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近畿大学附属小学校 授業レポート No.1(2022年10月3日)

 2022年10月3日に近畿大学附属小学校を訪問し、大木大生 先生が担当する4年竹組の算数の授業「与えられた資料をがい数を使ってグラフで表現する」を参観させていただきました。

 授業の最初にKahoot!を使って、四角形とがい数についての既習知識の定着を確認する時間がありました。子どもたちは一人1台のiPadでKahoot!に参加して、四角形で5問、がい数で5問、全部で10問の四択問題が出題されました。子どもたちは楽しみながら取り組んでいました。
 Kahoot!では、1問ずつ正解不正解、回答に要した時間によってポイントが与えられるので、高得点をねらってあわててボタンを押してしまい不正解になることもありますが、そうしたハプニングの楽しさも含めて、子どもたちのモチベーションを上げながら、既習知識の定着を確認することができます。

 Kahoot!での既習領域の確認が終わったら、ロイロノート・スクールを使ってがい数を使った表とグラフを画面配信して、みんなで見ながら考えていきます。日本の自動車会社の利益と、あるパン屋さんの「売れた種類別パンの個数」が、がい数を使った表とグラフで提示されました。
 大木先生が「なんでわざわざ、がい数で表すの?」と子どもたちに質問すると、子どもたちから「がい数の方が伝わりやすい」「表の数字が見やすくなる」「グラフで目盛りがちょうどになって見やすい」という声が返ってきました。

 ここで、みんなでパン屋さんの「売れた種類別パンの個数」のデータをがい数で表した表とグラフを見ていきます。
 売上上位3つのカレーパン(24129個)、メロンパン(18492個)、クリームパン(15100個)は、千の位で四捨五入すると全部同じ約20000個になってしまっています。売上下位3つの食パン(13989個)、フランスパン(8291個)、あんぱん(5431個)も、千の位で四捨五入すると全部同じ約10000個になってしまっています。
 グラフで上位3つのパンと下位3つのパンの長さが全部同じになってしまっているのを見て、子どもたちは「そりゃ、あかんわ」「バッサリやんのはやばい」と言います。大木先生は「それじゃあ、どうやってがい数を作ればいいと思う?」と子どもたちに問いかけ、「先生の伝わりにくいグラフをがい数を用いてわかりやすくしてほしい」と言います。
 また、グラフをわかりやすくするにあたって、「このお店の売りはカレーパンなので、カレーパンが一番だ!ということを伝えるために、自分だったらどうするのか、どんなグラフを書けるのかを考えてほしい」と大木先生は言います。

 がい数作りがうまくいっていないグラフをあえて見せて、子どもたちからのツッコミを誘い、さらに「カレーパンが一番だ!」ということを伝えてほしいという課題設定があることで、子どもたちのモチベーションが上がると感じました。課題が出てすぐに、子どもたちは「この数字を直そう」と考え始めていたように思います。

 一人ひとりがグラフ作成に取り組み始める前に、大木先生はがい数にする良さとがい数の作り方をロイロノート・スクールのカードを見せながら、解説していきました。
 がい数の作り方として「~の位までのがい数」「~の位を四捨五入」「上から〇けたのがい数」「切り捨てて、上から〇けたのがい数」「切り上げて、上から〇けたのがい数」というふうに例を挙げて、どこで位を区切るのか、どんながい数を作るのかを考えるように大木先生は言いました。

 大木先生は、パン屋さんの「売れた種類別パンの個数」のデータを子どもたちのiPadに送ります。子どもたちはNumbersでデータを開き、実数の表を見ながら自分でがい数を作っていきます。
 Numbersで先生が配ったスプレッドシートでは、子どもたちががい数を表に入力すると、自動的に横にグラフが表示されるようにあらかじめ設定されていました。
 また、伝えたいことが伝わるグラフを作るためには、グラフの目盛りなども工夫するべきポイントになるので、Numbersで目盛りの設定を変更できることも大木先生は紹介していました。
 グラフが自動で表示されるのも、目盛りの設定方法を伝えるのも、グラフを作成する作業に時間をかけるのではなく、今回の目標である「伝えたいことを伝えるためにがい数を使う」ための試行錯誤に時間をかけられるようにされている工夫だと思います。

 一人ひとりが自分のペースでがい数を考え、グラフを作っていきます。完成したグラフを見て、がい数を考え直したり、グラフの設定を変更したり、何度もグラフを作り直して試行錯誤ができるのが、iPadを活用してこの活動を行う良さだと思います。
 iPadのスプリットビューの機能を使って、大木先生が授業の最初で解説してくれたがい数の作り方を紹介したカードを半分の画面で表示して読みながら、もう半分の画面でがい数を作っている子がいました。先生が用意した解説カードを何度も見ることができます。

 グラフを書き終わった子は、ロイロノート・スクールで「どう考えてがい数を作ったのか、どう考えてグラフを作ったのか」を説明するカードを書いていきます。このときにも、iPadのスプリットビュー機能を使って、画面の半分で自分が作ったがい数やグラフを見ながら、もう半分の画面で説明を書いている子がいました。

 一人ひとりがグラフを完成させたら、グループ活動に移って、一人1分ずつ自分の作ったがい数とグラフをiPadの画面を見せながらグループ内で発表していきます。それぞれが、自分がグラフを作るときにした工夫をプレゼンテーションしていきます。最後に、各グループで代表を選んで、ロイロノート・スクールで提出してもらいました。

 各グループの代表が作ったグラフをプロジェクタで映して、クラス全体で共有していきます。「カレーパンが一番だ!」ということを伝えるために、「グラフを縦に伸ばして、一番高いのが、より高く見えるようにした」「切り上げることで、カレーパンだけが30000円になる。」など、さまざまな工夫をしたことがプレゼンテーションされていきます。

 各グループの代表のプレゼンテーションが終わったら、提出された「どう考えてがい数を作ったのか、どう考えてグラフを作ったのか」を説明したカードをみんなで見ていきました。
 みんなが同じがい数を作るのではなく、さまざまながい数が出されていました。大木先生が「みんないろいろながい数を作っていますね。今日のがい数を作るときのポイントは千の位です。百の位、十の位まで残すとどうなりますか?」と訊くと、「がい数の良さがなくなる!」と子どもたちが答えていました。

 大木先生は、「みんなは情報を作る側だけじゃなくて、読み取る側にもなります。がい数にすると印象が変わるでしょう?読むときに“本当はどうなの?”と実数にあたることも大事です」と言って授業を締めくくりました。

 最後に、ロイロノート・スクールでノートを撮影し、書いた「ふり返りシート」と合わせて提出しました。
 「ふり返りシート」には、学んだこと、自分自身のふり返りを書く欄があり、子どもたちはふり返りを書いていきます。
 子どもたちが書く欄の隣に、先生からのコメント欄があるのですが、そこには「書き直そう」「もう少しくわしく書こう」「理由をしっかり書こう」「よいふり返りです」「すばらしい!」の5つのコメントがあらかじめカードに書いてあって、その横にチェックボックスが書かれていました。よく書く定形のコメントは先生が毎回書かなくても、チェックだけして、その下にある空欄により詳しくコメントができるようになっていました。
 これは少しの工夫ですが、定形のコメント書きから脱して、より深いコメントを書く時間を作り出せる工夫だと思いました。

 No.2に続きます。
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(為田)