教育ICTリサーチ ブログ

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『デジタル社会の学びのかたち Ver.2』 ひとり読書会 No.10「10章 テクノロジ世界のなかで教育を再考する」

 A・コリンズ、R・ハルバーソン『デジタル社会の学びのかたち Ver.2 教育とテクノロジの新たな関係』をじっくり読んで、Twitterハッシュタグ#デジタル社会の学びのかたち」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。

 いよいよ最終章となる、「10章 テクノロジ世界のなかで教育を再考する」を読みました。なんだか詩的な章タイトルです。新しい教育システムに向けたビジョンの幕はまだ開いたばかりで、新しい教育システムを実現するためには、リーダーがリソースを投入する必要がある、という言葉から章は始まります。


本書を通して私たちが主張してきた教育の再考とは、社会のすべての人々が、新しい教育リソースにアクセスできるようにする戦略を目指すべきだということです。そして、人々にリソースを活用するモチベーションを与えるのです。社会、教育、学習を分けて考えるのではなく、それらの相互の影響を考えることが、教育の再考には求められています。(p.156)

 「社会、教育、学習を分けて考えるのではなく、それらの相互の影響を考える」という部分には大賛成です。学習と社会の相互の影響は、もっともっと考えられるべきだと思っています。松岡亮二先生の『教育格差』とかとも僕の中では繋がってくる話です。
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 教育の再考は、全部で7つの分野にわたって詳しく紹介されます。それぞれの部分について、メモをまとめてみました。事例などもたくさん触れられている箇所なので、本を読んで見るとより深く学べると思います。

  1. 学ぶことの再考
    • 「学習とは、学校が提供する科目を履修することだという考えとともに、私たちは育ってきました。本書を通して主張してきたように、学校に行くことが教育だという見方は、新しいテクノロジが学習を学校の壁の外にもち出すことで、ゆっくりと見直されてきています。」(p.156)
    • 「学校をどのように改善できますか?」ではなく、「どうしたら学習者が自分で学びの道程をつくることを支援できますか?」「どうしたらより多くの人たちに、新しいテクノロジ・リソースを提供できますか?」「どのようなツールが、人々が自力で情報を探し出す活動を支援できますか?」と問う必要がある。(p.156-157)
    • 「学習が学校の外に移ることで、私たちの学習に対する概念が広がり始めます。教室と教室外の場所とを行き来するハイブリッドな学習経験を目にすることができるでしょう。」(p.157)
    • 「もし学校が、学習テクノロジの進歩と歩調を合わせて十分に変化することができなければ、学習は学校を置き去りにするでしょう。」(p.159)
  2. モチベーションの再考
    • 「現在の学校制度は、生徒の学ぶことに対する内発的なモチベーションを引き出すことに役立っていません。多くの生徒が経験しているこの(学びからの)逃避は、理想以下の教室体験によってつくられています。」(p.159)
    • 「学びつづける世代になるために学習者は、自分の学びを今まで以上にコントロールする必要があります。学習者のコントロールは、子どもたちが自分自身の学びをサポートするツールを手にすることによって育成されます。」(p.160)
  3. 学ぶべきことの再考
    • 「学ぶことに対する内発的なモチベーションを提供することは、(略)科目を修了した際の報酬についても再考することになります。学校が提供するプログラムと、知識経済において成功する人生を送るために必要なスキルの間にはミスマッチが起こっています。」(p.161)
    • 「社会が取り組まなければならない課題は、豊富なテクノロジリソースがある時代を生徒たちが生きる準備をするうえで、最高のカリキュラムであるかどうかを問うことです。」(p.162)
    • 例えば数学:「テクノロジは、生徒が学校でかなりの時間をかけて学ぶアルゴリズムのすべてを取り扱うことができます。それ以上に、数学的に考えることを学ぶのは、かつてなく重要です。それゆえ、コンピュータのアルゴリズムを真似る方法を学ぶことよりもむしろ、現実の問題を解決するために数学的ツールを活用する方法を学ぶことに生徒の時間を費やすべきでしょう。実際、コンピュータ・ツールを適切に使用する方法を理解することは、アルゴリズムを実行することよりも、非常に多くの思考を必要とします。これは数学を教える上での新しい課題です。」(p.163)
    • 「スキルとして重要なのは、もはや暗記することではありません。ほしい情報をウェブ上で見つける方法を知ることです。信頼性の異なるウェブサイトのなかから、見つけた情報を評価する方法も含まれるでしょう。すなわち、人々は、より多くの情報を入手することよりも、新しい学習スキルを伸ばす必要があるのです。」(p.164)
  4. キャリアの再考
    • 「キャリアの流動性は、生徒がより適応力を身につけるよう教育機関に求めています。」(p.164)
  5. 学びと仕事の間での移行の再考
  6. 教育のリーダーシップの再考
    • 「次世代の教育リーダーは、政治的課題とともにテクノロジに関する問題と向き合う必要があるでしょう。」(p.170)
    • 「すべての生徒と家庭にコンピュータとオンラインアクセスを提供する政策の推進は、ひとつの可能性です。非エリート層が膨大な教育リソースへアクセスできるようになります。」(p.170)
    • 「これまでの事例が示しているのは、学校を内部から変えることと、学習者が学校外のリソースといかにつながれるかを、教育リーダーが考える必要があるということです。」(p.172)
  7. 教育における政府の役割の再考

 そのうえで、どんな将来のビジョンを持っていなければならないのか、というのが最後に書かれています。

平等性と経済発展の両面に対応できる教育を実現するために、リーダーたちは伝統的な取り組みを発展させ、新しい情報テクノロジの力を取り入れるようになる必要があると私たちは考えています。そのために学校は、学習プロセスをコントロールすることをある程度あきらめることになるでしょう。その代わりに、学びを改善する最新のツールを、もう一度公的な制度が手に入れることになるのです。(略)
保護者や市民は、教育改革という広い視点から、この変化を後押しすることから始める必要があります。(p.176)

 「デジタル社会の学びのかたち」とは、どういうものになっていくのかを考えるきっかけになる本だと思いました。実現のためには、リーダーが必要というのもそうだと思いますが、僕らにもできることはあると思います。
 僕は、保護者には学校を応援してほしいです。リーダーシップある校長先生や能力の高い先生がいらっしゃる学校でなくても、校長先生はじめ先生方の背中を保護者が押してくれれば、変われる学校もたくさんあると僕は信じています。そうした「変え方」もあると思っています。学校が全員にとって素晴らしいところだとは思っていないので、選択肢はあればいいと思いますけど、学校が学びの場として機能する場面もまだたくさんあると思っています。全否定ではなくて、僕はアップデートで変えていきたい。そういう学校を応援していきたいと思いました。

 最終第10章まで読み続けてきて、無事にひとり読書会を終了となりますが、最後に特別編をご用意できましたので、No.11へ続きます。

(為田)