教育ICTリサーチ ブログ

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葉山町立長柄小学校 授業レポート(2024年2月7日)

 2024年2月7日に葉山町立長柄小学校を訪問し、1時間目と2時間目で6年2組のプログラミングの授業をさせていただきました。昨年度も長柄小学校で6年生にやってもらったアイロボットのプログラミングロボットRootを教材として使いました。
 「今日はこのロボットをプログラミングする授業をします」とRootを見せると、「お、ルンバみたい!」と言う声が子どもたちから聞こえます。ロボット掃除機ルンバのことを知っている子は、だいたいの動きを想像できます。そこで、「ロボット掃除機ルンバって、壁aaにぶつかったときにどんなふうになるか知ってる?」と質問すると、「後ろに戻る」とか「止まる」という声が返ってくるので、そうした動きも全部プログラミングされていることを伝えます。
 「Rootはルンバの会社が作っている小さいロボットです」と伝えて、Rootのプログラミングをしてみようと言って授業を始めます。子どもたちは自分のChromebookを持ってきているので、Googleクラスルームで配信した「iRobot Coding」のサイトにアクセスしてもらいます。サイト上で、簡単にブロックを組み合わせる方法と、プログラムを実行して画面上でRootを動かす方法だけを説明して、さっそくみんなにやってもらうと、すぐにできるようになります。

 ブロックを組み合わせてプログラミングをする練習をしたら、2人に1台ずつRootを配布して箱を開けてもらい、電源をつけてもらいます。電源が入ってRootの目が光るところで「かわいい!」と教室のあちこちから声があがります。
 僕は、Rootを使ってプログラミングを教えるときにいちばん好きなのがこの瞬間です。ロボットに愛着をもって、そして好きに動かしてみようと思ってもらうこと。それができれば、いろいろと細かくブロックの機能を説明しなくても、「できた!」「動いた!」と面白がってもらえると思います。それを大事にしたいと思っています。

 「iRobot Coding」のサイトでRootを接続してから、基本的なブロックの機能を知ってもらうために最初にミッションが書かれたワークシートを配布します。最初の2つのミッションだけを必ずやってもらって、あとは好きなものを選んでどんどんやってもらいます。残りの4つのミッションは、やってみたいものから自由にやってもらいます。
 どのミッションに取り組むかによって、子どもたちが作るプログラムは全然違うものになります。Rootを動かすことが楽しかったり、音を繋げて曲を演奏させるのが楽しかったり、LEDで光らせるのが楽しかったり、それぞれに楽しいと思うことは違います。それぞれに自分たちのやりたいことをやれることが重要だと思っています。

 子どもたちが自分で思いついたアイデアをどんどんプログラムを組んで試してもいい雰囲気を作ることを、僕はいちばん大事にしています。
 今回の授業では、Rootの上にペンケースを置いて運んだり、ペンをRootに挿して形や絵を描いている子がいましたが、このあたりも何も指示をしていません。自由にやってもらって、助けが必要であれば行って一緒に考えたり、取り組んでいる子が多い機能については全体に向けて説明して共有する、ということを繰り返していきます。

 円弧を描くブロックについても教えていませんが、教室の中で誰かが試してできることがわかると、その子のところへ行って、「どうやったの?」と言ってプログラムを見せてもらい、どんどんノウハウが教室の中で伝播していきます。

 Rootのプログラムを書く「iRobot Coding」には、3つのレベルが用意されています。レベル1ではイラストだけで設定できるブロックだけで構成されている基本的な動きをプログラムできます。レベル2では、ブロックのなかにテキストを入力できて長さや角度などを自由に指定できます。レベル3では、すべてをテキストで入力できるようになっています。
 最初に配布したワークシートに書かれているミッションは、全部レベル1でできるようになっているので、レベル2とレベル3は使わなくてもできます。ただ、自分たちでおもしろいプログラムを書こうと思ったら、どんどん細かいことをしたくなるので、何人かの子どもたちはレベルを自分で変更して、何も説明していないのに自分たちでどんどんプログラムを高度化させていきました。

 こうして、自分たちで「やってみたい!」「こうやったらいいんじゃない?」と、どんどん試すような雰囲気を作ることが、授業者としていちばん大事だと思ってやっています。
 プログラミングのブロックの意味を覚えてもらいたいわけではなくて、やりたいことをプログラムで実現しようとして、失敗して、それをデバッグ(修正)していく過程を学んでほしいと思います。それが、失敗しながら直していけばいい、というマインドセットをもつことに繋がると思いますし、そうした学びをするのにプログラミングはとても良い教材になると思っています。

 今回の6年2組の授業は為田が担当しましたが、この翌日と翌々日には長柄小学校の先生が6年1組と6年3組を担当してRootを使ったプログラミングの授業に挑戦してくれています。そのために、授業を見に来て、授業の様子も撮影して準備をしてくださっていました。こうして、少しずつ学校のなかでプログラミングの授業が広がっていけばいいと思います。

(為田)