A・コリンズ、R・ハルバーソン『デジタル社会の学びのかたち Ver.2 教育とテクノロジの新たな関係』をじっくり読んで、Twitterのハッシュタグ「#デジタル社会の学びのかたち」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。
「5章 新しいシステムの芽生え」を読みましたので、興味深かったところのメモを貼っていきます。
新しいシステムにおけるテクノロジ主導型のシーズは、伝統的な教育の世界で芽吹きつつあるが、1.まだ研究者によって広く研究されてはいない。2.学びの「質」についてはまだ多くは語れない。3.今後、予測されたようなインパクトをもたらさない可能性もある。(p.82) #デジタル社会の学びのかたち
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) October 25, 2020
その留保があったうえで、「学校の学びを支援するシーズ」と「関心に基づく学習環境の地平」が事例を交えてしょうかいされていました。
- 学校の学びを支援するシーズ(p.82-91)
- カーンアカデミー:すべての学習者のための動画学習リソース
- ピンタレスト:授業デザインのクラウドソーシング
- 「教師はピンタレストを主に、授業計画を見つけて共有することに利用しています。よくピンされるものとして、授業を説明する図表(ワークシートとしてコピーされることが多い)、授業の過程を説明した文章、効果的に活用するためのヒント、その他の情報源へのリンクなどがあります」(p.86)
- 「アメリカの教育者1000名を対象にした2016年の調査によれば、67%の教師がピンタレストを毎週、自分の仕事の目的で活用しています」(p.86)
- インスタなどでも板書を見かけることはあります。インスタは、ちょっとタグを検索してみたが、そんなにたくさんは出てきませんでした。探し方にコツがありそう…。Pinterestはデザイナーさんが仕事に使っていると聞いたことがあります。
- 授業を説明する図表、授業の板書などの共有というのであれば、BANSHOT バンショットもいいですよね!(目的が特化している分、効果的だと思っています)
- コンピュータ適応型システム:個別最適化された学習方法
- 「コンピュータ適応型学習ツールは、学習者のニーズを診断し、さまざまな領域にわたる学びの道筋をカスタマイズするオンラインシステムです」(p.87)
- 1920年代から、学習者のニーズに合わせて内容を組み立てるティーチングマシンの発送は存在していたが、コンピュータ化によって実現された。
- 知的学習支援システムのモデルは4つの部分から成り立つ
- 学習内容の構造や順番を表した「領域」モデル
- 学習者がすでに知っていることや学習のニーズを表した「学習者」モデル
- 学習者が学習を進める上で必要なフィードバックの種類を定義した「チュータ」モデル
- 学習過程を通じて学習者を導くための「インターフェイス」モデル
- 「近年の研究では、学習者がある学問領域の中で自然に学習を進める際の構造として「学習軌跡」の概念が話題になっています。学習軌跡の研究を通して、知的学習支援システムにおける領域モデルの強化と、学習者モデルにおいて学習者が取るであろう経路の予測の両方ができるようになるでしょう」(p.87-88)
- MOOC:遠隔教育の新たな道
- 関心に基づく学習環境の地平(p.92-103)
- 「今では、インターネットに浸ることによって、子どもと大人の垣根は消え去ってしまい、誰もがいつでも何に対してもむき出しの状態です。しかし同時に、インターネット上でものを作り、批評試合、知識を還流させようとする、インターネットにおけるものづくり文化が発展しました。これにより、消費とものづくりとの関係が再定義されたのです」(p.92)
- 「仮想世界の拡大により、思春期の若者たちは、他者との交流、消費、そして最も重要であるものづくりの主体となると同時にそれを調整する役割も持つようになります。イトウらは、若者がバーチャルメディアに参加する段階を、たむろする、いじくり回す、夢中になる、という言葉を使って描き出しています」(p.92-93)
- たむろする:
10代の社会生活の延長として、Facebookやインスタグラムやスナップチャットのような新しいメディアを使って、友人とともに過ごすことを意味する。
日本だったらLINEも入るだろうな。学校の友達だけでなく、塾の友達、部活の大会で会う友達など、どんどん広がっていくのだろう。オープンチャットとかもあり、興味によっても繋がれる。
「たむろすることによって10代は、これまでとは違う社会的性質を持つ友人グループを試してみたり、広く分散したソーシャル・ネットワークで、他の仲間が興味を持っていることについて学んだりすることによって、自分自身の可能性を試すこともできます」(p.93)- いじくり回す:
エンゲージメントやインタラクションを引き出すメディアを10代が試すこと。新しいメディアスペースを見て回って、好みやアイデンティティを反映させて、馴染みのスペースに変えていく。
「10代がオンライン環境のカスタマイズに必要なツールに習熟するにつれて、いじくり回す行為が制作への第一歩になります。このことが、新しいメディアテクノロジがどのように機能するかを理解するきっかけとなるのです」(p.93)- 夢中になる:
10代がメディアの消費者から制作者に完全に変化すること。「その変化が起こるのは、10代が新しいメディアを使って、関心に基づいて相互作用を追求する時」(p.93)
クリエイティブなツールを使い、独自のメディアを制作していく。専門家によるガイドや、利用可能な事例を手がかりにして、自分でどんどん学んでいく。マイクラなどが、まさにそれ。- Wikipedia、YouTube、メーカースペースなどが、「関心に基づいた学習のための全く新しい道を開いています」(p.102)
「関心に基づく学習環境の地平」で紹介されている、イトウ(Mizuko Ito)先生が言っている「たむろする、いじくり回す、夢中になる」はすごくわかりやすいステップだと感じました。英語では、「Hanging out, messing around, and geeking out」になっています。
「インターネットへのアクセスにより、追求できるトピックの幅は飛躍的に広がりました。」(p.102) #デジタル社会の学びのかたち
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) October 25, 2020
インターネットというテクノロジーによって、社会が大きく変わってきているなか、教育の構造は硬直化している、と書かれています。
「生徒たち、家庭、教師の日常は、学校のコアとなる教育実践を支えるテクノロジと、生活の中のテクノロジの2つに分断されています」(p.103) #デジタル社会の学びのかたち
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) October 25, 2020
「何を学習環境とみなすのかについて、インターネットが根本的な拡張を促す保育器のような役割を果たしたことを、私たちは目の当たりにしています。フォーマルかつ制度化された学校と、インフォーマルかつ学校外の学習機会のブレンドが起きているのです」(p.103) #デジタル社会の学びのかたち
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) October 25, 2020
そんな状況であるから、学びの場は学校の外へとどんどん広がっていくということになっています。ポジティブに「広がっている」というよりは、何なら「学校から逃げていっている」くらいのニュアンスかも知れないな、と個人的には感じています(文章的にはそこまで悲観的でもないですけど…)。
僕は、それでも学校にしかできないことはあると思っているので、学校内外をシームレスに結びつけられればいいのに、と思いながら読みました。
No.6に続きます。
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(為田)