教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

教材に使えるかも:「マル秘展 めったに見られないデザイナー達の原画」で見たデザイン過程

 21_21 DESIGN SIGHTへ、「マル秘展 めったに見られないデザイナー達の原画」を見に行ってきました。
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 日本デザインコミッティーに所属する幅広い世代のデザイナーの、デザインの過程をスケッチや図面や模型などの形で見ることができます。普段、あちこちで見ているさまざまなデザインは、こうしてたくさんの試行錯誤のうえに成り立っているのか、というのにため息が出ました。企画展の趣旨として「それらを間近で目にすることは、今後のものづくりを担う人々、特にデジタル化したものづくりを前提とする世代にとって、刺激と示唆にあふれた体験になることでしょう」とサイトに書かれていますが、そのとおりだと思います。
 一人1台の情報端末が小中学校に配備され、プログラミング教育が必修化をされる、その先には、「表現、思考手段の拡充」があると思いますし、それは「問題解決」と「ものづくり」へと繋がっていくと思います。
 21_21 DESIGN SIGHTへ足を運んでもらって実物を見るのがいちばんだとは思いますが、それはなかなか難しいと思います。ただ、このマル秘展は、SNSでの発信を推奨されているので、ぜひ「#マル秘展」「#marhi」をキーワードに検索をかけてさまざまな展示を見ていただければと思います。
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 僕は、自分で見て、「おおー」と思って、「これは先生方に見せてディスカッションとかしてみたいな」と思った展示を紹介していきたいと思います。

グラフィックデザイナー 松永真さん

 グラフィックデザイナーの松永真さんのところにあった、数々の試行錯誤の過程に驚きました。
 教育業界を引っ張る、ベネッセのロゴです。テープで貼ってさまざまなポージングが試されています。
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 ティッシュのスコッティや男性化粧品のウーノも、松永さんのデザインです。いくつもいくつも作って、試して、少しの違いを認識して、作り直して、と繰り返してデザインができているのだと感じます。
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 バンダイコーポレートロゴも、松永さんのデザインでした。いろいろと違うバージョンのものもあります。見慣れているロゴとは全然違うものが見られます。
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照明デザイナー 面出薫さん

 照明デザイナー 面出薫さんのところでは、面出さんが手がけられた東京駅丸の内駅舎ライトアッププロジェクトの模型が展示されていました。
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 照明のデザインの背景には、綿密なイメージとメモがあります。いきなり模型にたどり着いているわけではもちろんありません。こうした過程が見られるのがこのマル秘展の良さだと思います。
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 同じく面出さんが手がけられた、草津温泉の灯路計画での最初の方の段階のメモを見ることができました。文字だけでなく、イラストや絵なども組み合わせてイメージを膨らませていく。こうした過程は、デジタルだけではなかなかまだ難しいように思います。でも、「手を動かして、たくさん書いて、そこから磨き込んでいく」というこの過程を知ってもらって、とにかく手を動かして量をこなすこと、というのは大事だと感じました。
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グラフィックデザイナー 佐藤卓さん

 グラフィックデザイナー佐藤卓さんのところでは、NHKエデュケーショナルロゴマークスケッチが展示されていました。
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建築家 隈研吾さん

 2020年3月に開業した、JR山手線の高輪ゲートウェイ駅の駅舎は、隈研吾さんのデザインです。その過程も展示されていました。和の雰囲気が漂うと言われる駅舎、僕はまだ見たことがないのですが、こうした過程を経てできているのです。

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プロダクトデザイナー 柴田文江さん

 メガネのデザイン過程も柴田文江さんのところで展示されていました。本当に小さい部分でも変えて、見て、吟味して、どちらがいいかを決めていく。そこに論理が詰まっているように思います。こうした作業の上に、いま自分たちが使っている製品があるのだと感じました。
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まとめ

 とても刺激を受けた展示会でした。僕が仕事としている、「教材設計」も「カリキュラム設計」も「授業設計」も、広い意味ではデザインです。ここで見たのは、試行錯誤の大切さであり、「量が質を生む」という言葉の意味だったと思います。こうしていくつもいくつも作っていくことの大切さというのは、第一線のプロフェッショナルがやるほどできなくても、初等中等教育の段階で、作文でもプレゼンでも図工でも美術でもプログラミングでもいいので、経験しておく必要はあると思います。こうした「試す量を厭わない」というマインドセットは絶対に必要だと思います。
 どこかで、いつか子どもたちに見せて説明をしてあげたくなるような展示が多かったので、クラウドにいつでも取り出せるようにフォルダを作ってわかるようにしておこうと思いました。

(為田)