2016年3月5日に、平成27年度「教育の情報化」推進フォーラムの2日目に参加してきましたので、内容についてレポートしていきたいと思います。
今回レポートするのは、パネルディスカッション「授業におけるコミュニケーションツールの活用 -タブレット端末、ホワイトボード、マッピングをもとに-」です。
今回のパネルディスカッションの登壇者は、以下の皆さんでした。
コーディネータ:
放送大学 教授 中川 一史氏
パネリスト:
鹿児島大学 講師 山本 朋弘氏
金沢星稜大学 教授 佐藤 幸江氏
船橋市総合教育センター 所長 秋元 大輔氏
3人のパネリストの先生方が、それぞれマッピング、ホワイトボード、タブレット端末の活用についてお話しをしてくださいました。それぞれ、気になったポイントをメモしましたので公開いたします。
佐藤先生:コミュニケーションツールとしてのマッピングの活用
最初に、佐藤先生によるマッピング活用についての紹介です。マッピングの活用意図がまとまっているのはとてもいいと思います。どんな意図でマッピングするのかによって、説明の方法なども変わってくるので、この意図を明確にもって授業を設計すべきだと思います。
- シンキングツール、思考ツールなど、さまざまな呼び名で呼ばれているが、佐藤先生は「コミュニケーションツール」と呼んでいる。
- マッピング:中心概念、階層、放射状 などがキーワード
- 21世紀型コミュニケーション力
- マッピングは思考を可視化するツール(これまでは、言葉をもとに見取るしかなかった)
- マッピングの活用意図
- 拡張的思考と収束的思考の両方に使う
- 子どもにとっては、イメージやアイディアを広げることができる
- 子どもにとっては、考えを構造化できる
- 過大や疑問を整理する、ふりかえりに活用する
- 構造化したものをもとに討論する
- 構造化したものを参照しながら文章化
- 教師にとっては、子どもの考えを把握し、評価することができる
- 先述の「これまでは、言葉をもとに見取るしかなかった」に関わる
続いて実践事例も紹介していただきました。一度書いてしまったら付け足しが難しいので、まなボードに前時の作品を挟み込み、そこに書き足していくというような実用的なノウハウの紹介もありました。
- 1年生 国語+生活科の実践事例
- 1回紙に書いたら付け足しが難しい
- まなボードに前時の作品を挟み込み、そこに付け足していく。
- 6年生 学級活動
- ピラミッドチャートを使って、収束的思考を。
- 4年生 国語の実践事例
- 新聞を書くのに、インタビューに行く。第1階層までは、各グループで同じ。その周りに、インタビューで聴いてきたことをまとめ、記事にする。
- マッピングは思考を可視化するツール
秋元先生:コミュニケーションツールとしてのホワイトボードの活用
続いて、秋元先生によるホワイトボードの活用についての紹介です。ホワイトボード、小さいものを一人1枚持っていて、サインペンで書いてみんなで提示する、という授業を最近はよく見かけるようになりました。また、書いたものを黒板に貼ってもらって、教室全体でシェアをするなどの活用も多く見られますね。
- 大きめのホワイトボードを使うと、ちょっと違うことが起こります
- 良い点と悪い点
- ホワイトボードの場の設定
- いきなり話し合いには入らない。まず、ワークシートに自分の考えを書かせる。これが非常に大事。
- ピラミッドチャートの使い方
大きさの種類が多くあるなかで、クラスがどれくらいホワイトボードを使っての学習に慣れているかによって、大きさを変えるべきです、とコーディネータの中川先生からの質問に答えていました。これはたしかにそうだろうな、と思います。
- 初めてのクラスで、いきなり大きなボードを持ってきたら、子どもたちは固まってしまう。最初からペアでやるとか、ミニホワイトボードを使うとか、段階を踏ませるのがいいかな、と思います。
当たり前ですが、ホワイトボードを使うのは目的ではなく、手段なので、「何のためにホワイトボードを使うのか」「どんな学習活動をさせたいのか」ということを明確に設定して、どのサイズのホワイトボードを使うべきか、どうした活用をすればいいかを決めなければなりません。
山本先生:コミュニケーションツールとしてのタブレット活用
個人的にはタブレットを活用した山本先生の報告が最も楽しみでした。タブレット端末にどんな可能性があるのかから話がスタートし、どんなことができるのかを紹介してくださいました。
- タブレット端末の可能性
- 携帯性 どこでも持ち運べる
- 操作性 子どもたちも簡単に操作できる
- 多様性 アプリやコンテンツが非常に多い。従来のPCの時代との違い。
- タブレット端末で行うこと
- イメージマップ、ホワイトボード、ポスター発表、プレゼンテーション、ブレーンストーミング、パネル討論、ジグソー学習…
- いろいろなレベルで使える(対話、交流)
- プレゼンテーション
- 聴いている児童が撮影することで、モニタリングのツールで使える。形成的評価もできる(数時間でどれくらい上手になったか、何回か前の授業と比較ができる)
- いろいろなレベルで使える(討論、共有)
- ずっとタブレットを使っているわけではない。切り分けが大事になってくる。
- 課題別グループ学習→生活班グループ学習(※ジグソー学習っぽくできる)
- 図表やマップはタブレットと相性が良い
- ポスター発表の時に、動画をタブレットで再生してみせる、補完的にも使える。
ここまで聴いていて、タブレット端末を一人1台持って、ポスター発表をしていた袖ヶ浦高校の発表会を思い出しました。
blog.ict-in-education.jp
山本先生は熊本での実践に関わられていた先生なので、熊本と千葉県の袖ヶ浦高校と、こうして日本全国で良き実践事例がどんどんシンクロして、ノウハウが共有されて、広がっていけばいいなと思いました。
先生方が懸命に努力して授業を作っているわけで、全国の優秀な先生方が、目指す方向性が同じで、少し実践方法が違う、というようなケースがたくさんあると思いますので、そうしたものをシェアどんどんできるといいな、と本当に思います。
まとめ
マッピング、ホワイトボード、タブレット端末、と使っている道具はそれぞれ違うし、良さもそれぞれ違うのですが、それぞれの特性をしっかり把握したうえで、これらを「選べる」かどうかが重要だと思います。そのうえで、こうして並列に説明してくれるパネルディスカッションはおもしろいと思いました。
同じ学年・同じ単元を、「マッピングを使ったとき」「ホワイトボードを使ったとき」「タブレット端末を使ったとき」で3パターン、比較検討するようなイベントできないですかね(自分でやろうかな…)。ご協力いただける先生がいらっしゃれば、ぜひやってみたいです。
No.3に続きます。
blog.ict-in-education.jp
(為田)