教育ICTリサーチ ブログ

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十文字中学・高等学校 授業レポート No.2(2024年6月17日)

 2024年6月17日に十文字中学・高等学校を訪問し、50人くらいが着席できる大きな多目的教室で実施されていた、星川潤 先生と政木栄二 先生が担当する中学2年生の数学の授業を参観させていただきました。中学2年生は昨年度からJ-PALM(ジェイパル)で学んでいるので、自由進度で学習を自分で進めていくことにも慣れているように感じました。
 この日の授業では、生徒たちは「チェックテスト&フィードバック」に取り組んでいました*1。授業の最初に、政木先生が生徒たち全員と一緒にチェックテストのふりかえりとして、間違えた人が多かった問題について解説をしていきます。この後で生徒たちは、週末に取り組んだ解き直しノートを見返し、チェックテストの類題が出題されるRetryテストを受けることになります。

 テストの解説を終えると、政木先生は「次の時間、J-PALMで何をするか決めておきましょう。学習シートを出して、今からの計画を立てましょう」と言います。
 生徒たちはJ-PALM学習シートの裏面「学習の記録」を書いていきます。学習シートの目立ついちばん上のところに、「※ 授業の最初に目標設定、授業の最後に「達成度→振り返り→家庭学習計画」を記録しよう」と書かれています。生徒たちは、今回の振り返りと次回の授業での目標を書いていきます。

 計画を立て終わった生徒たちからどんどん学習を始めていきます。自分ひとりでがんばる生徒もいれば、周りの人たちとグループで勉強している生徒もいます。どうやって勉強するかを自分たちで選ぶことができています。

 わからないところが出てきたときには、先生に質問する生徒もいますし、友達に質問する生徒もいます。「誰に質問するか」も自分たちで決めることができます。
 人に質問するのではなく、YouTubeで解説動画を聴いている生徒もいました。動画を見ている生徒のなかには、字幕表示させて早送りして自分に必要なところだけを見ている生徒もいました。J-PALMタイムで活用できるように十文字中学とLibryとでポータル画面を共同開発していて、そこからそれぞれの単元や小単元からYouTubeリンクなど、自分で学ぶための教材をまとめてあるそうです。

 こうして、いろいろな学び方ができて、自分にあった学び方を選べるようになることがとても大切だと思います。

 この日、学校を案内してくださった星川潤 先生は、J-PALMの授業を見た外部からの参観者が「自習のようだ。と言われることが多い」とおっしゃっていました。
 生徒たちが自分で計画を立て、自分のペースで学ぶ自由が与えられている、そういう環境を作ることは、ただ課題を出しているのとは違います。課題を出すのではなくて、自分で勉強できる環境を作ることの方が大切であり、それは自習よりももっと大掛かりなものだと思います。
 特に、今回参観させていただいた数学では単元まるごとで自由進度になっているので、その間の学習ログやリフレクションシートを見て、先生が生徒たちの学習の進捗状況を見とって、サポートしていくことが非常に大事になります。

 星川先生が2年生の生徒たちが解き直しノートを作っている様子を見て、「解き直しノートが大事なんです。自分で解説を読めるようにならないと、誰かがいないと勉強できない」とおっしゃっていたのですが、本当にそのとおりだと思います。「誰かがいないと勉強できない」ところから、「誰もいなくても自分で勉強できる、学べる」という生徒を増やしていくために、J-PALMというシステムのなかで、生徒たちにその方法を身につけてもらおうということだと思いました。
 結果的に、こうして計画を立てていくことで、計画する力や自己調整力も高まっていくのではないかと感じました。

(為田)

*1:J-PALMの学習サイクルについては、レポート No.1を参照してください。