2019年9月16日から9月30日にかけて、「先生方が新しい取り組みを知る情報源は何ですか?」という先生向けのアンケートを行いました。たくさんの先生方や関係者の皆さまにSNSでシェアなどしていただきまして、合計で100件の回答をいただくことができました。お忙しい中、ご協力をいただきまして本当にありがとうございました。
No.1に引き続き、Q2「教育の情報化、ICTやEdTech活用推進については、どのように情報を広げていけばいいと思いますか?」にいただいた回答を紹介していきたいと思います。フリーアンサーにも関わらず、100人中81人に回答をいただきました。本当にありがとうございます。いくつかテーマごとに分けて見ていきたいと思います。
研修・セミナー
教育の情報化、ICTやEdTech活用推進について、「研修・セミナーを活用すべきだ」との回答をまとめました。【1.学校内での研修】【2.教育委員会での研修】【3.外部での研修】と分けています。ICTスキルを使えるようになる、ということだけではなく、授業研究や「そもそも学びとは?」という部分も含めた研修をしてほしい、というコメントなどは、セミナー講師をさせていただいたり、セミナーの企画をしたりするときに参考になります。
【1.学校内での研修】
- 学校としての研修
- 外部で研修を受けた教員が校内で伝達する。
- 外部講師を校内に招聘して研修する。
- セミナーの開催
- セミナーも遠隔参加できると嬉しいです。特にICT関係をやりたい先生方は、研究に貪欲な方が多いですが、時間と場所の制限が多いので…
- 一番効果的なのは、直接伝えることだと思います。時間も労力もかかりますが…
- 各学校現場のOJT
- 既に推進している学校の公開授業や研究会で、実際に見たり、生徒の意見を聞いたりすることが重要だと思います。
- プログラミングなど、「教科書に出てくる。全員が考えない自分が困る」という危機感が必要。そのこと自体を知るための校内研修が広がる最も良い方法かと感じてます。
- そういうものに敏感な人は敏感でアンテナを張り巡らせて情報をキャッチするが,鈍感な人(あえて気づかないようにする人)には届かず,校内研修などやらないと届かない.各学校からインフルエンサーみたいな人を集めてリーダーズキャンプなどを定期的に開催するのは面白い.
- 私立小の場合、ボトムアップ。とにかく校内研修に落とし込む。
そしてポイントは、ICTだけでなく、授業研究やそもそも学びとは?を考えたり、世界の教育を知ったり、また校務システムなどのシステム改善、行事・働き方の見直しなどを同時多発的に行うことが重要と考える。- 夏休み中に研修枠を確保し、全職員が一定レベルICT機器を使えるようにする。
- 校内研修などで基礎知識などを知ってもらう
- 実践の公開とその研究発表
- こまめな研修
- 学校現場に広げたいのならば、現場に直接伝えるのが良いと思う。ICTの活用に積極的でない、40代後半から上の教師には、「情報化」という言葉は届きにくい。
【2.教育委員会での研修】
- 日々の授業の積み重ねと、研究発表会。都教委などの研究指定を受けた研究
【3.外部での研修】
- できるだけ多くの先生を外部の研究会等に参加させて、外の世界の動きを感じてもらうのがいいと思います。
- 官製以外の研修を受けた教師による伝達
- 広報誌や各種団体の研修会
- 教職員と教育関連ビジネスの関係者が一堂に会して開催されるセミナーや研修会が、最も手軽かつ確実にネットワークを広げる手法だと思います。実際に会って顔を見ながら名刺を交換して、という、一見アナログ、前時代的な手段で始まる情報交換が、意外に効率的であることを経験則として学びました。
- 先生方のネットワークが三大都市圏に限られることがないように、さらに私立の先生方などの特別なセミナーとならないように、同じイベントを地方開催する工夫が必要だと思います。
国や教育委員会からの働きかけ
教育の情報化、ICTやEdTech活用推進について、「国や教育委員会からの働きかけが必要だ」との回答をまとめました。【1.文部科学省など省庁】からの働きかけと、【2.教育委員会】からの働きかけに分けてみましたが、連携して行われるべきものも多いかと思います。
すでに実現されている施策もあるように思いますが、このあたりは教育委員会や自治体によって対応が違う部分もあるのだと思います。
【1.文部科学省など省庁】
- 国の主導が理想的だと思います。
それが無理でも、せめて校長のリーダーシップが無ければ、学校全体にはなかなか広がりづらい現状があるように思います。- 文科省等の省庁が、上記のような教育産業と融合して展示会やセミナーの開催を全国的に実施することが望ましい。
- 上位官庁からの通達文。
- 文科省や経産省が発信するスタンダードとなる情報がもっと分かりやすく日頃から現場に届くことが理想です。自ら意識をしていない先生はその動きをほぼキャッチできていません。
- 学校や自治体レベルで取り組むようにする。
- 都道府県、市町村教育委員会へICTやEdTechの認知をしてもらうと良いと思います。
- 教育委員会に向けた情報提供や講師派遣
【2.教育委員会】
先生同士のネットワーク
教育の情報化、ICTやEdTech活用推進について、「先生同士のネットワークが有効だ」との回答をまとめました。【1.学校内】【2.直接、対面、Face to Face】【3.オンライン】に分けてみました。
今回は、SNSを通じてオンラインでアンケートを取ったので、「SNSの活用を!」という回答が多かったですが、オンラインから始めて、最終的に対面や学校内でのネットワークに情報が流れていくように、この3つを組み合わせて、さまざまな情報が交換されるようになればいいな、と思います。
【1.学校内】
- たくさんの人に広げるためのチャンネルを持ってる人ばかりではないので、普通の人はまずは校内、同じ学年、隣のクラスなど、出来る範囲でよさを広めるのが現実的かなと思います。
- 校内の草の根ネットワークですかね。全体でアナウンスするよりも、雑談の中での話題が広がりやすい気がします。
- 校内に情報に詳しいキーパーソンになる方がいると良い(実際に前任校でも、この方を中心に取組を進められた)
【2.直接、対面、Face to Face】
- 隣の席の先生に広める。
隣の学校の先生に広める。
その人たちに他の人を紹介してもらって新しい仲間を増やす。- どこかからの情報を,口を開けて待っておくのではなく,教員自らが求めていく,あるいは自分自身がまわりを巻き込んで勉強会等を開くなどの姿勢が必要であると考えます。昔と違って,SNSも発達し,似たような考えや悩みを持っている人を集めることも難しくなくなってきました。著名な方の実践例を聴くのも刺激を受けるという意味では良いと思いますが,現場レベルの差を含んで話ができるほうが,より参加しやすいのでは無いでしょうか。
- 人のつながりを広めるネットワーク
- 実践している先生、学校の事例を出来るだけ多く生で見る機会や、情報交換の場の設定。何より教員がその様な場に行ける環境、行こうと思えるマインドの形成。それが何より重要だと最近は考えています。
【3.オンライン】
情報としてほしいもの
記入していただいた回答のなかには、ICTやEdTechの活用についての情報で、知りたいものについても多く書かれていましたので、まとめておきます。発信する情報についてのヒントになるように思いました。
【授業実践】
- 多様な考え方を知るだけでなく、その判断基準について知りたい。
- 教科等と関連させた実践例をあげていくといいと思います。
- 授業実践とともに
社会と繋がった探究活動- 取組事例の発信でしょうか。これといったものがない時には、多くの事例があると良いと思う。
- ICTやEdTechを活用するのを目的とせず、授業デザインを変えることをコンセプトにすると進むのでは?私も利用することに主を置いていた時、学校で進みませんでした。授業改善の一つとして考えれば進むような気がします
- あまりにも普通の公立校に入り、未完成な状態で発信する。
- 児童生徒(保護者も?)の意見も含まれるSNSでの情報発信
- 教育の本質的課題や、具体的に何をどうしたいかが先に立ち、それにICTがどう応えるのか、というアプローチ
【ICT活用のTips】
- 簡単なショートカットなど、楽になる実感もの。スマホで得られ、作れるもの。
情報を広く伝える方法について
ICTやEdTechの活用についての情報をどのようなフォーマットで発信するのがいいかについてコメントも多くいただきました。
- 活動をどんどんアウトプットしていく!
- わかりやすい動画にして配信する
- 文字情報の少ない事例集とか…
- 情報を発信しながら集約することが大切だと思う。
- 情報まとめサイトやメルマガなど、網羅的で迅速なもの
- 新聞
- 興味の薄い層をターゲットにして、真似しやすい具体例を示す。専門用語を使わない。
- 先進的な実践を行なっている先生方の冊子等があれば‥
- 一般メディアに取り上げてもらうこと
また、どのように情報を広げていけばいいのかについてのコメントもいただきました。
- ニュースと、保護者経由でしょうか。首長に発信力があれば、期待できるところ。
- ICTやEdTechの色が薄い場やメディアを通じて(口コミ、紙媒体、長く続いている既存の学会や研修会)
- 少しずつされど着実に広めていくことが大切です。学校組織の専門性は教員の異動と共に流動的に変化しますので、発信し続けることが重要だと思います。
- 多くの教員はネットを見ない。というか、勤務中のネット閲覧を過剰に制限しているから、見られない。まず、ネットを見る教員を増やす必要がある。
- 思ったよりもアナログの情報が求められるのだと実感しています。教育情報誌や書籍が効果あるんだなと思っています。
- SNSやwebサイトの活用
- 若い教員は、圧倒的に検索してwebサイト等から、情報を探しているケースが多い。新聞や書籍等のペーパーからの情報収集は減っている。
要望
最後に、上記の要素を含みつつも、要望などが入っているコメントをまとめました。
- 教員の多く(自分を含めて)は,これまでの遺産をかたくなに守ってしまう傾向があると思います。だから,様々な情報に触れても,「変えたい!」と思うには相当のインパクトがないと難しいと思っています。「変わる」「変える」ことが「仕事量が増える」ことに直結することになるとおもってしまうからです。だから教育委員会などで資料をわたされても,文言が頭の中をスルーしてしまうのだと思います。「相当のインパクト」を与えるには,子どもといっしょで,「実物を触らせる」ことで「体験する機会」が与えられ「自分の経験と合わせてこんなことができそう!」というイメージを持たせられるかだと思います。教師は教育委員会や管理職から「やりましょう!」と言われれば,多くはやると思います。だからその方々に体験してもらい,その良さを実物を使いながら教師に伝えてほしいと思います。教育委員会や管理職こそ,遺産を引きずらないでほしいと思います。ですから研修や情報の提供をより強固にこうした方々に行ってほしいと思っています。
- まずは職員に一人一台のChromebook
- これからの社会においてテクノロジーは必須のツールとなること、学校だけが社会から取り残されていること、未来の社会を担う子どもたちに必要となる力を学校で育てられているのか振り返ること、世界の教育の潮流を知ること、などが教員の研修に足りないのではと感じます。
社会や教育の変化をまず知り、その中でテクノロジーの活用について考える学びが教員に必要だととても感じます。ただ、東京でこれだけイベントや講習会が開催されていても、参加する学校教員はまだまだ少ないのが現状です。どうすれば危機感や意識が高まるのか、非常に悩ましいですね。また、自分で努力して情報を得て新たな実践にチャレンジしている教員へのインセンティブがなさすぎるのを痛感します。どうすればこの風土や文化が変わるのでしょう…?- 保護者を巻き込んで、学校を外から変える。学校の中から変えていくには今のままでは時間がかかると思います。
- 各校に民間職員もしくは専科の教員を加配し、授業支援や職場情報化を図り、格差を是正していく。
Wi-Fi等インフラの整備- 文部科学大臣を教育の専門家にさせる
- ICTに関心があっても不安が先にたちなかなか積極的に活用できない。とっかかりは同僚や校内で初心者でも大丈夫という教えがほしい。使い方、使っても大丈夫という理解ができれば、次段階からは自分でwebで情報を得ることができると思う。
- 小学校6年間で使う端末1台所有(無償配布)中学校高校の6年間で使える端末1台所有(無償配布)を行い、端末は教科書、ノートと同じように子ども達の学びのツールとして使えるように公費で購入する。
大学専門学校等で学ぶ生徒は進路先で使う機能などは異なるので、実費にて購入する。
ソフトウェアは日進月歩でどんどんリリースされているが、いかんせん端末がない(高価だったり、子どもがランドセルに入れて持ち歩けない衝撃への弱さ)。- 教師や保護者に世界水準の教育情報を知ってもらうこと、受験一辺倒にならない社会の仕組みが必要だと思います。情報の共有については現状、ネットしかないと思います。
- ICT器機については、教育委員会を中心に、導入された器機に合った使い方をレクチャーすることからだと思います。
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多くのコメントをいただきましてありがとうございます。読みやすくなるようにと思いまして便宜的に章立てをつけましたが、他の読み方の観点もたくさんあるかもしれません。
No.3では、アンケートの最後に設けていたフリーアンサー欄からのコメントを紹介したいと思います。
blog.ict-in-education.jp
(為田)