A・コリンズ、R・ハルバーソン『デジタル社会の学びのかたち Ver.2 教育とテクノロジの新たな関係』をじっくり読んで、Twitterのハッシュタグ「#デジタル社会の学びのかたち」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。
「4章 アメリカにおける学校教育の発達」を読みましたので、興味深かったところのメモを貼っていきます。アメリカにおける学校教育の変化の話がメインですが、日本と近いところもたくさんあります。
「学校が、教育の場として重要でなくなってきているのだと思われます。長い間続いた学校教育と学習とを同一視する見方は廃れ始めていくでしょう。大人向けから始まり、やがてK-12の子どもたち向けに他の理にかなった学習の場の発展が進むにつれて、そうなります」(p.61) #デジタル社会の学びのかたち
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) October 20, 2020
章の始めからなかなかすごい言葉でスタートしました。それでも学校がすべきこと、学校にしかできないことは残ると僕は思っていますが、学校以外の場での学びが増えてきていて、学校の機能は変わっていくべきだ、とは思います。より細かく言えば学校という場がもつべき機能/もっておいてもいい機能、学校というシステムがもつべき機能/もっておいてもいい機能が再定義されればいいと思います。かつては学校という場でもっていなくてはいけなかったことが、テクノロジーによっていまは学校がもたなくてもよくなった、というものもたくさんあると思います。そうした再定義が起こることで、いい意味で、ここに書かれている「長い間続いた学校教育と学習とを同一視する見方は廃れ始めていく」という方向へ進めばいいな、と思います。
「このような教育の構造的変化は、歴史的にめずらしいことではありません」(p.61):徒弟制→公教育制度の変化は19世紀前半。今度は、テクノロジによって、公教育制度からまた新しい構造的変化が起こるのだ、ということ。 #デジタル社会の学びのかたち
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) October 20, 2020
かつては公教育のシステムそのものがなかったわけで、教育の構造的変化ははじめてではない、というふうに書かれています。では、いまの公教育制度はどんなニーズに答えるべく生まれたのかを知っておくことで、さっき書いた、学校という場がもつべき機能/もっておいてもいい機能、学校というシステムがもつべき機能/もっておいてもいい機能の再定義ができるのではないかと思います。
学校制度の進化:「公教育制度を構成するさまざまなピースが、直面した問題に対して自然な解決策だった」(p.72-74) 出席の義務づけ、学年別の学校、テスト、教科書、カーネギー単位、総合制ハイスクール #デジタル社会の学びのかたち
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) October 20, 2020
「公教育制度を構成するさまざまなピースが、直面した問題に対して自然な解決策だった」(p.72-74)
- 出席の義務づけ
- 公教育制度が強力に推進。アメリカでは、多くの人が教育を受けていない状況と、多くの新しい移民の問題に直面していた。
- 出席を義務づけることで目指したのは、賢明な政治的判断ができるように大衆を教育すること。
- 国全体の繁栄のために、「すべての民衆が生産的な労働者となるために必要な、スキルと知識を提供すること」(p.72)も目標として掲げられた。
- 学年別の学校
- 「学年別の学校は、出席の義務化と移民の増大によって引き起こされた、生徒の膨大な増加という問題への対応策でした」(p.72)
- 同じ年齢と経験の生徒を一緒に集めることで、教師は生徒のニーズの解決に取り組みやすくなった。「すべての生徒に、同じレッスンを、同じタイミングで教えることができるようになった」(p.72)
- 生徒の評価は、同じ教材に対して行うことができ、教師の負担を軽くした。授業準備、クラスの統制を容易にした。
- テスト
- 「すべての生徒を、おおよそ同じ能力をもつクラスごとに振り分けるために導入」(p.72)
- 生徒の進捗を見るために使われ、在籍する学年で学ぶべき内容を習得したことが証明されれば、次の学年へ進級できる。
- 反抗的な生徒たちが留年しないように勉強に向かわせる動機づけにも利用された。
- 教科書
- 「生徒が何を学ぶべきかという問題を解決するために導入されました」(p.73)=カリキュラムに網羅されるべきものは何かを明らかにするのに役立った。
- 「初期において、教科書の主要な目的の一つは、教えるべき知識を教師に提供することでした」(p.73)
- 「今日でさえ、多くの教師は、教えようとする内容をみずから学んだり、生徒に教材をいかに提示するか指針を得たりするために、教師用指導書に頼っています」(p.73)
- カーネギー単位
- アメリカ全国のバラバラな状況における統一性の問題を解決する。転校時に学習内容の調整をするのに利用。
- 総合制ハイスクール
- さまざまなタイプの生徒に合わせて、多様なコースを提供できるようになった。多種多様な生徒の学習ニーズを満たすための解決策だった。
「現在のこうした学校制度の特徴は、多様な民衆を教育するための公教育制度を構築するという問題を解決するための必然的な解決法でした。」(p.74) #デジタル社会の学びのかたち
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では、かつての問題がこれらの公教育の制度によってしかいまも解決できないのか、ということを考えるべきだと思います。テクノロジーによる教育の情報化が進み、学びの個別最適化が進んでいくと、このなかの「学年別の学校」や「テスト」などは大きな影響を受けます。でも、それは先生方にとっても児童生徒にとっても、プラスに働くことも多いように思います。
「人口の多様性の増大により、同じ教授方略を用いて、異なる背景をもつ生徒を教えることが、ますます難しくなっています。(略)多様性は、すべての学習者のニーズや能力に対処するために教育を個別化してほしいという学校への圧力を増大させているのです」(p.76) #デジタル社会の学びのかたち
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「アメリカ経済がより高いレベルで豊かになることで、テクノロジを活用して子どもたちへの教育をカスタマイズする保護者の能力も高まりました。」(p.76) #デジタル社会の学びのかたち
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テクノロジ革命は、「教育制度にあらゆる影響を与えています。(略)これは教育に対して、事実を記憶し、ルーチンの実行方法を学ぶような伝統的な教育目標から脱するたいへん大きなプレッシャーがかかっていることを意味しています。」(p.77) #デジタル社会の学びのかたち
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) October 20, 2020
次の5章では、テクノロジによって変わりつつある教育の姿について、書かれています。
No.5に続きます。
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(為田)