教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

やってみた:淑徳小学校の3年生と、授業チャットについて考えてみた(2021年1月26日)

 弊社フューチャーインスティテュートは、淑徳小学校放課後クラブ 淑徳アルファで、コンピュータを使ってさまざまな活動を行う授業「カズトロジー」を行っています。カズトロジーの授業では、2020年度からschoolTaktを活用しています。いまの3年生は昨年度から使っているので、ログインも一人でできるし(半数以上の子たちはログインIDとパスワードを暗記しています)、ローマ字表を見なくてもタッチタイピングができます。
 そんな彼らは、ある日、schoolTaktの授業チャットの機能を見つけて、どんどん自分たちで書き込みを始めました。授業チャットで誰かがメッセージを書けば、ログインしている全員にメッセージが表示されます(先生である僕も含めて)。使い方もすぐにわかったようで、授業の課題をしている間にも授業チャットでいろいろとコミュニケーションをとっています。
 僕は、自由に使ってもらって、チャットの良いところや良くないところについて考えてもらう機会にしようと思っています。チャットでのデジタルコミュニケーションを教室で実際に体験してみることは意味があると思うからです。
 あまりに授業チャットに注意がいきすぎてしまうときには、チャットにロックをかけて、先生からしかメッセージを送れないようにすることもありますが、ほどよい距離感で授業チャットを使うことができているように思います。
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 そうして、しばらく使っていると、子どもたちのなかでも「授業チャットを使うのが好きな人、嫌いな人」「おもしろいと思う人、おもしろいと思わない人」がいることがわかってきました。
 そこで、schoolTaktで使えるシンキングツール「PMI」を使って、授業チャットについて考えてもらう授業を行いました。PMIは、「いいこと(Plus)」「わるいこと(Minus)」「おもしろいこと(Interesting)」を書き出してもらうためのシンキングツールです。子どもたちに、書き方を説明して、自由にどんどん書き込んでもらいました。
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 せっかくなので、授業の進行も最初の挨拶が終わったらすぐに、「今日は授業チャットについて考えてもらいます」というような課題提示も含めてすべて授業チャット上でしました。チャットを使って行う授業がどんなものかを実際に体験してもらいながら、PMIを考えてもらいました。

 途中でお互いの書いた内容を見られるようにして、どんどん考えてもらいました。子どもたちが書いてくれた意見は、以下のような感じになりました。

  • いいこと
    • しゃべらないで、かいわができる。
    • このばがうるさくならない。
    • ひまつがとばない。コロナたいさく。
    • しずかになる
    • チャットがあると、聞き逃さない
    • かだいをやりながらだいじなこともききとれる
    • コロナ時期だからいい。コロナ終わると良い事なくなる。
    • ひまつがとばないこと。
    • ひまがない
    • たのしい
    • みんながおもしろい
  • わるいこと
    • 授業チャットにむちゅうになって、さぎょうがすすまなくなる。
    • かんけいないことをかくひとがいる
    • typingがめんどくさい
    • たまに、悪い言葉を使う人がいる
    • いやな事をちょっとだけ言われるのがやだ。
    • だれかがふざけるのがやだ。
    • 書いてる時じゃま
    • チャットが多すぎて他の人のやつが見れない
    • やるとやめられなくなること。やるとうるさくなる。
    • かんけいないことをかく
    • なんかしずかでものたりない
    • じゅぎょうで、しゃべらないと発表ができないし、発表の楽しさがなくなる
    • へんなこと・いやなことをかくひとがいる
  • おもしろいこと
    • みんなの意見が聞ける
    • ちゃっとがあると、たのしい。

 「いいこと」のところでは、「静かになる」ことや「飛沫が飛ばないからコロナ対策になる」ということを書いている子がいました。また、「チャットがあると聞き逃さない」や「課題をやりながら大事なことも聞き取れる」など、情報伝達方法として文字情報であるチャットを使うことの良さを書いた子がいたのも印象的でした。
 また、「たのしい」「みんながおもしろい」という回答も僕としてはうれしかったです。チャットによって、クラスメイトとのコミュニケーションのおもしろさ、考えをやりとりする交流のおもしろさを感じられる場面が増えるのであれば、素晴らしいと思っています。

 一方で、「わるいこと」としては、「かんけいないことをかく」「typingがめんどくさい」「書いているときにじゃま」などの意見が書かれていました。これはチャットだから、ということだけではないのですが、どのような場面で授業チャットを使うべきかを考える機会になりました。


 「授業チャットにむちゅうになって、さぎょうがすすまなくなる」「しずかでものたりない」「じゅぎょうで、しゃべらないと発表ができないし、発表の楽しさがなくなる」など、「いいこと」と表裏一体の「わるいこと」を書いた子もいました。
 最後の、「たまに、悪い言葉を使う人がいる」や「だれかがふざけるのがやだ」と書いてくれた子もいました。これは今回のチャットなどだけでなく、広くオンラインでのコミュニケーションには大きく関わることだと思いました。冗談で書いた悪い言葉が、どれくらいの冗談なのかがディスプレイ上での文字だけではわからない。だから、気をつけてコミュニケーションをしなければいけない、ということを説明して、授業を終わりました。
 学校の授業という場だからこそ、チャットなどのコミュニケーションに慣れてもらって、自分で体験してみる場をたくさん作っていきたいと思っています。

(為田)