大谷和利『世界一のロボット掃除機「ルンバ」を作った男 コリン・アングル「共創力」』を読みました。タイトルにもあるように、ルンバを作ったアイロボット社創業者、会長兼CEOのコリン・アングルさんの半生を描いた本です。
3歳で自宅のトイレを修理して、家族の食卓でさまざまな話題について話し合う日々を送っていたコリン・アングルさんが、テクノロジーに出会い、ロボットを作り、アイロボットを作り、どうチームを率いて経営をしているのか、ということがわかる本です。
この本を読んでいて、「共創する力」をどう組織として持っていくか、というビジネス的な側面とともに、教育の要素を強く感じました。コリン・アングルさんがどのような教育を受けてきたのか、ということが非常によくわかるので、ロボティクスに興味がある人たちだけでなく、教育に関わる方にいいのではないかと思います。
教育についてコリン・アングルさんが教育について語ったことが書かれている部分がありました。
教育についてコリンは、このように力説する。「私の人生において、教育は私の喜びを生み出す重要な役割を果たしてきました。同時に、教育がもたらすインパクト、および、私自身のストーリーやロボットにまつわるエピソードが持つ影響力を実感しています。その意味で、教育は私の人生と進歩の礎になったものであり、アイロボットのCEOとしての仕事以外に、どのように社会に対する恩返しができるか?そして、子どもたちの力となってインスピレーションを与えられるように時間を使えるか?といった考えが、自分を駆り立てるようになったのです。自分たちがロボットを作っているという事実が、ある種の責任感につながったのも確かであり、それは、どんな3歳児でも恐竜や鯨とともにロボットに対する興味があることと無関係ではありません」
コリンが、子どもたちに対して「君は、どんなロボットを作ってみたいのかな?」と質問すると「わからない」と答える子はひとりもなく、常にすばらしい答えが返ってくる。例えば、「自分の部屋を掃除してくれるロボット」「宿題を片づけてくれるロボット」「犬を散歩させてくれるロボット」、「一緒に遊んでくれるロボット」など。それを聞くたびに、コリンはすてきな気持ちになるのだという。(p.205)
こうした思いをベースに、アイロボットはSTEM教育にも取り組んでいます。こういうやりとりができるプログラミング教育は、ものづくりへの思いに着火してくれそうだな、と思います。
アイロボットは、『ルート(Root)』という名前のSTEMロボットを展開しています。弊社フューチャーインスティテュートは、ルートを使っての小学校での授業を広げていくために、カリキュラム作成や授業サポートなどの面でお手伝いをしています。いくつかの学校でパイロット授業もしてみましたが、Rootを見せると、「ルンバだ!」と子どもたちが言うことが多いです。ロボット掃除機であるルンバは、もしかすると日本の子どもたちにとって、最も身近なロボットだと言えるかも知れません。だからこそ、Rootに興味を持って、動かしてみることに没頭できるのではないかと思っています。
もしも、興味のある先生や学校がありましたら、コメント欄やSNSなどを通じて、ご連絡をいただければと思います。
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また、この本、『世界一のロボット掃除機「ルンバ」を作った男 コリン・アングル「共創力」』の出版記念イベントの様子がYouTubeで公開されています。前半が著者の大谷和利氏と楽天大学学長 仲山進也氏による「共創力」についてのトーク、後半は東京工業大学の学生を招いて、コリン・アングル氏と直接オンライン対話となっています。
(為田)