教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

教材で使えるかも:『25歳からの国会 武器としての議会政治入門』

 平河エリさんの『25歳からの国会 武器としての議会政治入門』を読みました。タイトルに「25歳」とあるので、学校で読むには早いかな?と思いましたが、これは被選挙権を得られる=立候補ができるようになる年齢で、中学生・高校生くらいから読んでほしいな、と思いました。

 まえがきに「民主主義が揺らいでいる」と書かれている部分がありました。議院内閣制をとっている日本の状況や、アメリカでの議事堂占拠の事件などを題材に、民主主義について考えるきっかけにできるのではないかと思います。

ケンブリッジ大学の調査によると、160ヵ国以上のミレニアル世代(1981~1996年生まれ)の民主主義に対する満足度はわずか45%であり、この100年で最低であるそうです。
今、我々は民主主義の価値が問い直される時代に生きています。民主主義は単に自由に海外に行けたり、VPN抜きでインターネットに繋げたりするだけの価値ではありません。それは、事実の価値であり、議論の価値であり、人間の尊厳の価値です。
我々は、民主主義が混乱し、非民主的国家が豊かになっていく世の中で、なおも民主主義の価値を信じ、それを推し進め、そして守っていくという、困難な任務を背負っているのです。なぜなら、一度民主主義が失われてしまえばそれを取り戻すのは極めて難しいからです。我々は、一人ひとりが民主主義の担い手なのです。(p.4-5)

 「民主主義に満足していない」と紹介されていたケンブリッジ大学での調査を検索してみました。ミレニアル世代(1981年~1996年生まれ)、ジェネレーションX世代(1965年~1980年生まれ)、ベビーブーム世代(1944年~1964生まれ)、戦間期を経験した世代(1918年~1943年生まれ)の4つの世代で、民主主義に満足しているかを調査しています。
www.cam.ac.uk

 「民主主義に満足していますか?」という質問をもし自分が訊かれたらなんと答えるだろう、と考えてしまいます。

 学校で国会や選挙などを学ぶときに、こうしたデータを見つつ、「いまの日本ではどうですか?」と質問をしてみたいな、と思いました。住む国は簡単に変えられるものではないからこそ、国会について知ることは大事だと思います。

国に住むというのは家に住むことと同じです。国の仕組みも家も、一度完璧なものを建てて終わり、ということはありません。住んでいればいずれ汚れ、ゴミが溜まります。残念ながら。政治と関わるということは、掃除と同じようなものです。一度やれば終わりということはありません。もしかすると、あまりのゴミの多さにうんざりすることがあるかもしれない。それでも、もしそれを怠れば、たちまち家はゴミで一杯になります。
もう少しポジティブな例を出せば、ランニングと考えてみてもいいかもしれません。一度のランニングで劇的に健康になることはありません。しかし、続けていけば必ず変化は出ます。
本書はそのように気が重く、また気の長い政治と民主主義への関わりのお供になるよう、可能な限り平易に、かつ中立的な目線で書いた「教科書」的な本です。(p.10)

 国会については、どんな議論がされているのかが議事録を検索してみることができるようになっています。この本のなかでもたくさんの国会での議論が収録されていますが、そうしたものを検索して見ることもできると思います。デジタルの強みであるアーカイブ性と検索性を使って、国会について理解を深める授業をすることは大切だと思います。
blog.ict-in-education.jp

 学校の授業で教えられる概論的なところから少し踏み込んで、これまでの国会でどんな議論がされてきたのか、ということを読むことができるのではないかと思います。「総理大臣と国会」「国会議員の仕事とは」「国会が動くとき」「野党の役割」「選挙制度と国会」「ジェンダーと国会」の全6章が収録されています。

(為田)