教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

書籍ご紹介:『教師のいらない授業のつくり方』

 京都教育大学附属桃山小学校の若松俊介先生から、著書『教師のいらない授業のつくり方』をお送りいただきました。ありがとうございます。

 若松先生の授業は、これまでに何度も参観させていただいていて、このブログでもレポートを書かせていただいていますが、いちばんの特徴は、若松先生が子どもたちにいろいろなものを信頼して任せて、自分で学んでいくようになる授業を作っていることだと思っています。
 この本のなかで、僕が撮影した写真と書いた文章を掲載していただいています(p.18-19)。この写真、すごく印象的で、「若松先生らしい!」と思って撮影したのをすごく覚えています。
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blog.ict-in-education.jp

 「教師のいらない授業」とは、技術の問題だけではなく、先生のマインドセットの問題が大きいと思います。表面的なことだけでなく、どうして教師のいらない授業でなければならないのか、というところを理解していなければならないからです。だからこそ、若松先生の気持ちがたくさん書いてあるこの本は、たくさんの人に読んでいただきたいなと思いました。

 ICTについても、「ICTで考えの整理を助ける」というところで、ノートより簡単に自分の考えを書くツールとしてのタブレットPC、考えの整理や学習過程の共有に使っているロイロノート・スクールの紹介がされています。タブレットPCもロイロノート・スクールも、管理のツールとして使っているのではなく、子どもたち同士、子どもたちと先生を繋ぐツールとして使っていることがポイントだと思います。

最初は、ただ単に自分の考えた結果だけを共有していましたが、お互いの考えの整理の仕方や学習過程を共有するようになったことによって、さらに子どもたち同士がつながって学び合っていくことが可能になりました。
また、タブレットPC等を活用することで、先生が子どもたちの考えをこれまで以上に把握することができるようになります。これまでであれば、一人ひとりのノートを集めたり、教室内を歩き回ったりしないと子どもたちの考えを知ることはできませんでした。しかし、今は手元のタブレットPCで全員の考えを一気にしることができます。知ることができるからこそ、それぞれの考えをつないでいけるようになります。(p.115)

 ICTは、「教師のいらない授業」をつくるうえで、大きな武器にもなっているのだと思います。教師のいらない授業は、放任するというわけではなく、繋がりを持ち続けて、信じて任せる授業だと思います。そのために、繋がるツールとしてICTは価値があるし、子どもたちは自分の考えをどんどん発信するためのツールとしてICTを紙と同じくらい熟達しなければなりません。そのうえで、デジタルかアナログか、どちらを使うかを選べるようになればいいと思います。

自分で考えたことを、プレゼンテーションに整理する子もいれば、文書作成アプリでレポート形式に整理する子、手書きで新聞をつくってまとめる子など、実に様々です。何となく便利そうなアプリを、何も考えずに使っていくのではなく、自分から積極的に使いこなす子になります。
ICT機器の活用方法を自分たちで選んでいけるようになると、先生の「こうしなさい」「こうしましょう」も減っていきます。むしろ先生をどんどん乗り越えるICT機器の使い手となっていくでしょう。(p.143)

 自分で学んでいける力をつけるために、信頼して任せていく若松先生の授業の仕組みとその裏側にある「なぜ」を知れる本だと思います。

(為田)