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村上市立村上小学校 授業レポート(2023年6月19日)

 2023年6月19日に村上市立村上小学校を訪問し、小野浩由(ひろゆき) 先生が担当する4年1組・4年2組の体育の授業を参観させていただきました。この日は、一人1台のChromebookを持って体育館に集まり、新体力テストデジタル集計システム「ALPHA(アルファ)」を使って立ち幅跳びと反復横跳びの練習をする授業でした。

 「立ち幅跳びと反復横跳びの記録を伸ばすために、どんなところに気をつければいい?」と小野先生が子どもたちに質問すると、「タイミングを合わせる」などの声があがり、実際に子どもたちにやってみてもらったりしながら、ポイントを考えていきました。
 今回の授業で活用するALPHAには、お手本として見られる動画「アスリートが教える新体力テスト」が搭載されています。Chromebookを持ち帰っているので、家でこの動画を見てきて、お手本動画で学んだポイントを紹介してくれる子もいました。体育館のモニターでもALPHAのお手本動画をみんなで一緒に見てみて、立ち幅跳びと反復横跳びのポイントをみんなで復習しました。また、記録の数え方の注意なども、お手本動画を見ながら確認しました。

 子どもたちは立ち幅跳びと反復横跳びをしたら、自分の体力テストの結果を自分で自分のALPHAの画面に登録していきます。小野先生は、登録の仕方をモニターを使って説明します。

 ALPHAでの記録の方法を確認したら、実際の練習に入ります。4年1組と4年2組で全部で10班に分かれて行う立ち幅跳びは、体育館のなかに10個のマットを敷いてあり、そこでグループごとに行って計測し、ALPHAで結果を記録していきます。

 反復横跳びは、スポーツタイマーで20秒ごとにブザーが鳴るように設定してあ流ので、班で役割分担をして反復横とびに取り組む人と記録を数える人を分担して、始めるタイミングをブザーに合わせて計測をしました。
 立ち幅跳びも反復横跳びも、何度もトライしてもらえるようになっていて、班のメンバー同士でアドバイスし合いながら計測していきます。

 自分の記録をALPHAに入力していきます。種目ごとに記録を入力する場所が決まっているので、間違えないように確認しながら自分で入力していきます。

 ALPHAに入力すると、自分の記録を体力テストの得点に換算してくれます。得点の上には、「1kg増えると8点だ!」とか「0.2秒早くなると9点だ!」というふうに、どれくらい記録を伸ばせば得点が増えるのかのコメントも自動で書かれます。
 得点が出ると、「握力」「上体起こし」「長座体前屈」「反復横跳び」「20mシャトルラン」「50m走」「立ち幅跳び」「ボール投げ」の8種目の得点でレーダーチャートも自動で描画されます。
 自分の結果を全国平均と並べてすぐに見ることができますし、昨年の記録も見られるので、自分の記録がどう変化したかを子どもたちが自分で見ることができます。紙の記録用紙より記録するのも簡単ですが、得点への換算、全国平均との比較、昨年度の記録の参照などが簡単にできることによって、体力テストの記録への子どもたち自身のフィードバックの仕方も変わっていくのではないかと思いました。

 村上小学校では、3年生以上がALPHAを使っているそうです。これまで体力テストの記録は紙で記録してきたわけですが、それに比べて子どもたちが自分でALPHAに入力するようになって、先生方の記録の入力作業はチェックが主になるので、楽になっていると言います。
 チェック作業が必要なのは、転記ミスがあったり、「138cm」と書くところをmと勘違いして「1.38cm」と入力してしまうことがあるからです。

 体力テストは年間に1回だけ行うイベントになりがちで、子どもたちにフィードバックをする時間もとれなかった学校も多かったのではないかと思います。
 ALPHAを使ってデジタルで記録の入力を行うことで、記録や得点の集計やそれを見せるための準備にかかっていた時間を効率化し、その分で子どもたちにどんなふうに伝えるのがいいかを検討できるといいと思いました。
 昨年より記録が伸びていることを伝えてあげることで、「自分ができるようになった」ということを感じられるのは、子どもたちにとっていいことだと思います。
 また、さまざまな種目の記録を昇順や降順で並べ替えできれば、近い記録を持つ子たちで班を作ることができて、班の中でのアドバイスを同じくらいの熟達度の子ども同士で行うこともできると思いました。近い記録を持つ子同士の方がもっている課題も似ていると思いますし、記録を上げようというモチベーションにも繋がるのではないかと思いました。

 ALPHAを使うことは、ただ体力テストの記録をデジタルで入力するだけでなく、入力した記録を体育の先生方が見て、より記録を伸ばしたり、身体を動かすことの楽しさを感じさせたりする、日々の授業の設計の手助けとなるのではないかと感じた授業でした。

(為田)