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九州大学ビジネス・スクール(QBS)「リーダーシップ論」 講義レポート (2020年6月4日)

 2020年6月4日に、九州大学ビジネス・スクール(QBS)の松永正樹 先生が担当されている「リーダーシップ論」の授業をオンライン参観させていただきました。今回の授業は、5回め(Day-5)でテーマは「リーダーの特性 III(加点思考と反逆性)」でした。

オンラインの授業フロー

 リーダーシップ論の授業全体のフローとしては、以下のようになっているそうです。

  1. 事前にYouTubeないし九州大学の学内LMS(Learning Management System)で教材動画を視聴
  2. 時間割の開講日時にZoomでリアルタイム授業
  3. 授業後はslackで振り返りやディスカッションの続きをやりつつ、次週の動画を各自視聴

 下に示す松永先生からいただいた「オンライン反転学習フロー」にもあるように、基礎知識については事前に動画で見ておいてもらって、リアルタイムの授業では教材動画のコンテンツをおさらいしながら、「同時に集まるからこそ実施できるディスカッションや質疑応答を中心に」した授業になっていました。実際に、このオンライン反転学習フロー全体を体験させていただきました。
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授業前

 今回の授業は、「リーダーの特性 III(加点思考と反逆性)」がテーマで、10分ほどの動画が4本と、動画のなかで触れられる「Six Thinking Hats」を使った自己診断に使うExcelワークシートが、事前に松永先生から、課題として配布されました。
 動画はPowerPointのスライドに合わせて、松永先生が説明をしていく形式をとっていました。10分ほどで次の動画に変わっていくのは、リフレッシュができてよかったと思います。
 事前に動画を見て、「Six Thinking Hats」の自己診断も行ってから、当日の授業を迎えました。

授業中

 授業時間は、18:30から20:00まででした。Zoomにログインすると、受講者は50名ほどでした。松永先生は、通常のカメラの他に、受講生がどんな画面を見ているのかを確認するためのアカウントでもログインしていました。全員カメラをONにして、顔が見える形で授業がスタートしました。
 授業がスタートするときに、チャットの中で質問を拾うボランティア2名を決めていました。一人でオンライン授業をするとよくあることですが、先生が授業進行しながらチャットの内容を追いかけることはとてもむずかしいと思います。そのため、こうしてボランティアを置いて、チャットの流れを見ていてもらい、ときにアシスタントとして授業にチャットの内容を入れてもらうのはいいアイデアだと思いました。この日の授業では、「先生、チャットで○○さんから、こういう観点でのコメントが入っているのですが…」という具合で、授業をしている松永先生に、チャットから質問やコメントなどを選んで投げかけるという役割をボランティアの方がしてくださっていました。
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 事前に動画で見ていた「リーダーシップ論」「リーダーに求められる特性とは?」ということが松永先生から説明されていきます。印象に残ったのは、「弱みを変える方が大変。強みにアドオンするほうがいいのでは?」という部分で、これは今回のコロナウイルス対策で休校となり、オンライン授業を行っているすべての教育機関にも当てはまることではないかなと思いました。

 この後、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使って、4人グループに分かれて、事前に行ってきた「Six Thinking Hats」の結果を共有しました。
 6つの色ごとにスコアが出るようになっている「Six Thinking Hats」ですが、僕の最高スコアはBlueでした(ダントツ)。Blueは、「プロセスや構造への志向を表す。ものごとを進める上での仕組みを整えることに喜びを覚える。 あるアイデアについて議論するときは、アイデアの内容そのものよりも、まずどのように議論を進めるべきかを考える」となっています。
 あとの5つの色はほぼ同スコアでしたが、最低スコアはRed。Redは、「情熱や共感への志向を表す。ヒトの感情に対して敏感。あるアイデアについて議論するときには、関係者がそれに対してどう思っているか、どんな気持ちでいるかを重視する」…思い当たるような感じもします。

 ビジネススクールの授業だったので、学生のみなさんが、いろいろなタイプのリーダーにも出会っているし、自分がリーダーだという人もいて、非常に楽しめました。「先天的、後天的な要素もあるか?」というようなディスカッションがおもしろかったです。
 その後、全体に戻ったのですが、チャットの中で書かれていた「自己評価と他己評価を組み合わせるのもおもしろそう」というコメントが、松永先生に伝えられました。これはたしかにおもしろそうです。職員研修でやってみたいなと思いました(ちょっと生々しすぎるか…)。

授業後

 授業が終了した後には、Slackで議論が継続していくそうです。今回であれば、「day05_授業の感想」というチャンネルが作られていて、ここに学生の皆さんはどんどんコメントを書いていき、授業中のディスカッションを継続することができるようになっているそうです。
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 ディスカッションが盛り上がれば盛り上がるほど、90分という時間の枠にどうしても収まらないところも出てきますが、継続して議論ができることで、より理解が深まるようにも思います。
 また、言葉での情報伝達と文字での情報伝達だと、文字の方が密度が高いようにも思います。何度も読み返せるという利点もあります。松永先生は教室での授業との違いとして、「ログが見えるようになった」とおっしゃっていました。
 こうした点は、大学での授業だけでなく、たくさんの教育機関の授業でも得ることができるメリットではないかな、と思います。

 松永先生、どうもありがとうございました。

(為田)