教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

書籍ご紹介:『GIGA School時代の学級づくり』

 京都教育大学附属桃山小学校の樋口万太郎 先生から、著書である『GIGA School時代の学級づくり』をお送りいただきました。

 樋口先生が5年生と6年生の2年間を担任したクラスでのエピソードを多く読むことができます。学校の先生ではない僕は、学級づくりがどういうものかをまったく知りませんが、学級経営はノウハウも重要だと思いますが、一人ひとりとのエピソード、グループやクラス全体でのエピソードの集積でできているものだな、と思いながら読みました。

 この本のなかで紹介されているエピソードのなかでも、一人1台の情報端末を持っているGIGA School時代らしいな、と気に入ったものがありました。

 1つは、5年生のときに樋口先生が「みんなでいろいろなことを決めていこう」と言ったのに、部屋割は先生が決めてしまったじゃないですか、というメッセージを送ってくるエピソードです。

メッセージが学習支援アプリで届きました。アプリだからこそ、自分の思いを伝えやすかったのでしょう。子どもたちにとってはLINE感覚なのかもしれません。帰宅後、学校に連絡をする、学校で先生に話しかける、といったことより、アプリでメッセージを送ることはハードルが下がるのでしょう。
すぐに電話をして、その子と話をしました。
(略)
こういったメッセージを送ってきてくれることも、これからの時代の新たな子どもたちとの関わり方です。(p.158-159)

 学習支援アプリだからこそ、敷居が低くなって伝えやすかったのではないかと思いますし、その子の声にきちんと耳を傾けて、樋口先生は電話で話をして、翌日クラスでもみんなに対して話をします。手段がデジタルでもアナログでも、別に変わらなくて、それぞれの場面で必要な手段を選ぶことが大事なのだ、と思いながら読みました。

 もうひとつのエピソードは、子どもたちが自分にあった形でタブレットを使っている様子が微笑ましかったものです。

普段使っているタブレット端末にスケジュールや時間割が入っていると、いつでも見ることができます。紙だと、それをいちいち机の中から取り出さないといけません。子どもによっては、こういったスケジュールや時間割や明日必ず必要な持ち物などの情報をロック画面の待ち受けにしている子もいました。これは、子どもから「先生、ロック画面を変更しても良い?」と提案され、「え!?変更するの?」と思ったのですが、話を詳しく聞き、すぐにオッケーといいました。子どもの話を詳しく聞いていないと、「ダメ」と言っていたかもしれません。これまで、忘れ物をしないために手に油性ペンで書くといった工夫が、ロック画面の待ち受けに変わったという感覚のように思いました。(p.183)

 一人1台の情報端末をもつことで、こうして自分にあった使い方をしていく子どもたちがどんどん出てくると思います。こうした自分にあった使い方を認めてあげる学級づくりが大事だな、と感じました。

 ここで紹介した2つのエピソード以外にも、学級づくりのエピソードをたくさん読むことができる本です。先生方は、ご自身の経験とこの本のなかで紹介されているたくさんのエピソードを重ね合わせて、学級づくりに役立てることができるのではないかと思いました。

(為田)