教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

書籍ご紹介:『今こそ学ぼう 地理の基本』

 小学校から高校までの間、授業中に地図帳をペラペラとめくるのが好きだった自分としては、一人1台の情報端末が配備されてデジタル地図であちこち見たりするのは楽しそうだな、と思っています。実際、子どもたちにデジタル地図を教えてあげると、想像もつかないところを見て楽しんでいる様子を見られます。
 デジタル地図を簡単に使えるようになることで、地理の授業はどう変わるかなと興味があり、長谷川直子 先生 編の『今こそ学ぼう 地理の基本』を読みました。読書メモを共有します。

 冒頭の「はじめに」で、そもそも地理とは総合学だ、という話が書かれていました。

学校の教科では、地理は社会科分野にありますが、人間の活動舞台となっている場所を理解するためには、人間のことだけでなく、その部隊となる自然環境の理解が必要になります。そのため地理は自然と人間の両側面から考える、文系・理系といった枠を超えた総合学といえます。
そのような特徴をもつ地理学が扱う範囲は自然から人間まで、地球上のあらゆる現象を扱うので実に幅広いものです。例えば、地理で基本ツールとなる地図や地図表現、地図をつくるための測量などは数学的な思考が必要となります。自然環境の基本となる地形や気候のメカニズムを理解するには地学などの理科的な知識にも関連します。しかし、学校の授業で割ける時間は有限です。そのため学校の教科書や授業で教えることができる内容にはどうしても限界があります。自然のメカニズム的側面は地学であり地理の教科書に書けないといった制約もあります。(p.ii-iii)

 地理の授業で、地図の違いについて学んだことはぼんやり覚えていましたが、デジタル地図の普及によって、このあたりも変わってきていることも知りました。

現在、皆さんが一番よく見ている図法はおそらくメルカトル図法でしょう。メルカトル図法=航海用の地図、というのが今までの教科書での説明でした。それは間違いではないのですが、インターネットの普及により、スマホやパソコンで日常的に目にする地図になったからです。(p.74)

さまざまな主題図

 地図のなかでも、特定の目的をもって作成された主題図についての紹介がありましたが、うまく主題図を授業のなかで使うことで、より思考を広げたり深めたりすることができるのではないかと思いました。

特定の目的をもって作成された地図を主題図といいます。国が作成する精度の高い地図から子どもが描く通学路の地図まで、大縮尺の住宅地図や工事の設計図面から国を色分けした小縮尺の世界全図まで、さらに、各種計画図や統計地図、ハザードマップ、道路地図などはすべて主題図です。また、海図や航空図も、船舶や航空機の安全な航行のための主題図です。天気図のように、刻々と変化する事象を表現する主題図もあります。(p.90)

国土地理院がさまざまな主題図を用意している。

 例えば、国土交通省が公開しているハザードマップポータルなどがあります。

 そのほか、国土地理院が提供している地理院地図でも、さまざまな情報を閲覧することができます。

地理院地図は国土地理院が提供しているウェブ地図です。地形図、空中写真、標高、地形分類など国土地理院が制作している地理空間情報はもちろんのこと、総務省の統計データや気象庁の活火山分布図など国土地理院以外の国の機関が保有する地理空間情報スマートフォンやパソコンで閲覧できます。(p.124)

 また、地域経済分析システム(RESAS:リーサス)についても紹介されていました。RESASは、名前は知っていましたが内容を見たことがまだないので、いろいろと情報を見てみようと思います。

地域経済分析システム(RESAS:リーサス)は、地方創生のさまざまな取り組みを情報面から支援するために、経済産業省内閣官房によって提供された地理情報の分析ツールです。自治体職員の方や、地域の活性化に関心をもつさまざまな分野の方が、効果的な施策の立案・実行・検証のために広く利用しています。(p.126)

地理関係で使えるサイト、アプリなど

 この本のなかでは、地理の授業で使えそうな、いろいろなサイトやアプリが紹介されています。

さまざまな地理関係のお役立ちサイト情報(p.68)

 教材に使えそうで、かつ生徒も楽しめそうなアプリも紹介されていました。いくつかは、僕もインストールして使ってみたことがあるな、と思いながら読みました。

使える、遊べる地図関連アプリ・ソフト・サイト(p.128)

  • 時層地図
  • FieldAccess 2
  • Flightradar24
  • Web地形断面図メイカ
  • 球面上の世界とメルカトル図法の地図
  • Worldmapper

 国土地理院が、地理の授業に役立つコンテンツを集めたサイト「地理教育の道具箱」も作っています。

国土地理院では、(略)教育に役に立つコンテンツを集めた「地理教育の道具箱」というホームページを立ち上げ、国土地理院のコンテンツの入手の仕方や、国土地理院のコンテンツを用いた白地図の作成マニュアル、扇状地河岸段丘など教科書に出てくる典型的な地形を地図や空中写真で示した「日本の典型地形」、「地形を切り口とした学習のためのネタ帳」などの情報を掲載しています。(p.134)


まとめ

 地理の授業だけでなく、いろいろな授業でデジタル地図を活用できるのではないかと思います。自分の興味に応じて、さまざまな地図を自分の情報端末で見てみることで、子どもたちがさまざまな思考をする機会になればいいと思います。
 また、さまざまな主題図は全員の興味に応じたものを用意するのは紙媒体では難しいと思いますし、デジタル地図を使ってレイヤーで表示する情報を選択することで、理解を深めることにもつながると思います。
 児童生徒が一人ずつデジタル地図を使うだけでなく、先生が提示用の教材として使うことももちろん可能です。さまざまなアイデアのきっかけを見つけられる本でした。自分自身でも、いろいろなデジタル地図をもっと見てみよう、と感じました。

(為田)