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東京学芸大学附属小金井小学校 授業レポート No.3(2024年5月29日)

 2024年5月29日に東京学芸大学附属小金井小学校を訪問し、小池翔太 先生が担当する2年2組の図工の授業を参観させていただきました。2時間続けての図工の授業の1時間目の様子をレポートします。
 小池先生は最初に、教室の後ろに掲示されている「えのぐじま」や、新聞紙を人に見立てて遊んだ「新聞紙と遊ぼう」など、これまでに図工でやってきたことを子どもたちとふりかえります。その後で、Canvaでポスターを作ったりプログラミングで絵を描いたり、パソコンを使っても作品を作ってきたことを伝えて、「今日は、図工とパソコンです」と子どもたちに言って授業を始めました。

 このクラスはプログラミングの授業でStretch3(ストレッチスリー)*1を使ったことがあるそうで、「正しいものを判別するのに何を使ったっけ?」と小池先生が質問すると、子どもたちから「AI!」という声があがりました。
 小池先生は、「ということで、今日は、AIと図工です」と言い、モニターにNHK for Schoolの「Why!?プログラミング」を映して、「スーパージェイソンマンに変身させよう!」のエピソード動画をみんなで見ます。
 「Why!?プログラミング」では、問題を解決するということを子どもたちもわかっているので、小池先生が動画を見る前に「解決するぞ、今日も!」と言うと、子どもたちからは「おー!」と大きな声が返ってきていました。みんなでプログラミングに取り組む前に、こういう雰囲気を教室で作るのってとても大切だと思いました。
www2.nhk.or.jp

 今回のエピソードのミッションは「スーパージェイソンマンに変身させよう!」で、画像認識機能を使ってカメラに映った自分の顔や体にマスクやスーツをつけて変身させる、というものでした。「Why!?プログラミング」を見ながら、小池先生は「目・はな・口をにんしき」「かいじゅうをたおすマスクづくり」とやるべきことを黒板に書いていきます。

 エピソード動画を全部見たところで、改めてやることをふりかえります。まずは、小池先生がジェイソンがやったことをそのままみんなの前でやってみます。
 Teamsの「ずこう」のチャンネルに、Why?プログラミングの教材ファイルを送ってあるので、それをダウンロードして、Stretch3(ストレッチスリー)を開きます。
 ダウンロードしたファイルを読み込むと、カメラを許可するかダイアログボックスが表示されるので、許可します。カメラを許可するとStretch3(ストレッチスリー)の右上の「ステージ」に自分の顔が映り、その上にマスクが自動的に表示されるようになります。小池先生の顔が映って、その上にマスクが自動的に重ねて表示されると、教室では笑いが起こります。
 小池先生は「顔がここに映るけど、世界中の人がいまこれを見るわけでは…?」と問うと、子どもたちは「ない!」と返事をしていました。こういう小さいやりとりにも、自分のコンピュータとインターネットとのつながりやセキュリティの話に関連する話題への取っ掛かりがあるのだなと思いました。

 顔の上にマスクが重ねて表示されるおもしろさを楽しんだ後で、小池先生は「どうしてそういうことができるのか」ということについても説明します。場所を認識するのに「ざひょう(座標)を使っています」と説明をすると、子どもたちからは「マイクラにもある!」と声があがっていました。
 小池先生は、学校の教室のように「2年2組のとなりは2年1組」というふうな言い方だとコンピュータはわからないから、「2年2組から50移動すると2年1組」というふうに場所を伝える、と説明していました。
 カメラに映った画像の中から人の目や鼻、肩などの位置をコンピュータが認識して、座標で示して、Stretch3(ストレッチスリー)で鼻のx座標、鼻のy座標のブロックを使って、顔にマスクを装着していることを伝えます。鼻の座標とマスクの座標を合わせるので、顔がどこにあっても顔の上にマスクが出てくるようになります。

 どうやって顔の上にマスクが表示されるのか説明した後で、子どもたちは自分のSurface Go2でStretch3(ストレッチスリー)を開いて、自分でもやっていきます。顔の上にちゃんとマスクが表示されると、顔を動かしてもマスクが同じように動くかを試しています。その後で、マスクの色を変えたりデザインを変えたりしていきます。
 最低限のやるべきことを明確にして、あとは子どもたちが自分たちでやって「楽しい!」とクラスメイトと笑い合えて、もっともっといろいろ工夫したらおもしろそう、というモチベーションが湧くようになっている授業だなと思いました。こういうおもしろさが先にくるプログラミングの授業は、子どもたちがどんどん勝手に進んでいく感じがいいと思います。

 自分で色を変えてできたマスクをかぶったところを、スクリーンショットで撮影して、Teamsのチャネルに貼り付けていってもらいます。みんなの作ったマスクが一覧で見られるようになっていきます。

 マスクをかぶることができたので、次は変身ポーズをとって、肩や腕などにも変身スーツをつけるようにします。そのために、新しくML2Scratch(エムエル トゥー スクラッチ)拡張機能を使って、カメラに映っているポーズを学習して、そのポーズを認識したときにスーツを表示するようにプログラムを作っていきます。
 向きや角度が少しずつ違うポーズをくりかえし学習させて、全部同じポーズとして認識させる必要があるので、少しずつ姿勢を変えながら20回くらい変身ポーズを学習させていきます。また、変身ポーズかどうかを見分けるために、変身ポーズじゃない状態も学習させておきます。

 ここでも、最初に小池先生が自分で例を見せてくれます。小池先生も子どもたちも楽しそうに笑いながらプログラミングに取り組んでいるのが印象的でした。ここで前半にあたる1時間目が終了となりました。後半、子どもたちは変身ポーズを学習させていきました。

 No.4に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)

*1:Stretch3は自作の拡張機能を使えるように改造したScratchです。音声認識(スピーチ トゥー スクラッチ)、ポーズの認識(ポーズネット トゥー スクラッチ)、画像や音声を学習させることができる機械学習(エムエル トゥー スクラッチ)、ChatGPT(チャットジーピーティー トゥー スクラッチ)などが使える拡張機能があります。