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戸田市立芦原小学校 授業レポート No.2(2024年2月21日)

 2024年2月21日に戸田市立芦原小学校を訪問し、松本明子 先生が担当する5年3組の算数「円と正多角形」の授業を参観させていただきました。松本先生と子どもたちは、自由進度学習に取り組んでいました。松本先生は、単元を通して子どもたちに学習してほしいことを提示し、子どもたちは自分で単元全体の計画を立てて学習を進めていきます。
 自由進度学習のツールとして、松本先生が子どもたちに配布したカレンダーを見せてもらいました。カレンダーには単元の最後に行うテストの日付が書かれています。そして、そのテストの日までに学習してほしいこととして、「教科書まとめ」「教科書問題」「実技」「プレテスト」「計算ドリル」がリストとして提示されていました。
 僕にこのカレンダーを見せてくれた子は、上のところに「1日2つ!できなかったらくりこしor家で!」と書き込んでいました。こうして自分でどのように学習を進めていくのかを決められるといいなと思いました。

 授業の最初に松本先生が子どもたちに、「この単元もだいぶ進んできているので、計画どおりか確認して」と言うと、みんなカレンダーを見て自分の学びの状況を確認して、今日は何をしようか考えて取り組み始めます。
 この後35分間、子どもたちは自分のすべきことを自分のやり方で学習していきました。早く終わっている子もいれば、じっくりと自分のペースで取り組んでいる子もいます。早く終わったのでクラスメイトに教えている子もいるし、より多くの問題に取り組んでいる子もいました。こうしたさまざまな学習の仕方が、ひとつの教室の中で見られるのが自由進度学習の特徴だと思います。

 松本先生から学習するべき項目として挙げられている「教科書まとめ」や「実技」の項目については、「MISSION」としてロイロノート・スクールやプリントで子どもたちに配布されていました。

 MISSIONへの取り組みをロイロノート・スクールでする子は、教科書の内容をまとめたり、問題を問いたりしていきます。それぞれの問題に指定の提出箱があるので、できたらそこに提出していきます。

 プリントで取り組むMISSIONには、教室のなかに「提出箱」のトレイと「返却箱」のトレイを2つ用意してありました。できたプリントは提出箱のトレイにどんどん出されていきます。松本先生がときどき提出箱のトレイにたまったプリントを集めて、評価・コメントをして返却箱のトレイに戻します。
 返却箱のトレイにプリントが戻ってきたのを知って、子どもたちがみんな取りに来て、松本先生が書いてくれた評価とコメントを見て「やった!」とガッツポーズをしている子もいました。

 ロイロノート・スクールの提出箱も、教室の提出箱のトレイも、評価・コメントを待っている間に子どもたちは待ちぼうけになるのではなく、次のMISSIONに取り組んでいました。単元単位で自由進度学習を行うことで、たくさんの課題を設定することができ、子どもたちが待たなければ学べない時間を極力減らせていると感じました。こうした点も、自由進度学習のいいところだと思います。

 ロイロノート・スクールの提出箱に提出されたものを、松本先生は手元のChromebookで確認し、チェックをしていきます。やり直し、再提出の子には△や?を書いて戻します。ただ提出されたカードを見て返すだけでなく、話しかけたり、問いかけをしたりしていきます。

 各自が自分で学んでいくだけでなく、どれくらい進んでいるのかをクラス全体で共有するための進捗表がホワイトボードに用意されていました。終わったところには、自分でスタンプを押していきます。こうして進捗状況を一覧しやすいのは、紙の方だと思います。

 授業の最後に、ロイロノート・スクールのふりかえりカードに取り組みます。「この時間の振り返りと次の時間に取り組みたいことをくわしく書きましょう」と書いてあるので、そこにふりかえりを書いていきます。次の時間に取り組みたいことを書けるように、この単元で松本先生から出されている、すべてのMISSIONが書いてありました。自由進度学習での計画を子どもたちに委ねるときには、こうした細かい工夫が重要だなと感じました。

 子どもたちに自分たちの学びの計画と実行を委ねる自由進度学習を、こうして子どもたちと一緒に作っていく取り組みが進んでいるのはとてもいいことだと思います。学年や教科、単元によってそれぞれ必要な工夫も違うと思いますので、こうしたノウハウが蓄積されていくのはとてもいいことだと思います。

 No.3に続きます。
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(為田)