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『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』 ひとり読書会 No.3「第3章 課題中心型インストラクションの原理」

 C.M.ライゲルース、B.J.ビーティ、R.D.マイヤーズ『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』をじっくり読んで、Twitterハッシュタグ#学習者中心のID理論とモデル 」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。

 今回は「第3章 課題中心型インストラクションの原理」を読んでいきます。僕はICTを活用した授業を担当することが多いので、自分でカリキュラムを書くときには、この「課題中心型」になるように考えていることが多いと思いました。だからこそ、こうしてモデルを知ることと問題点を知ることは重要だと思っています。

 情報時代の学校になり、一人1台の情報端末が活用できるようになれば、課題に一人ひとりが取り組むことができるようになります。課題中心型インストラクションの存在感は大きくなるように思います。

 課題中心型のインストラクションの普遍的原理についても書かれていました。なんとなくの実践にならないように、どういう点を考慮して設計しなければならないのか、まとめられていました。

課題中心型インストラクション(TCI)の普遍的原理(p.69-75):

  1. 学習課題
    • 指導者またはデザイナーは、学習者が主要概念に対応した知識とスキルを現実的な方法で適用することを要求する課題は何かを複数、特定する必要がある。(学習の過程でどのトピックを網羅して学習者に提示するかを決定するのではない)
    • これらの課題は、学習者が学習後直面する現実世界の課題を元に作られるべきであり、学習状況の制約内で可能な限り多く、現実の課題と同じ側面を含むべきである。
    • TCIでは科目の学習に必要なトピックに関連する一連の学習課題が示される。学習者はこれらのトピックを学習・適用して課題を完了することが求められる。これら一連の課題では、次の学習課題を完了するためにはますます多くの知識が必要とされるようなものを開発・配置するべき。
    • これら一連の課題に取り組む経験から、学習者は関連情報や認知方略を習得し、それらを将来の経験のために転移することができるようになる。
  2. 既有知識の活性化
    • 既有知識の活性化(activation)とは、学習され、完遂されるトピック・課題に関連する認知構造を活性化することを意味する。
    • 学習者に関連する以前の経験を互いに共有させたり、あるいは新しい知識を体系化するための構造を想起させるための構造を想起させることによって可能になる。
  3. 例示/モデリング
    • 学習課題の実行方法を学習者に示すこと、学習課題に関連する手続き的および支援的な情報を提供することが含まれる。
    • 学習者に提示される例示/モデリングの量は、学習者が知識を身につけるにつれて徐々に減少させていく。
    • 学習課題に関連する情報は、学習課題の実行方法を示す実際の例示の前または最中に提示される。手続き情報と支援的情報の2つに分類できる。
      • 手続き的情報:学習課題を実行するために取るべき一般的な手順に関する情報
      • 支援的情報:学習課題に関連するトピックや概念が含まれるが、学習課題を完了するための手順そのものではない。学習課題に適用されている教科関連の概念は、支援的情報とみなされる。
    • 講義型のプレゼンテーションよりも例示/モデリングが有効であると近年の研究でも確認されている。対面式、ビデオ、およびピア例示を含むさまざまな例示の有効性に焦点を当てた研究もある。
  4. 応用(application)
    • TCIでは、学習者は学習課題を実行するために自分の知識を適用する。TCIでの応用は、実際の科目内の学習経験の一部として行われる(学習成果の応用が学習終了後に行われるという仮定の上で設計されている学習経験とは異なる点)
    • 学習者が自身のパフォーマンスを改善する方法を模索するために、学習者によるパフォーマンスの能動的な自己モニタリングを含むべき。学習者に自身の思考過程を言語化させるなど。
  5. 統合 / 探究
    • 学習者が日常生活の中で新しい知識やスキルを使う、あるいは新しい知識やスキルを使うための新しい方法やアイデアを探求するという学習の段階。
    • 新しい課題に以前学んだことを適用することによって、もしくは新しいオプションやアイデアをさらに探究することによって、学んだことを次のレベルに引き上げることを意味する。

 一方で、課題中心型のインストラクションの実装上の問題も書かれていました。ここで書かれている、「学習課題の特定」については、学校の先生のカリキュラム・マネジメントには及ばないな、といつも思っています。教科で学んだことを、どう課題に織り込むかというところがやはり僕としてはできていない部分だなと感じています。

課題中心型のインストラクションの実装上の問題(p.81-84):

  • 学習課題の特定
    • 実世界の経験を提供しながら、必要なすべての知識とスキルを網羅し、そして学習者のスキルレベルに一致させるような適切な学習課題を特定・設計することの困難さ。
    • 学習者が身につけるべき知識とスキルを使って十分な練習を受けられるようにしながらも、真正で関連性が強く感じられるような学習課題を選択しなければならない。
  • 利用可能な資源対学習者数
    • TCIを実施するための資源には、指導時間や機器、およびテクノロジーが含まれるが、学習者が多数いる場合には大幅に不足する可能性がある。
    • 学習者が課題を遂行している間、指導者が学習者全員を観察し、助けることができないため、指導者によるコーチングやフィードバックも制限される。TCIは、学習者中心の教育パラダイムの中でも、少人数で活動する状況に適している。
    • 技術的な解決策として、情報時代に特有なオンライン資源を利用することが考えられる。
  • 学習の深さと広さ
    • TCIは学習の幅よりも深さを重視する傾向がある。
    • TCIには、学習者に概念やアイデアの膨大なリストを暗記させ、暗唱させるための効率性はない。時間の成約で、重要な知識とスキルをすべてカバーすることも難しい。
    • TCIで扱われた狭い範囲のスキルや概念を学習課題で学んで応用することで、深く内面化しているので、転移できる可能性が高い。
    • 足りない広い範囲の概念とスキルの網羅は、テクノロジーとメディア資源を利用することで解決策となる可能性もある。
  • 完全習得の徹底
    • 理想的には、各学習者が学ぶべきすべての概念とスキルを完全習得する必要がるが、それを保証することは困難なので、協働作業を取り入れる。
    • 指導者は各グループが行う協働作業に構造を追加する必要がある。グループメンバーが同じ知識を応用する機会を持てるようにしたり、各自の知識を判定するために学習者を個別評価したり。

 実装するときの課題に触れているなかでも、テクノロジーとメディア環境がこれを解決していくかもしれない、という表現が多く書かれています。「学習の深さと広さ」や「完全習得の徹底」は、オンライン教材やアダプティブラーニングができるEdTechなどの活用により、実装を助けられる部分も多いと思いました。

 No.4に続きます。
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(為田)