教育ICTリサーチ ブログ

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葉山町立葉山小学校 授業レポート(2022年12月9日)

 2022年12月9日に葉山町立葉山小学校を訪問し、市姫久徳 先生が担当する3年生のプログラミングの授業を参観させていただきました。葉山小学校の3年生は、これまでプロゼミを使ってプログラミングを学んできていて、今回はアイロボットのプログラミング教材「Root」を使った授業を5時間目と6時間目の連続で行いました。

 市姫先生は、最初に授業のめあてを「いろいろな動きをさせて楽しもう」であることを子どもたちに伝え、プロジェクタを使ってRootをプログラムする「iRobot Coding」の画面をみんなに見せて、ブロックを繋げてプログラムを組んで実行する基本操作だけを説明しました。

 iRobot Codingの画面の下に並んでいるブロックのイラストを見て、「このブロックを使うとどんなことができそう?」と子どもたちに質問すると、「右に曲がりそう」「光りそう」「音が出そう」という声が返ってきました。
 くりかえしのブロックを指差して、「この“2”って書いてあるのは何だろう?」と子どもたちに質問したときには、答えが返ってこなかったので市姫先生が「プロゼミだとどんな感じだと思う?」とヒントを出すと、「2周しそう」と声があがったので、「あとで試してみよう」と市姫先生は言います。
 授業の最初に市姫先生は「自分で考えてやってみよう!あんまり教えないよ」と言っていました。その言葉通り、 最初から全部の機能をひとつずつ説明するのではなく、少しだけ説明して「あとで自分で試してみよう」という雰囲気を作っていったと思います。こうした雰囲気作りこそが、プログラミングの授業の最初では重要だと思います。

 簡単な操作方法の説明が終わったら、一人1台のChromebookを使ってiRobot Codingにアクセスして、パソコン上でシミュレーターを使ってRootを動かしていきます。
 市姫先生が「いろいろな動きをやってみよう!」と言うと、さっき紹介されたブロックをいろいろと使ってRootがどんなふうに動くのか試していました。「勘だけど、やり方がわかった気がする」「線を描いてくれた!」「四角を描けた!」という声が教室のあちこちから聞こえます。
 「こんな動きさせたい」「このボタンなんだろう?」という声が聞こえてくると、市姫先生は「いっぱいやってごらん」と言います。クラス全員が同じブロックを同じように使うのではなく、自分が試したいことを自分のChromebookで自由に試すことができていたと思います。
 また、自分で試してできたRootの動きを、お互いの画面で見せ合うことで、「自分でもやってみよう」というモチベーションも上がっていきます。この状況を作ることが大事だと思います。

 画面上のRootを動かす活動を5分間したら、実際にRootを2人に1台配布します。同時に、2つのミッションが書かれたプリントも配布します。プリントに書かれた通りの動きをRootにプログラムする2つのミッションに、ペアで取り組んでもらいます。

 ChromebookとRootをBluetoothで接続したら、床に敷いた4マス×4マスのシートの上でRootを動かしていきます。シミュレーターを使ってRootをプログラムしたときと同じように、ブロックを繋げてRootの動きをプログラムしていきます。

 プリントに書かれた2つのミッションができた後は、自分たちで自由にRootを動かす時間になりました。「やりたいのあるんだけどさー」と相談して、いろいろな動きにチャレンジしていきます。マットを繋げて長いコースを作って競争をさせてみたり、大人数でRootのプログラミングに取り組む子たちもいました。

 ここで5時間目が終了し、一度休み時間になりました。休み時間中にもRootのプログラミングを続けている子たちもたくさんいました。
 6時間目は、Rootの真ん中にある穴にマーカーペンを挿して、マットの上で線を引くこともOKにしました。マーカーペンの下げるブロックの使い方を理解した子どもたちは、すぐにいろいろな形を描き始めました。

 その様子を見て、市姫先生が「今日勉強した正三角形は描けるかな?」と言うと、チャレンジをしている子たちがたくさんいました。

 正三角形以外にも、いろいろな図形を描くことができます。正多角形の内角などの概念についてわからなくても、Rootを回転させる角度を試行錯誤して変えたり、くりかえしの数を変えたりすることで、いろいろな図形を描くことにチャレンジしていました。
 みんなが同じ図形を描いていくのではなく、「こういう図形が描けたらおもしろくない?」とそれぞれが考えて、それを実現するためにどうすればいいのか取り組んでいくのがいいと思います。

 市姫先生は教室をまわって、おもしろい図形を描けたペアを見つけると、「これ見て、すごいよ!」とクラス全体に教えて、みんなで共有していきます。クラスメイトが作ったプログラムが、「じゃあ、これをちょっと改造してみよう!」と次のプログラムを生んでいくと思います。こうしてクラスメイトの作ったものからアイデアをもらえて、それを実現する楽しさを知れるのは、学校で行うプログラミング教育の良さだと思います。

 Rootを片付けてChromebookを閉じて、最後にふりかえりをしました。子どもたちからは、「最初はおそるおそるだったけど、やってるうちにかわいくなってきた」「ペンで描いたり、はじめてやったけど、楽しかった。いろいろもっとやりたい」「プログラミング、楽しい」「ペンじゃなくても動かせて楽しい」「いろいろな機能を知るたびにうれしくて、楽しかった!」という声が挙がっていました。
 たくさん出たふりかえりのコメントのなかで、一人の子が言った「最初は偶然だったけど、たしかめていろいろできたからよかった」というふりかえりが、僕はとてもいいなと思いました。最初は偶然でもよくて、それを自分たちなりに確かめて、だんだん意図してできるようにしていく、そうした学びのスタイルを経験できるのも、プログラミング教育の良さだと思います。

 最後に市姫先生は、「世の中にいろいろプログラミングはあるんだよ」と言い、「教室にあったテレビのリモコンだって、赤いボタンを押したらテレビがつくのも、プログラミングされているからなんだよ」と説明していました。
 Rootで自分で思い通りの動きをさせるようにプログラムを組んだのと同じように、身近な機械にも「どのように動くか」をプログラミングしてあるものがたくさんある、ということを伝えて、授業を終わりました。
 こうして、自分たちでプログラミングをする楽しさと、それが社会でどのように使われているのかを理解することと、両方を授業のなかで伝えるのは大切なことだと思いました。

 葉山小学校では、学年が上がると、LEGOのWeDoを使った授業を行っているそうです。Rootでプログラミングの最初の楽しさを知って、WeDoでより多様な動きをプログラムする楽しさを知って、プログラミングを通じて問題解決の楽しさやものづくりの楽しさを知ることにつながっていけばいいなと思います。

(為田)