教育ICTリサーチ ブログ

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横浜市立高田中学校 ICT研修会レポート(2021年10月15日)

 2021年10月15日に、横浜市立高田中学校のICT研修会にお招きいただきました。すでに高田中学校では、一人1台のChromebookを授業で活用して、分散登校時も初日の授業から朝学活から終日、全授業全教科でMeetでのリアルタイム授業を実施していたそうです。また、GIGAスクール端末が支給される前にも、昨年の一斉休校の時から民間企業からChromebook貸与を受け、教職員のGoogle研修を実施したり家庭にパソコンがない生徒に貸出をしたり、と、コロナ禍の学びの継続にいろいろチャレンジしてきた背景があったそうです。
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 今回の研修では、「ICTを活用したくなるようなポジティブな話をしてほしい。また、教科での活用の話をしてほしい」というリクエストをいただいていました。一人1台の端末をもち、授業支援ツールを使うことで、よりたくさんの生徒の意見を見ることができるという授業事例や、Google Workspace for Educationを使って作文指導をする国語の授業の事例を紹介しました。
 中学校での事例だけではなく、小学校や高校など異なる校種の事例も入れて紹介しました。児童生徒がICTをどう使うかということを授業事例を通じて知ることで、高田中学校の先生方が、自分が担当している教科や学年に応用してどんな授業ができるかを考えていく機会になればいいなと考えました。

 研修終了後に先生方に回答してもらったアンケート結果を見せてもらいましたので、抜粋して紹介したいと思います(一部、表現を直している部分があります)。

 最初に、紹介した事例について、「いちばん印象に残った授業(取組)」についてです。作文については、思考・表現のツールとして一人1台の情報端末を活用する、もっともシンプルな形だと思います。授業のなかで使う機会が増えれば、回答にもあるように「家に持ち帰ったり、印刷したりする」という運用にも広がっていくと思います。授業でどのような学びを実現したいのかによって、運用ルールを作っていくことができるのがいいと思います。

いちばん印象に残った授業(取組)

  • 国語文章入力を通じた子どもの学習意欲と作文力の向上
  • 作文、課題の答え、思っていることなどを書くこと
  • そのPCを家に持ち帰ったり、作った文書を印刷できなければ、何度も繰り返しや復習を要する教科には難しいと思った。

 次に、「今後、ICTを活用した授業でやってみたいこと」です。一人1台の情報端末をもつことで、協働編集なども簡単にできるようになります。これまでに高田中学校では一人1台での学びに取り組んでいるので、その継続のために必要な機器についても回答されています。

今後、ICTを活用した授業でやってみたいこと

  • ペア班などの複数人で共同作業(スライドやドキュメント)をやってみたい。
  • 子どもたちがデジタル教材を通じまず学び、疑問点を教員が個別に対応するなど個に応じた学び
  • すでに取り組んだことの継続。
  • 道徳の授業などでは発表させるのではなく、共有画面を利用することで意見を共有することでさらによくなるのではと思いました。
  • 教室固定で、黒板に直接投影できるプロジェクター

 次に、「いまICTの活用で困っていること」です。授業でどう使うかということだけでなく、システムや設備などのことについても言及されています。

いまICTの活用で困っていること

  • 生徒にChromebookを使用する時間を確保して、タイピングやその他アプリの使用能力をあげたい。
  • なかなかそれらの時間を確保することが難しい。また職員のスキルをあげる必要を感じる。職員研修の実施も時間的に難しい。
  • 設備が十分でないのに、あゆみだけ進められているところ。結局はICTを進めることによって逆に二度手間3度手間になっていることがストレス。
  • 機能は知っているが、それを授業でやりたいことに生かせない。授業実践というより、授業でどのような機能をどう使ったかを知りたい。
  • 支援員さんがいらしているときに自分が忙しくてたずねる準備ができていず、たずねたいときにはいらっしゃらないこと。早めに準備しておくようにします。
  • 授業での活用は各自のペースで取り組めばいいことですが、オンライン授業などでは全体で合わせていかなくてはいけない。それについていくことがとても負担になってしまう。
  • 横浜市システム環境のデータの互換性。WindowsChromebookでキャッチボール。

 最後に、「その他」のコメントです。さまざまなコメントをいただき、今後の研修に活かしていきたいと思いました。

その他

  • Chromebookの使用方法やオンライン発信での職員の共通理解やルール作成・共有がとても難しかったです(今も)。ICTを授業に落とし込むのがこんなに難しいとは想像以上でした。まだまだ時間がかかりそうです。
  • 既に他校での具体的な実践事例が多く聞けて利用シーンの想像の助けとなりました。
  • いつでも疑問なことを調べられる、学校としての度量があるといいなと思います。その中で失敗はあるとは思いますが…。
  • 何でもICTを活用すればいいというわけではないので、必要なもの、有効なものをしっかりと見極めて活用していくことが大切だと思いました。

 我々外部の人間からは、「こういうこともできます」「ああいうこともできます」と言うのは簡単ですが、現場でそれを実装するときには、学校内で決めなくてはならないこともたくさんあります。こうして、学校それぞれの現場での事情を聴くことができるのは、とても貴重なことだと思います。
 こうしていただいたコメントを活かして、一人1台の情報端末を、思考のツール・表現のツールとして使った学びの形を、学校が望む形で実現する手伝いが今後もできればと思います。

(為田)