ヤナ・ワインスタイン / メーガン・スメラック / オリバー・カヴィグリオリの共著『認知学者が教える最適の学習法 ビジュアルガイドブック』を読みました。新しく知識を得てそれを思考に使えるようになったり、作文や計算などを正しい手順でできるようになったり、そうしたことをどのように学習していくのか、ということに興味があります。この本で紹介されている認知心理学の研究成果と、いま自分が学校で子どもたちが学ぶ様子と先生方が授業を設計している様子とをどう結びつけていけるだろうか、と思いながら読みました。読書メモを共有します。
この本のなかで、ここは何度も立ち戻ってきそうだな、と思ったのは、6つの効果的な学習方法が書かれているところです。
認知心理学の研究結果に基づいて学習効率を最大限に高める方法が提案されています(Pashler et al. 2007)。
具体的には、認知心理学の研究から得られた6つの学習方法は一貫して効果的であることがわかっており、教育に広く応用することができます。
しかし、アメリカの最近の調査(Pomerance, Greenberg, & Walsh, 2016)やヨーロッパの調査(https://research.ou.nl/en/publications/the-coverage-of-distributed-practice-and-retrieval-practice-in-fl)によると、6つの学習方法を教えている教員養成の教科書やコースは少なく、現在の学習スキルを学ぶコースでも6つの学習方法は教えられていません。(p.145)
効果的な学習法として挙げられているのは、以下の6つの方法です。
6つの学習法(p.147)
- 分散学習
学習時間を分散させたスケジュールを作る方法- インターリープ(交互配置)
学習するトピックを切り替えながら学習する方法- 精緻化
なぜ機能するのか、どのように機能するのか等を尋ねたり、説明したりする方法- 具体化
抽象的な概念を学習させる時に、具体的な例を使って説明する方法- デュアルコーディング(二重符号化)
言葉と図を組み合わせる方法- 検索練習
学習した情報を長期記憶から引き出す
ここで紹介されている6つの学習方法のうち、最も支持されている2つの方法と、それをサポートする4つの方法に分かれているようです。
6つの学習方法は、いずれも認知心理学で何十年も支持されている方法です。6つの中で最も支持されている学習方法は、学習時間の分散(spacing)と検索練習(retrieval practice)の2つです。(p.147)
学習時間の分散とは、試験前の詰め込み勉強ではなく、学習時間を分けて勉強する方法です。(略)
検索練習は記憶から情報を思い出す方法であり、テキストを読み直すよりも学習効果が高い方法です。(略)
他の4つの学習方法(インターリープ[交互配置]、精緻化、具体化、デュアルコーディング)は、分散学習や検索練習をサポートする方法として利用することができます。(p.147-148)
「どう教えるか」という授業設計にも役立つと思うんですけど、自学自習のやり方としてもとても参考になるなと思いました。僕はずーっと1つのことをやっていると飽きてしまうので、本も並行して読むし、仕事もいろんなことをちょっとずつ分散して取り組んでいるのですが、それは「分散学習」や「インターリープ」に関係するな、と思いながら読みました。あと、プロジェクトに関わっているときには、「具体化」や「精緻化」ができる人はすごいな、と思いながら見ています(ミーティングの生産性が全然違う!)。
コアになっているのは6つの効果的な学習方法なんですが、それ以外にもいろんなヒントがたくさん詰め込まれている本だと思いました。辞書的に、ときどき開いて該当箇所を学び直す、という感じで付き合う本になりそうです。
(為田)