教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

子どもたち全員の端末の画面を見られる仕組みって、要ります?

 小中学校で先生方と話をしていると、「一人1台もっている情報端末で子どもたちが授業中に何をしているか見たいので、全員の端末の画面を見られる仕組みがほしい」という声を聞くことがあります。
 まあ、たしかに授業と関係ないことをしちゃったりする子もいるかもしれませんし、言葉を調べただけなのにリンクに引っ張られて関係ないサイトを見ちゃったりする子もいるかもしれませんし、心配ではありますよね、理解はできます。
 でも、ちょっとそれは落ち着いて考えてみた方がいいように思うのです。

 というか、僕は明確に「全員の端末の画面を見て管理をする」ということについては反対です。管理をするのは短期的には効果があるように思えるかもしれませんが、長期的に見たら、あんまり効果がないように思うのです。その理由を明文化するために書き出してみます。

  • 全員の画面をチェックしながら授業なんてできなくないですか?
    授業を自分で進めながら、全員の画面をチェックするのって、たぶんすごく大変だと思います。
  • 他のことをしちゃう子は、今までもいた気がします
    授業に関係ないことをしちゃう子は、そもそも授業に集中できていないことがほとんどだと思いますので、仮に端末を使わない授業をしても、他のことを考えていたり、手元で落書きをしていたりするんじゃないですかね…?
  • ずっと管理をしていたら、子どもたちは嫌になっちゃいませんかね?
    ずっと自分の画面を見られていると思ったら、子どもたちは端末を使うのを嫌になってしまいませんかね…。管理をされている端末を喜んで使う子はいないので、結果的に端末はいやいや使うものになってしまう可能性が高いと思います。そうなったら、GIGAスクール構想の目的を達成できませんよね?そもそも、大人だって、そんなふうに管理されていたら嫌ですよね。自分がされて嫌なことは、子どもにもしないほうがいいと思うのです。
  • いつからなら、信じてあげられるようになるのですか?
    「いま何をやっているのか」を常にチェックして、悪いことをさせないようにするとして、いつから子どもに自由を与えるつもりですか?自分の担当している学年が終わるまで、なんとか抑えつけることができたとして、次の学年ではどうしますか?学校を卒業した後はどうしますか?
  • 失敗をさせるなら、小さな失敗を、先生の目の届く範囲で。
    授業中に他のことをしていて先生の話を聞き逃したり、的はずれなことをしたり、そういう小さな失敗は、子どもたちのことをよく見ることができる先生と、その子のことを知っているクラスメイトが一緒にいる教室でしておいたほうがいいと思います。社会に出て影響が及ぶ範囲が広いところでいきなり失敗するよりずっといいと思います。

 こんな感じのことをたくさん思いついたりするので、先生と話しながらどうしたらいいかを考えています。僕自身も子どもたちに授業をしていて、「こんなことなら、禁止して管理してしまったほうが楽かもしれない…」と思うことはあります。でも、それは長期的に見たら子どもたちのためにならないし、今の現状を変えるためにすることは子どもたちへの管理を強めるよりは、まず自分の授業を見直すこと(アクティビティの設計を変えたり、発問を変えたり…)だと思っています。

 先生方に力強く、「子どもたちを信じて、任せましょう!」と言えるようになるには自分自身がまだまだ力不足ではあるのですが、方向性としては「信じて任せてみませんか?」と言っていきたいと思っています。

(為田)