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新渡戸文化中学校・高等学校 授業レポート No.2(2023年6月12日)

 2023年6月12日に新渡戸文化中学校・高等学校を訪問し、芥隆司 先生が担当する中学校1年生~3年生の数学SPL(Self-Paced Learning)の授業を参観させていただきました。SPLは、新渡戸文化中学校・高等学校で通常の授業のほかに設けられている自己学習の時間で、自己の学びを自分でデザインし、個々のペースで進めることが求められます。

 数学SPLの授業は、中学校1年生から3年生までが大教室に集まって受ける授業です。中学生3学年全員に対して、全体を進行する芥先生を含めて、数学担当の先生が3人教室にいました。
 授業の最初にスクリーンに投映されている座席表のとおりに、学年ごとにある程度まとまって座ります。

 数学SPLでは、個別最適化学習を支援するためにQubenaを活用しています。この日は、中1はQubena、中2は1次関数のCheckテストが行われました。3年生は自分で学ぶことを決めて取り組むことになっていました。

 Qubenaを起動して、自分で必要な単元の学習を進めていきます。自分一人で問題を解いていく生徒もいますが、周りの生徒にアドバイスを求めて一緒に考えている生徒もいます。教室にいる3人の数学の先生方の、どの先生に質問するかを、生徒たちが自分で決めることができます。
 Qubenaの解説を読んで自分で理解できるのであれば、先生に質問をしなくてもどんどん間違えたところを復習して解けるようになっていくこともできる生徒もいます。

 大きい教室で、それぞれの学年がそれぞれの学習を自分でデザインして進めていく授業でした。みんな静かにやっているというよりは、あちこちで話し合う声なども聞こえてきます。

 2年生は1次関数のCheckテストの答え合わせが終わった後、わからなかったところをきちんとわかるようにするために、みんなで頭を寄せ合って解き方を共有していました。
 テストは評価のために点数が出ることが重要ではなく、テストで間違えたところこそが、「できるようにすべきところ」なのだとわかることが重要です。Checkテストを受けることで1次関数のどこができていないのかがわかり、それをできるようにするために自分で何をすればいいかを考えて実行し、できるようになることが大事です。したがって、Checkテストの結果が出た後の、この時間こそが、SPLで最も大事な時間になります。
 先生方にもたくさんの質問が投げかけられていましたし、生徒同士で教えあっている様子も多く見られました。

 この日の授業の最初にQRコードを使ってGoogleフォームにアクセスして、一人ずつ前月(5月)のふりかえりを書いてもらっていました。
 大教室で各自がそれぞれの学習を自分でデザインしていき、話し合いや教え合いなども起こるので、にぎやかな授業ではありますが、ふりかえりを見てみると「自分のペースでできる」「異学年と交流できる」ということをプラスにとらえている生徒が多いそうです。
 生徒たちのふりかえりを芥先生に見せてもらうと、「少し学習にゲーム要素を入れて“数楽”したい」(中3)、「次は集中力を高め、もっと身につけていきたい」(中1)、「次は周りを意識して、困っている人は助けてあげる!」(中1)というようなコメントが書かれていました。

 新渡戸文化中学校・高等学校の授業では、iPadはいつも机上にあり、自由に使うことができます。数学SPLの授業の中でも、動画を見たり、ちょっと数学に関係ないことをしている生徒もいます。そこでiPadの使い方を管理するのではなく、自分でコントロールして使えるようになることを目指しています。
 芥先生は、授業の終盤で「あと15分です。この時間を遊んで過ごすか、自分で勉強するかは、みんな次第ですよ」と声をかけていました。この声かけこそ、自律的に学べるようにするために重要な言葉だと思います。
 短期的にスマートフォンやiPadを使わずに整然と勉強していることよりも、自分でどうやって学べばいいのかを考え、自分のペースで学べるようになってほしいというメッセージを先生方が伝えるのだと感じました。

(為田)