クリスティーン・ポラスさんの『Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』を読みました。「最強の生存戦略」というあたりがちょっと大仰なタイトルではありますが、原題は『Mastering Civility: A Manifesto for the Workplace』で、「礼儀正しさ」や礼節がいかに仕事をするうえで大切かということを書いているビジネス書です。
4部構成になっていて、「第1部 なぜ礼節ある人は得をするのか」「第2部 あなたの礼節を高めるメソッド」「第3部 礼節ある会社になる4つのステップ」「第4部 無礼な人に狙われた場合の対処法」となっているのですが、特に第1部と第2部が興味深かったです。読書メモを少しですけど公開したいと思います。
最初に、いまの世界は礼儀正しさや礼節が悪化してきているのではないか、ということが書かれていました。そして、「礼節が悪化し続ける理由」が4つ挙げられていました(p.6-8)。
礼節が悪化し続ける本当の理由
- グローバリゼーション
- 文化の違う人たちが同じ場所にいるために、ある人の何気ない言葉や行動が「無礼」と感じられるかもしれない。
- 世代間ギャップ
- 若い世代の方が、自分自身に対する関心がより強い。
- 職場環境や人間関係の変化
- 職場環境とそこでの人間関係の変化についていけていない人が多い。少人数のチーム、在宅勤務など。
- テクノロジーの進歩
- メールのやりとりなど、コミュニケーションに際して誤解や欠落が生じやすい。
- SNSでの暴言、侮辱、罵倒など。
- 対面でのコミュニケーション能力が低下?
「第2章 無礼な人がもたらす5つの費用」では、無礼な人が会社にいることで、どんな費用を支払わなければならないのかが書かれていました(p.11-33)。
無礼な人がもたらす5つの費用
- 無礼な人は同僚の健康を害する
- 無礼な人は会社に損害をもたらす
- 無礼な人はまわりの思考能力を下げる
- 無礼な人はまわりの認知能力を下げる
- 無礼な人はまわりを攻撃的にする
本のなかではさまざまな実証データも掲載されています。経験的には「あるある…」と思うこともたくさんあります。それなりに無礼な人とも一緒に仕事をしてきたので、その頃のことを思い出したりもします。また、自分が誰かにとって無礼な存在になっていないかと反省もします。これもこの本に書かれているのですが、無礼かどうかは、受け取る側がどう感じるか、の問題なのです。
逆に、「礼節ある人」になるためにはどうすればいいのかについても書かれていました。「第6章 礼節ある人が守る3つの原則」に書かれていた3つの原則(p.116-134 )は肝に銘じたいです。
礼節ある人が守る3つの原則
- 礼節ある人は笑顔を絶やさない
- 礼節ある人は相手を尊重する
- 礼節ある人は人の話に耳を傾ける
さらに、「第8章 ワンランク上の礼節を身に付けるための5つの心得」(p.156-178)で書かれていた内容も頭に置いておきたいです。たまにこのリストを読み返して自省したいです。
ワンランク上の礼節を身に付けるための5つの心得
- 与える人になる
- 「与える人」は、周囲の人たちと深く広い人間関係を築くことになる。
- 自分のリソースを他人と共有する人は、自分の存在に意味を感じることができるし、目的意識をもつこともできる。
- 自分の他人に対する貢献が重要であると感じていれば、苦しい状況になっても、簡単にくじけない。
- 成果を共有する
- 自分だけの手柄にしない。
- 褒め上手な人になる
- フィードバック上手になる
- 評価をシェアして当事者意識を高める
- 言いにくいことを言いやすく工夫する
- 意義を共有する
- 誰もが、自分自身が前進していると感じ、成果をあげていると感じられることが大事。
原題は『Mastering Civility: A Manifesto for the Workplace』なので、職場(=Workplace)であれば会社でなくてもいいと思うので、「会社」を「学校」や「職員室」に置き換えて読むと見え方が変わってくるように思います。
それから学校の児童、生徒、学生にとっても、教室の中で先生が礼節ある人であることが、良い学びの環境を作ることに繋がります。
それと、児童、生徒、学生自身も礼節ある人になってほしいと思います。「第8章 ワンランク上の礼節を身に付けるための5つの心得」に書かれている「与える人になる」「成果を共有する」「褒め上手な人になる」「フィードバック上手になる」のあたりは、授業支援ツールを活用する機会を通じて、身につけていくことができると思います。先生方が、そうした意識を持って活動を設計することで、子どもたちが礼儀正しさを身につけて、良い場所で自己実現を目指すことができるようになるのではないかと思います。
ビジネス書ではありますが、先生方にも読んで参考になるところがあるのではないかと思います。学級経営のノウハウなどと重なっているところも多そうです。
(為田)