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『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』 ひとり読書会 No.11「第11章 学習者中心の教育パラダイムのためのテクノロジーのデザイン」

 C.M.ライゲルース、B.J.ビーティ、R.D.マイヤーズ『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』をじっくり読んで、Twitterハッシュタグ#学習者中心のID理論とモデル 」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。

 今回は「第11章 学習者中心の教育パラダイムのためのテクノロジーのデザイン」を読んでいきます。学習者中心の教育と研修を実現するのに、テクノロジーが不可欠であるということが、理由とともに書かれていました。


  1. 時間の節約
    • 「テクノロジーツールは教師の時間を大幅に節約する。真に個人に合わせた達成度に基づいた指導と評価を提供できるようにし、費用対効果を高める」(p.286)
      • 学びの個別最適化にも関わる内容。一人ひとりに問題を出し分け、それぞれを評価して、次に何をすべきかを考え…というところまでを、いまの学校のクラスサイズで先生がすることはほぼ不可能。テクノロジーをうまく武器として使ってほしいと思います。
  2. 学習者のやる気を高め、没入させる課題環境
    • 「テクノロジーツールは学習者のやる気を高め、没入させるような課題環境を可能にする」(p.286)
      • ゲーミフィケーションなどでやる気を高めたり、没入させることも可能になる。
      • テクノロジーツールを使って外部と結びつけることで、社会と繋がるプロジェクトを設定することができるようになる。それもまた、やる気を高め、没入させるような課題と言えると思う。
  3. 学習者に無限に忍耐強く寄り添う
    • 「テクノロジーツールは学習者がそれを必要とするときに、無限に忍耐強く、しっかりと設計された個別指導を提供する」(p.286)
      • この「無限に」「忍耐強く」という部分も、いまのクラスサイズで先生がし続けるには限界がある部分。テクノロジーで代替できるところはして、テクノロジーでカバーできないところこそ、先生方が子どもたちに寄り添ってほしいと思う。

 こういった考え方に基づいて、統合型テクノロジーシステムとして仕様がまとめられ、「個人に合わせた統合型教育システム PIES(Personalized Integrated Educational System)」となったそうです。個人に合わせた統合型教育システム PIES(Personalized Integrated Educational System)は「個人に合わせたインストラクションのために設計され、学習を支援するためのあらゆる機能のシームレスな統合」を実現した、と書かれています(p.286)。

 個人に合わせた統合型教育システム PIES(Personalized Integrated Educational System)を設計するときの基礎となる価値観も書かれていました。

PIES(Personalized Integrated Educational System)設計の基礎となる価値観(p.287-289)

  • テクノロジーは、学習者の勉強を第一に支援し、教師の仕事も支援する必要がある
  • テクノロジーは、学習者に権限を与え、自己主導型学習を支援するように設計する必要がある
  • テクノロジーは、没入できて、真正性があり、やる気を起こさせる学習環境と課題を作る必要がある
  • テクノロジーは、真正のある課題の実行中に、学習者にジャストインタイムのコーチングと教育的支援を提供するために利用されるべきである
  • テクノロジーは、学習環境内に真正性のある評価を埋め込み、学習者の学力を証明するためのテストを別に行う必要性を回避するために利用されるべきである
  • テクノロジーは、個々の学習者のニーズと好みに合わせて指導を個人に合わせるために利用されるべきである
  • テクノロジーは、定型的で退屈な作業の多くから教師を解放するべきである
  • テクノロジーは、学習者間、学習者と教師、学習者と保護者、教師と保護者間のコミュニケーションと協働を促進するべきである
  • テクノロジーが提供するすべての機能は、単一のシステムにシームレスに統合される必要がある。モジュール化され、相互運用でき、Web APIとカスタマイズ可能なシステムで、開発者が新しいモジュールを開発したり、既存のプログラムアドオンを追加することを可能にするべきである

 最後の項目については、すべてを単一のシステムにシームレスに統合しなくても、クラウドなどを組み合わせてある程度はできるようになるのではないかな、と思ったりはします。ただ、そのために共通のルールやプロトコルなどはあった方がいいかもしれないですね。学習の履歴の書き方、進学先への申し送り事項、家庭とのやり取りの記録などはが、この共通で運用したほうがいいのではないか、と思うところです。

 この第11章で書かれていることは、学校の先生方にはあまり関係がないと思われるかもしれませんが、テクノロジーで PIES(Personalized Integrated Educational System:個人に合わせた統合型教育システム)を作ったら、どこまでできるのか、ということを先生方が知っていることは、とても重要なことだと思います。自分で開発ができなくても、テクノロジーを使って教育をどう変えるかを知っている先生方が、学校で使うテクノロジーの開発と実装に関わることができれば、教育の情報化を一段と進めていってくれると思います。

 No.12に続きます。
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(為田)