教育ICTリサーチ ブログ

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佐川町立黒岩小学校 授業レポート(2021年11月11日)

 2021年11月11日に、佐川町立黒岩小学校を訪問し、6年生の総合的な学習の時間を参観させていただきました。黒岩小学校は5年生と6年生の複式学級ですが、この日は5年生が校外学習で不在だったため、黒瀬忠行 校長先生がプログラミングロボット「Root」を使った授業を行いました。
 教室の机をどかして広いスペースを作ってから、Rootを一人1台渡します。黒岩小学校の6年生は6人なので、一人1台のRootを使った授業が可能です。iPadでアプリ「iRobot Coding」を開いて、Rootとペアリングをします。
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 最初に黒瀬先生は、Rootの上の部分の4つに分かれたパネルがあることを説明して、「パネルをさわったらどうなるか?」とブロックを使ってプログラムを作れることを説明します。まずは、パネルを押したらまっすぐ走るようにプログラムしてみます。一人ひとり、自分のRootを思ったとおりに動かすことができました。

 次に、4つあるRootのパネルのうち、「“右上のパネル”を押したら右に曲がる、っていうのをやってみよう」と黒瀬先生は言います。iRobot Codingの「パネルを押したら」ブロックをもう一度押すと、4つのパネルそれぞれのONとOFFを設定できることを紹介すると、子どもたちは「パネルを押したら」ブロックを使ってプログラムをどんどん組んでいきます。
 「パネルを押したら」ブロックを4つ並べれば、「これだけあれば、いろいろできる」と子どもたちから声が挙がっていました。ブロックをたくさん並べることで、プログラミングがスタートする条件をいろいろと決めることができます。パネルを押したときだけでなく、衝突を感知するバンバーセンサーも紹介して、しばらく自分たちでセンサーを使ったプログラミングをしてもらいました。
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 しばらくみんながプログラムを組んでRootを動かしている時間をとってから、黒瀬先生は「実は、Rootの裏側にもセンサーがあります。例えば、緑の色を感知したら動くようにするとかもできます」と伝えます。子どもたちはRootをひっくり返して、センサーを探していました。
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 子どもたちに一人1枚の模造紙を配って、緑のペンで線を描いてもらい、「緑をスキャンしたら」ブロックを使って、先の上を進むプログラムを組んでいきました。子どもたちは問題なくプログラムを作れていました。
 「これだけだと、先からずれたら止まってしまうね」「次は、青のペンで“ひょうたん型”を描いて、一周ぐるっと廻るようにしてよ」と黒瀬先生は言います。さっそく取り組む子どもたちからは、「え、むず!」「はあ?なんでそっち行くがやし…」という声が挙がっていました。この「なんで?」を何度も繰り返すことこそが、プログラミングの授業として大事だと思います。
 何度も失敗を繰り返して、「どうやったら曲がるの?」とクラスメイトと話あったり、「じゃあこうやったらどうだろう?」と先生方やサポートのICT支援員の方と一緒に考えたりしながら、プログラムに取り組むことが重要だと思います。 
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 途中、黒瀬先生がヒントを伝えてくれました。Rootの色を感知するセンサーは、5つの部分に分かれているので、「真ん中のセンサーが青を感知したときは…?」「右端のセンサーが青を感知したときは…?」というふうにみんなで考えていきます。
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 どういうふうに考えたらいいかということだけを伝えて、答えは教えないという教え方は、プログラミング授業で子どもたちに火を点けることができるパターンではあります。ただ、一方で「わからない…」という子がいる場合には、どのくらいまでヒントを見せるべきかなど、クラスの文化や先生と子どもたちとの関係性によっても変わってくるものだと思います。
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 今回のクラスでは、一人1枚の模造紙に一人1台のRootを使っていたので、自分が描いた形を回るプログラムを作るのに懸命になりすぎていて、意外とクラスメイトのプログラムを見る機会が少なくなってしまったようにも思いました。自分の描いた形を回ることができたら、クラスメイトの描いた形でも同じように回れるかを試したりする活動が入ると、よりプログラムを改良していく動機づけになると思います。
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 自分で考えたとおりにプログラムが動いて、ちゃんと一周できたときには、子どもたちは「やった!」と喜んでいました。この「できた!」という喜びと共に、「あれ?できない…」という失敗にめげずに、「じゃあ、こうやったらどうだろう?」と何度もプログラムを書き直すマインドと、両方を得られるようにプログラミングの授業は設計できるといいな、と子どもたちのチャレンジを見ながら思いました。

(為田)