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仙台市立広瀬中学校 授業レポート No.1(2020年2月21日)

 2020年2月21日に、仙台市立広瀬中学校を訪問し、齋藤純 先生が担当する3年生の社会科の授業を見学させていただきました。

 今回の授業では、中学校でしてきた歴史の学習をふりかえるために、後輩のために「歴史」を大観することができるスライドを作成することを目的として、「江戸時代と明治時代を大観させるために必要な要素は何か」を説明するスライドを2人組になって作成する課題に取り組んでいました。
 齋藤先生は、授業時間の配分とストップウォッチを常にスクリーンに映していて、全体の流れを生徒が把握できるようにしています。「時間通りにやることも大事。ダラダラしない、時間をかければ誰でもできる。」と言って、生徒たちの取り組みの流れを作っていきました。
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 生徒たちは、江戸時代を大観させるペアと明治時代を大観させるペアを組み合わせて4人グループになります。最初にそれぞれが発表を行い、その後でお互いの発表の改善案を考えて発表し合います。一人1台持っているiPadは発表ツールとして使い、ロイロノート・スクールで作成したスライドを発表します。
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 ロイロノート・スクールでは、スライドを作成するためだけでなく、この授業でのルーブリックを共有することにも使われていました。スライドの評価は、ルーブリックと照らし合わせて「思考」と「表現」の2軸が設定されている座標軸に、送ってもらったスライドを入れて評価をしていました。齋藤先生から生徒たちに渡されているルーブリックは以下のようなものでした。

  • 「思考」のgoal
    • S:日本の歴史について各時代の重要人物や出来事、前時代と次時代との比較から読み取れるその次代の特徴、社会や人々の生活の様子などを取り入れたスライド作成をすることで江戸・明治時代を大観できるようにしている。
    • A:日本の歴史について各時代の重要人物や出来事、社会や人々の生活の様子などを取り入れたスライド作成をすることで江戸・明治時代をわかりやすくまとめている。
    • B:日本の歴史について各時代の重要人物や出来事を取り入れたスライド作成をすることで江戸・明治時代をわかりやすくまとめている。
  • 「表現」のgoal
    • S:教科書や資料集のグラフやデータだけでなく、WEB資料などを効果的に組み合わせることで、わかりやすい内容になるよう工夫している。
    • A:教科書や資料集のグラフやデータを効果的に組み合わせることでわかりやすい内容になるよう工夫している。
    • B:既習の学習事項を効果的に組み合わせることで、わかり易い内容になるよう工夫している。

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 生徒たちは、ルーブリックを見ながら、クラゲチャートに相手の発表をより良くするための改善案を5つ考えて書き込んでいきます。発表したスライドをお互いにロイロノート・スクールを使って送り合っているので、スライドを見直しながら改善点を話し合います。こうして作成したスライドを簡単に送り合ったりできるので、何度も資料を見ながら評価し、改善点を考えることができます。
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 齋藤先生は、各グループの様子をどんどん見て回りながら、アドバイスをしたり、質問を投げかけたりしていきます。
 今回の活動は「江戸時代と明治時代を大観させるために必要な要素は何か」を考えることです。齋藤先生は生徒たちに、「“大観させる”のが目標だから、そのためにどうすればいいかを考える」「相手に改善案を伝えるためには、根拠も合わせて伝える」「この人物・絵・出来事を入れたほうがいい、というように必ず“具体”を入れる」と言います。
 「鎖国を入れたほうがいいと思う」と言う生徒に、齋藤先生は「なぜ鎖国を入れたほうがいいの?」と質問します。生徒は、「江戸時代と言えば鎖国でしょ?」と返しますが、さらに齋藤先生は「なんで?」と問い、生徒は「鎖国したから日本独自の発展が…」というふうにその言葉を入れたほうがいいという根拠にたどりつきました。
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 相手に伝える改善案を練るためには、相手に伝えるために教科書を読み込む作業も生まれます。課題を作るときに齋藤先生は、「教科書はいつもはあまり見ないが、こういう枠組みがあると教科書を読まざるを得ない」から、教科書を読まざるを得ない状況を意図して組み込んでいるそうです。
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 授業の最後に、グループ内でそれぞれのペアが考えた改善案を発表してから、ロイロノート・スクールで改善案が書かれたクラゲチャートを送り合って共有しました。次回の授業では、クラゲチャートに書かれた改善案を活用してプレゼンを改善していきます。

 iPadを活用することで、スライドを一緒に見たり、改善案を送り合ったりなど、データの共有を短時間で行うことができます。だからといって、ずっとiPadの画面を見ているわけではなく、ペア同士で話し合ったり、グループ内で発表をし合ったり、教科書や資料を読み込んだり、さまざまな活動が組み込まれていました。また、齋藤先生が歩き回り、多くの生徒と関わりを持っていたのもとても印象的でした。
 iPadが一人1台の環境で使えるようになったときに問われるのは、授業のなかでの学習活動にどのように組み込んで、先生が実現したいと思っていた学びの形が実現できるようになるか、だと思います。
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 No.2に続きます。
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(為田)