれをより効果的に使うようにできるための「基礎的学力」をつけていくのだというある種の「逃げ」もあるのかなと感じています。使えるものを使って学んだ方が効果的なことは当たり前なのですが。
    自分を含めてこれまでの学校教育の中では当たり前だったことが,実はそれほど根拠がないものだったり,新たな方法(例:葦手先生のスクールタクトを使った朝の会)の方が成果を出していたりしていることをもっと教師自身がフィルターをかけずにみることが必要なのではないかと思いました。
    「教える」ということから「学びを支える」という教師の意識の「アップデート」が一番難しいのかもしれません。「教えようとすればするほど,教えたいと思えば思うほど,話さなくなり,離れていく子ども達」,教師は「話させたい」「寄り添いたい」と思っているのに,その逆になってしまう。ICT活用が教師の意識やこれまでの学校を「アップデート」するための特効薬の一つ(あえて「一つ」としておきます。)だと思いました。
    自分がもっともっと「アップデート」を繰り返す「アジャイル」できる教師にならなければならないと思います。(岩城豊@中山町立長崎小学校)
  • コロナウイルス対応のために課題配布、電話対応しかできな現状なので、オンライン授業や動画配信、HPの活用などができないか探究している今の私にとって、オンライン授業などの形だけでなく、教育の根本・本質を考えることができました。今は、緊急事態なので形ばかりが注目されるが、これからの社会を見据えて、子どもたちに必要な力をつける。そのためのICT機器の活用なんだと学びました。
    今、社会の関心が高まっているので、この機会に上手く学校アップデートができたらいいなと思いました。(小路健太郎@千葉県公立小学校教員)
  • 多様な学びが写真で紹介されていて、自分の学校にもやってみたいと感じた。
    ICT整備が、さらに増えることに期待する。また、オンラインの良さ、オフラインだからできる学びを模索しながら、授業を作っていきたい。(矢崎ひさ@栗原市栗駒中学校)
  • 学校のICT化に必要な考え方、物理的な準備が順を追って整理されており、各校の取り組みに照らし合わせやすいと感じました。この部分が我が校には欠けているな、という点も気づきやすい書き方だと思います。(KT)

 ご回答をいただきました皆様、本当にどうもありがとうございました。No.2では、みなさんが考える「学校アップデート」について伺った回答をまとめたいと思います。

 No.2に続きます。
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(為田)