教育ICTリサーチ ブログ

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葉山町立長柄小学校 授業レポート(2022年11月10日)

 2022年11月10日に葉山町立長柄小学校を訪問し、5時間目と6時間目を使って6年生のプログラミングの授業をさせていただきました。今回は、アイロボットのプログラミングロボットRootを教材として使いました。
 「今日はロボットをプログラミングしてみる授業をします。身近なロボットで何か知っているものはありますか?」と子どもたちに訊くと、「ロボット掃除機!」という声がすぐに挙がりました。「ロボット掃除機が壁にぶつかったときにどんなふうに動くのかは、プログラミングされているんだよ」という話をして、「自分たちでRootをプログラミングしてみましょう」と伝えました。

 会場となった理科室に、子どもたちは自分のChromebookを持ってきていました。最初に全員でRootをプログラミングする「iRobot Coding」にアクセスして、プログラミングのブロックを使って画面のシミュレータでRootを動かしてもらう練習をしました。
 いろいろと細かい操作の説明をするより前に、「動かせた!」とおもしろがってもらうことを大事にしたいと思っています。

 画面上のシミュレータでRootを動かすことができたら、次は、2人に1台ずつ渡したRootに電源を入れてもらいます。2人のうちのどちらか1人のChromebookとRootをBluetoothで接続します。
 シミュレータのときと同じようにプログラムを動かすと、今度は目の前のRootが動きます。実際に目の前でロボットが自分たちのプログラムのとおりに動くことで、「もっといろいろと動かしてみたい!」と子どもたちのモチベーションが上がるように思います。

 ここで、6つのミッションが書かれているプリントを配布しました。「No.1とNo.2のミッションは練習なので、最初にやってください。No.3からNo.6のミッションは、どれからやってもいいし、全部やらなくてもいいです。2人で相談して決めてくださいね」と伝えて、どんどん自分たちでやってもらいます。
 「Rootは、机から落っことしたりしなければ壊れたりしません。プログラムを作って動かしてみて、思い通りいかなかったら、どんどんやり直してください」と伝え、ミッションに取り組んでもらう時間にしました。

 子どもたちはどんどんプログラミングを進めていきます。最初からいろいろと細かい設定を教えることはしないで、プログラミングに子どもたちが少し慣れてきて、ミッションに時間をかけて取り組んで「ちょっと手が止まり始めたかな?」と思うくらいのタイミングで、プログラミングのブロックをクリックすると、設定を変更できることを伝えます。

 どのミッションに取り組むかによって、子どもたちが作るプログラムは全然違うものになります。Rootを動かすことに集中するペアも、音が出るブロックをつなげて曲を演奏することに集中するペアも、LEDをつけることに集中するペアもいました。それぞれに自分たちのやりたいことをやれることが重要です。

 5時間目が終わるくらいには、子どもたちは一通りのブロックを使えるようになっていました。いろいろなブロックを使ってみるペアも増えてきます。「先生、このペンのブロックなに?」と質問されたので、Rootにペンを挿してマットの上を動かせば、線を引くことができることを伝えました。

 6時間目は、自分のやりたいことをどんどんやってみる時間にしました。他のペアが作ったプログラムもどんどん見て、「いいな」と思ったら真似してみてください、とも伝えました。

 「☆を描きたい」と思った子たちが、実現したい動きをマットに描いて、どんな角度で曲がればいいのかをマットの上で計算していました。

 こうして図形の角度を計算したりするのは、算数の内容と結びつく部分だと思います。他にも図形を描いている子たちはたくさんいたので、「これ、もう算数だね!」と言ったら、「わたし、算数苦手なんです…」と答える子もいましたが、こういうところから算数に興味をもってくれる子もいればいいと思います。

 音楽でRootに「アンパンマンマーチ」を演奏できるようにしていたペアもいました。曲を演奏できるようにした後は、その音楽に合わせてマットいっぱいに大きな円を描くプログラムを組んでいました。
 しばらくして見せてもらうと、Rootがアンパンマンマーチを演奏しながら大きな円を描けるようになっていました。さらに、Rootが動いている間に、ペンで目や鼻を描いて、Rootと一緒にアンパンマンの顔を描くパフォーマンスができました。こうした発想もすごくおもしろいと思います。

 「くりかえし」ブロックを使って三角形を描けるようになった子たちは、1回ずつRootを持ち上げて、場所を変えて2つの三角形を組み合わせていました(子どもたちは、この形を「魔法陣」と呼んでいました)。
 そこで、「ペンを上げる」ブロックを教えて、「1回のプログラムで、2つの三角形を向きを変えて描くようにしたら、いちいち持ち上げなくてもいけるんじゃない?」とヒントを伝えると、熱心にチャレンジをして、見事実現させていました。しばらくして見に行くと、1つのプログラムでまとめて何個も三角形を組み合わせて描けるようになっていました。

 最後の10分間で、他のペアが作ったプログラムを見に行く時間をとりました。2人ペアでRootのプログラムを作ったので、1人が残ってRootの動きを見せて、1人が他のペアが作ったプログラミングを見る時間にしました。
 たくさんのプログラムを見ることで、「あ、これ、作ってみたい」とか「こんなふうにできるんだ!」というふうに思ってほしいと思います。クラスメイトが作ったプログラムを見ることで、新しいアイデアを思いついたり、協働する楽しさを感じたりできるのではないかと思います。

 この授業を通じて、「やってみたいと思ったことをプログラミングでできたときが楽しい!」と子どもたちに感じてもらえれば、と思いました。

(為田)