教育ICTリサーチ ブログ

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富士見市立針ケ谷小学校 授業レポート(2022年7月15日)

 2022年7月15日に富士見市立針ケ谷小学校を訪問し、4年1組で3時間目と4時間目を使ってプログラミングの授業をさせていただきました。今回は、アイロボットのプログラミングロボットRootを教材として使いました。4年1組ではアイロボットのロボット掃除機「ルンバ」のことを知っている子が多く、「ルンバがどんなふうに動くかは、プログラミングされています。それと同じように、どんなふうに動くかをRootを使ってプログラミングしてみましょう」と伝えて授業を始めました。

 今回の授業では2人ずつペアになって、1台のRootと1台のWindows端末を使ってプログラミングをしてもらいました。
 いろいろとプログラミングのやり方を説明するより前に、Rootの電源を入れるところからスタートしました。Rootの電源を入れるときに音が鳴ってRootの目が光るのですが、その時点で教室からは「かわいい!」という反応が出ていました。最初に「かわいい!」と言ってもらえることは、子どもたちがプログラミングに取り組む最初の障壁を下げてくれていると思っています。

 次に、コンピュータにRootをプログラミングするためのWebサイトに接続してもらいます。オクリンクでURLを送ってあったのでみんな簡単にアクセスすることができました。
 新しいプロジェクトの画面を表示してもらって、「Rootとコンピュータをつなげるよ」と言うと、子どもたちからは「インターネット?」という声が出ていました。「違うんだなー」と答えると、その後、「じゃあ、WiFi?」「違う。ちょっと難しいけど、Bluetoothだよ」「ブルートゥースかー…」というやりとりになりました。子どもたちが知っているデジタル関連の言葉が増えてきたな、と感じました。

 Rootとコンピュータが接続できたら、最初に僕の画面を提示しながらブロックを組み合わせて実際にRootを動かす様子を見せてみます。「お、動いた!すごい!」という反応が返ってきたときが、いちばん子どもたちがやりたいと思っているときなので、そのタイミングで6つのミッションが書かれているワークシートを配布します。
 「ミッション1とミッション2は必ず最初にやってみて、ミッション3からミッション6は、2人で相談して好きなものをやってみていいですよ」と伝えると、みんなどんどんミッションに取り組んでいきます。
 6つのミッションのなかには、「くりかえし」ブロックを使ってRootを周回させたり、「LEDをつける」ブロックでRootを光らせたり、Rootから音を出したり、さまざまなことにチャレンジできるようにしています。子どもたちが、自分の興味に合わせて、好きなところから簡単にプログラミングに親しめるところがRootのいいところだと思っています。

 すべてのブロックの機能を教えなくても、子どもたちは自分たちで使ってみてどういう動きになるのかを考えていきます。僕が意図していたのは、「どんどんやってみて、間違ったら直せばいいよ」という雰囲気を教室に作ることでした。
 3時間目が終わる頃には、みんなそれぞれにいろいろなプログラムを組んでいます。この日の授業は公開されていたので、他の学年の先生方も見に来てくださっていたので、子どもたちに、「おもしろいプログラムができたら、僕を呼んで、見せて自慢してね。僕の他にも、校長先生も、他の先生もたくさんいるから、どんどん見せてね!」と言っていたのですが、教室のあちこちで「見て!」「これ、すごい!」という声が聞こえてきました。

 4時間目には、「人の役に立つロボット掃除機を考えよう」というワークシートを配布して、自分たちなりの掃除機を考えてもらいました。壁にぶつかったときにRootが戻る、というようなロボット掃除機らしい動きだけでなく、Rootが曲を演奏しながら掃除をしたり、うろうろと迷いながら掃除をしたり、マーカーで線を引きながら掃除をしたり(!)、いろいろなアイデアが子どもたちから出てきました。
 自分たちのアイデアを実現したいと思うからこそ、プログラムをいろいろと試行錯誤をしようという気持ちが出てくると思いますし、いろいろな工夫が生まれてくると思います。

 授業をやっていて、ホワイトボードマットに描かれた線をRootを使って消そうとしている子たちがいたのですが、そこで子どもたちが考えたアイデアは多様で、こうした場面がたくさん出てくる授業になったことをとてもうれしく思いました。
 例えば、あるペアはティッシュペーパーをRootの下に敷いて消そうとしていました。ティッシュをRootにくっつけてみて、どれくらい線が消せるかを自分たちでどんどん試していきます。

 別のペアは、Rootがタオルを引っ張って線を消すように考えていました。Rootを試しに動かしてみると重さが足りなくて線が上手に消せないので、タオルの上にいろいろなものを置いて重みを使って消そうとしていました。重くしすぎると今度は動かなくなってしまいます。

 「人の役に立つロボット掃除機を考えよう」というテーマから、子どもたちはいろいろなアプローチをしていきます。あるペアは、ホワイトボードのマットの上に、ゴミ箱の絵を描いて、ダンボールのゴミをRootがゴミ箱の絵の上に持っていくプログラムを作っていました。これもひとつの表現だと思います。

 子どもたちから、こうしたさまざまな工夫が出てくることが大事だと思っています。クラスメイトも巻き込んで、「こうやったらいいんじゃない?」とどんどんアイデアが広がっていけば、協働する良さとか楽しさも感じられるのではないかと思います。
 この授業を通じて、「やってみたいと思ったことをプログラミングでできたときが楽しい!」と子どもたちに感じてもらえれば、Rootを使ったプログラミングだけでなく、その他のプログラミングツールにも取り組んでいく最初のステップになるのではないかと思いました。

(為田)