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新渡戸文化中学校 授業レポート No.1(2020年10月7日)

 2020年10月7日に新渡戸文化中学校を訪問し、中学校1年生から3年生までが一緒に学ぶクロスカリキュラムの時間を参観させていただきました。新渡戸文化中学校では、毎週水曜日の時間割にクロスカリキュラムを設けていて、各教科の教科領域を学ぶのではなく、テーマを元に生徒たちが自らゴール設定をし、どんどん自分たちで学んでいくという授業を行っています。

 クロスカリキュラムの授業での先生方の仕事は、ガイドする問い(Guiding Question)やガイドする資料(Guiding Resouces)を必要に応じて投げかけ、生徒の活動をサポートすることに徹することです。クロスカリキュラムの統括をされている山本崇雄 先生は、「生徒は自由に学ぶ中で、教師のガイドで視野を広げたり、思考を深めたりしていきます。あくまで生徒たちの自律的な学びを援助するのが先生の仕事です」とおっしゃっていました。
 クロスカリキュラムは時間割の中にあるため、国語や数学や英語などのさまざまな教科の先生が担当としてクロスカリキュラムの時間にアサインされています。そのため、生徒たちのやりたいことが教科領域に近いときは、その教科専門の先生がサポートできます。生徒たちに学ぶべき素材を与え、励まし導いていくという形で、クロスカリキュラムの授業は進んでいきます。

 3学年同時に行われるクロスカリキュラムの授業は、テーマごとに分かれて、それぞれ違う活動をしています。この時期は、文化祭のテーマである「食」に関連して探求したり、文化祭そのものを楽しむための話し合いをしていました。
 ある教室では、中学3年生がクラスパーカーをみんなで作っていました。新渡戸文化中学校では、一人1台のiPadを使っています。話し合いの間も、一人ひとりでiPadを使ってアイデアを考えたり、インターネットで参考になる情報を探したり、「これ見て」とiPadの画面を見せ合ったりしていました。
 一方で、話し合いはホワイトボードを使いながら進められていて、アナログとデジタルを自由に行き来しながら、活動をしていました。
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 中学1年生は理科室でコーヒーやナスなどを使って布を染めていました。これらは、コーヒーを抽出後の豆であったり、規格外野菜であったり、売り物にならないものを使用しており、フードロスの問題などにも関連したアイデアです。染めた布でコースターを作って文化祭で売ることも検討していると言っていました。どんな素材が染まりやすいか、どんな方法をとればいいかなど、染色についてのサポートを理科の先生がされていました。
 自分たちで染めた布で作ったコースターを文化祭で売るまでの過程には、どうやって布が染まるのかという科学的原理、日本でこれまであった染色文化、商品デザイン、染めた布を売るノウハウなど、さまざまな内容が組み合わさっています。こうした内容はクロスカリキュラムならではだと思います。
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 クロスカリキュラムの授業のなかで、生徒たちがやりたいことを実現するために行動していると、「いろいろな教科が集まってくる」と山本先生は言います。そもそも、社会でのさまざまな活動はいろいろな教科の知識が複合的に集まっていて、それを教科ごとに分けて教えているのはカリキュラムの問題だとも言えます。こうしてクロスカリキュラムになれば「いろいろな教科が集まってくる」形で生徒たちが学んでいけると思いました。

 No.2に続きます。
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(為田)