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愛媛大学附属高等学校 授業レポート No.1(2023年1月26日)

 2023年1月26日に愛媛大学附属高等学校を訪問し、髙市佳代子 先生が担当する2年1組の数学Ⅱの授業を参観させていただきました。今回の授業は「定積分と面積」のまとめの部分で、髙市先生は最初に黒板を使って復習をしてから、問題集から問題を出していきました。

 「483番を、いけるところまでいってみましょう。2分取ります。どうぞ」と言うと、どんどんノートに問題を解いていきます。
 2分経つと、髙市先生は「まだ途中の人がほとんどだと思いますが、解いていきましょう。追いつかれないように解いていってくださいね」と言い、プロジェクタで問題を投映して見せながら解説していきます。
 「最初に何を描きますか?」と生徒たちに問いかけ、「下に凸な放物線ですね」と言いながら解説のスライドを進めていきます。スライドにグラフも数式も書かれているので、スピーディーに解説を進めることができます。

 生徒たちは問題に取り組むときに、ノートや教科書に挟んだメモなども各自で参照していました。こうして自分で書いたメモをいつでも参照できるようにしておく環境づくりは、ノートやメモがアナログであるからこそ便利なところかもしれません。
 こうした環境をさらに進めて、生徒たちがメモやノートをスマートフォンタブレットで撮影しておけば、紙では持ち歩けないくらいの量のノートやメモにもすぐにアクセスできるようになります。例えば前年度の授業でとったノートや作ったメモも持ち運ぶことができます。
 デジタルでデータを保存して、アプリなどでタグ付けして管理しおけば、検索も簡単にできるようになります。「全部のノートとメモ」を持ち運べて、いつでも検索して見ることができる良さがあります。

 「もう1問、484番」と髙市先生が言って、プロジェクタで次の問題を投映します。プロジェクタで問題を表示すれば、先生が黒板に問題を書くよりももちろん速いですし、プリントを配布する時間も必要ありません。

 この問題では、「面積をどう求めるか?」について周りの人と話し合う時間もありました。問題を問いていく方針について、問題になっている図のなかで2つの線が交差してできている面積をどこから求めるか、と髙市先生が質問すると、しばらく沈黙があった後で、一人の生徒が挙手して方針を答えました。その生徒の回答を聞いた後、多くの生徒がうなずいて同意を表していました。
 その様子を見て髙市先生は、「声を出すのがいやだったら、うなずくのでもいいね」と言っていましたが、こういう場面でも、授業支援ツールなどを使って「どこから面積を求めたらいいと思うか」「どうしてそう考えたのか」ということを、図にちょっと補助線を引いてもらったり、ノートに方針を書いてもらったりして、それを撮影して教室内で共有できたらいいかもしれません。
 どのタイミングでノートを共有するかにもよりますが、問題に取り組み始めたタイミングで共有すれば、「どう考えるかのとっかかりもわからない」という子にとっては、クラスメイトの回答の書き出しの部分がヒントになることもあるかと思います。クラスメイトが解き始めているところを見られるようにすることで、先生が書いた解説(=正解)とは違う「はしご掛け」になるのではないかと思います。共有したノートをまったく見ないで自分で解ける生徒は、ノートを見なければよいので、自分の学び方を選ぶことができるように思います。
 また、そうして解き方の方向性を教室内で共有することができれば、先生としても理解度を確認することもできると思います。

 授業を通じて髙市先生は「ざっくり図を描いて、計算に時間を使っていくようにしましょう」と言っていました。この「ざっくり図を描く」というところも、みんなで共有すると良さそうです。
 こうしたやり方は、プリントやノートに解いていると共有することは難しいので、デジタルとうまく組み合わせることで、生徒たちの理解を助けることができるのではないかと思いました。

 No.2に続きます。
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(為田)