教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

授業で使えるかも:リクルートワークス研究所「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」

 2023年3月28日にリクルートワークス研究所が発表した「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」を読みました。サイトでPDFを閲覧することができます。全部で40ページのレポートですが、たくさんのシミュレーションが示されています。
www.works-i.com

 こうした素材を学校で中学生や高校生と読んでいくのも、キャリア教育のアプローチとしてもいいと思いますし、シミュレーションをどのように行うのかの実例としてデータ分析と結びつけることもできると思います。

 最初に、「労働供給制約社会がくる」として、どんな問題意識があるのかが書かれています。

単なる人手不足論ではない。後継者不足や技能承継難、デジタル人材の不足などといった産業・企業視点からの問題ではなく、「生活を維持するために必要な労働力を日本社会は供給できなくなるのではないか」という問題意識である。(p.2)

労働供給制約社会において最も懸念されるのは、「生活維持サービス」である。物流や建設・土木、介護・福祉、接客などの職種は既に需給ギャップが顕在化しており、著しい人手不足に陥っている。これは「大変だなあ」ではすまない問題でもある。こうした職種の供給不足を放置すると、私たちの生活に大きなダメージを与える可能性が高い。注文したものの配送、ゴミの処理、災害からの復旧、道路の除雪、保育サービス、介護サービス……。私たちが日頃恩恵を受けているあらゆる「生活維持サービス」は、すべてかけがえのない人々の労働によって提供されているのだ。(p.2)

労働供給制約社会を迎えても、この社会と人々の生活が豊かに続いていくためにはどうすればよいか。そして、豊かな未来を目指すために私たちの「はたらく」はどう変わる必要があるか。日本で暮らす私たちが考えるべき、「未来予測」を行う。(p.3)

日本社会における労働の需要と供給が今後2040年に向かってどのように変化していくのか、シミュレーションモデルの構築をして紹介されていました。ポイントとして3つのことが書かれていました(p.4-5)。2040年のデータについては、「え、2040年の頃の日本の総人口って何人くらい…?」と思ってしまう数字です。

  1. 2030年に341万人余、2040年に1100万人余の労働供給が不足する
  2. 労働供給は今後加速度的に減少していく
  3. 労働需要はほぼ横ばい

 3つのポイントの2つめと3つめの「労働供給」と「労働需要」については、職種別シミュレーション(p.6)と都道府県別シミュレーション(p.8)も掲載されています。
 職種別シミュレーションでは、「輸送・機械運転・運搬」「建設」「生産工程」「商品販売」「介護サービス」「接客給仕・飲食物調理」「保険医療専門職」「事務、技術者、専門職」の職種のシミュレーションが見られます。それぞれの職種で違いはありますが、どのグラフも労働供給がどんどん下がり、供給不足が大きくなっているのをグラフで見ることができます。

 都道府県別シミュレーション(p.8)では、自分の学校がある自治体を見てみるといいと思います。全国平均だけでなく、こうして都道府県別で見られるのは、学校で教材として活用するのによいことだと思います。

 さらにその後、「“座して待つ”と私たちの生活はどうなるのか」(p.10-11)ということも書かれています。悲観的に捉えすぎることはよくないと思いますが、悲観的な予測をしたうえで対応を考えるということは必要です。そうした生徒たちとするときにも使えると思います。

 さらに、その後で4つの解決策が示されています(p.16-31)。

  1. 徹底的な機械化・自動化
  2. ワーキッシュアクトという選択肢
    • Workish act:なにか社会に対して提供しているかもしれない、本業の仕事以外の活動
  3. シニアの小さな活動
  4. 待ったなしのムダ改革

 いまの社会を分析したレポートを副教材のひとつとすることで、既存教科の単元と組み合わせて考えることもできると思います。自分自身で何ができるだろうかと考えてプロジェクトにするのもいいと思います。
 また、もし授業のなかで取り扱わないとしても、先生方が2040年の社会の姿の予測の1つとしてこうしたレポートを読んでおくことは、授業の引き出しを広げることにもつながるのではないかと思いました。

 このレポートを読んだ先生方と、「どんなふうに授業で使えそうだろうか」と意見交換やディスカッションしてみたいな、と思いました。

(為田)