教育ICTリサーチ ブログ

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『一人1台のルール』読書感想文大会

 6月に発売になりました『一人1台のルール ―― 自由に情報端末(デジタル)を使えるようになるために』の感想文をお寄せいただきましたので、ご紹介していきたいと思います。
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一言で言うと、希望。こんな学校があったのか!すばらしい。智栄という字もよい笑。

やらない理由ばかりで変わろうとしない先生たちに辟易していたので、例えるなら闇の中の光。

公立の学校の先生たちには、さとえ学園の爪の垢煎じて飲ませたい。嫌なら公立でこれやってほしい。
やってほしいと書くと今度は方法論みたくなるけど、真似して欲しいのは、そのマインドセットとスキルセットだ。

何故、何のためにやるのかが、公立ではできてない。教科書ベースの指導、去年と同じ授業、ICTは使ったふり。あるいは臭いものとして蓋。

いざGIGAが始まって、自分ができないからという理由でキーボード入力も指導しない。デジタルに不慣れな人がデジタルに不慣れな人を再生産してることに、何の疑問も持たずに教師をしている。いろいろ理由があるんだと言い訳される。

もう一度リセットして欲しい。破壊と再生。さとえ学園というすばらしいロールモデルがあるから、再生も捗るというもの。

さとえ学園は待ってくれない。もう次のステップに進み、どんどん良質なロールモデルを築いていってほしい。【匿名希望】

 さとえ学園小学校の実践が、そのまますべての学校に適応できるかというとそんなことはないと思うのですが、「どの部分ならば、うちの学校でもできるだろうか」と考えるきっかけになればいいな、と思っています。

さとえ学園小学校の実践を読ませていただいて、特に素敵だなと個人的に感じたことを3つ述べさせていただきます。

  1. ビジョンとゴールの設定が共有されていること。
  2. 子供の実態を把握した上でレベルアップ型のルールが作られていること。
  3. レベルアップ型のルールの中身がルーブリックとして示されていること。

1 については、iPadはじめICT端末を使うことが目的ではなく、当たり前のように授業や学校、家庭といった子供の世界で使うことで、どのような資質・能力を育てていきたいか。詳しく記されておりませんでしたが、きっとさとえ学園の先生方でしっかり共有されていることが素敵だと感じました。本書では、ICTの光の部分というように表現されていますが、そこがやはり大切だと感じました。またゴールについても、Substitution(代替)からRedefinition(再定義)という、その先に向かって新しい何かを生み出していくという熱意も大変刺激をもらいました。

2 については、「よくないiPadの使い方をする子もいますよ。たくさん」と記されており、失敗も成長のチャンスとして捉えているところ、そして具体的な解決の姿を点数化して目にみえる形で示されているのも大変勉強になりました。勤務している学校でも、やはりよくない使い方をする子がいます。その時、一時預かるであったり、指導はしますが、どうしても「次からはしないように!」という大人目線の指導になってしまいがちです。子供自身に「次からはどうしたらいいのか。どのように使うべきなのか。」考えさせながら失敗を受け止めさせて、具体的な行動に落とし込んでいく必要があると改めて反省しました。

3 については、グリーン、ブルー、ゴールドと、具体的な姿がルーブリックのように段階的に示されているところが、とても素敵でした。きっとこのルールを描く際には大変な労力があったと思われます。そして、子供の実態に合わせて常に変えていく、作って終わりではなく運用しながらアップデートしていくという視点も大切だなと感じました。

以上、拙い文章で申し訳ありませんが、感想とさせていただきます。【池邊 寛@戸田第一小学校】

 現場目線での感想をいただいてありがとうございます。池邊先生が書かれている、3の部分について、「具体的な姿がルーブリックのように段階的に示されている」というところ、とても重要だと僕も思っています。それぞれの学校でルーブリックを作っていく、という試みが部分的にでも進めばいいな、と思います。

以前からブログで紹介されていたさとえ式レベルアップ型ルールに興味があり,読んでみました。こういったルールというのは,ともすれば最終的には全員をゴールドにすることを目的として設定されがちだと思うのですが,それだと子どもたちの方でもそこまで真剣にルールを守ろうとしないかもしれません。その点,6年生でもゴールドが10%しかいないとなると,せっかく上のレベルに上がった子は下がりたくないと思うでしょうし,下のレベルの子は頑張ってレベルアップしたいと思うのではないかと思います。
またルールも,「こうしてはいけない」と禁止するルールではなく,「上のレベルに行けばこれができるようになる」というように設定されているところがとても素敵だと思いました。背景には,子供だからと言って侮ったり,甘くしたりすることなく,自分で自分を律する力を身に付けられるように導く姿勢があるのだなと思いました。単に「子どもを信頼して任せる」というだけの,良くいえば性善説,悪くいえば無責任な任せ方ではなく,それぞれの子どもたちを一人の人格として尊重しているのだなと感じました。【清遠】

 そのとおりで、「子どもたちを信頼して、iPadを賢くなるための道具として使ってもらっている」という部分が素晴らしいですよね。

近年、「ブラック校則」という言葉とともに、日本の学校における人権感覚にようやく注目が集まりはじめています。校内でも「一人1台のルールをどうするべきか」という話題があがる中、このまま禁止型のルールを増やしてしまえば社会の流れと学校内のルールとの乖離の再生産になってしまうのではないかと考えていました。
そんな中、「レベルアップ型のルールづくり」という言葉に惹かれて本書を読ませていただきました。

iPadの活用場面やルールの運用、具体例などが先生方の言葉とともに書かれており、実践自慢でも評論でもないので、勤務校ではどのような形で進めていけそうかをイメージしながら読むことができました。

実際に本校でも、本書を参考に児童たちがレベルアップ型のルールメイキングを行ってみています。
子どもたちも経験からルールを考えるので、「◯◯したらダメ」という禁止型のルールがはじめに出てくるのですが、本に出てくるさとえ学園のルール運用のイメージを伝えながら少しずつ考えています。

「児童主体」「押しつけじゃないルール」というキーワードでルールをつくるヒントが詰まっている一冊です。【小林湧@戸田市立新曽小学校教諭】

 小林先生が行っているルールメイキングの授業にお役に立っているとしたらとてもうれしいです。「○○したらダメ」という禁止型のルールではなく、デジタルをどう使っていくのかというルールを考える機会になるといいと思っています。

子どもたちがTrelloなど、さまざまなアプリを活用しているのを読み、正直とても驚きました。社会人の私よりよっぽど使いこなしていると感じました。子どもたちでここまでできるのであれば、大人の私たちが「できない」というのは無いですね...。

仕事柄、一人一台になることで、これまでできなかったこと、これまでできたけれどなかなかやりづらかったことがよりスムーズにできるようになるということは理解していますが、端末のみ使う(使わなければいけない)!など正直極端なこともたくさん見てきました。でも、この本の中でも「ノート」「ワーク」という言葉が出できているように、どちらかだけではなく、併用していくということが大切なのだと改めて実感しました。

この本を参考にさせていただき、こういった使い方もできますよということを関わっている学校にも伝えていきたいと思います。とても参考になりました。もしかすると、「ここまではできない」という声があるかもしれませんが、これならやれそう!と思える部分をやってみる、そして、できることを広げていくという方向にできるといいなと思います。【みか】

 ぜひ、こういった実践をしている学校があるということ、ルールを作ってみるという方法があるということを広げていっていただければと思います。

今まさに悩んでることに対する答えや参考にして取り組んでみたいことが、たくさんありました。勤務校では、4月から授業で活用することになり、ルールや使い方などは、先進校のものを参考にして、私が中心になってというか私だけで案を出して、管理職から手直しをしてもらって決まりました。でも、管理的にしたくない思いとその逆の思いが錯綜していました。担任している6年生は、やはりいろいろやらかします。どうしても注意する必要があるんです。このような今だからこそ、この本から学ぶことが多かったです。やらかした子供達と自分達が守れるルール作りをしようと考えていました。守れるルールより、「このレベルに行けた人だけ使える機能が増える」や、「レベルダウンがあり、戻るためには、相応の対処をしないといけない」というのは、とてもいいシステムだと思います。職員間の共通理解や保護者への啓蒙などもまだまだだと思いました。先生方のコメントからも児童の実態や先生方の悩みや思いが伝わってきました。【岩城豊@山形県中山町立長崎小学校】

 そうですね、先生方の間での共通理解や、保護者との情報共有も大変重要だと思います。学校でデジタルを学びのツールとしてどう使うかということについては、保護者の使い方とは違う部分もあると思いますので、体験してもらったり、ルールを共有したりして、理解をしてもらうことが重要だと思います。

私は、熊本県のある地方の公立小中学校でICT支援員として「一人1台」のサポートをしています。
(会社全体でその地域の小中学校12校を担当しています)
端末は、Windowsタブレット(キーボード付属)です。
タブレット導入から約3ヶ月経ち、少しずつ子どもたちの生活にタブレットが浸透してきたところです。

そんなときにこの書籍のことを知り、拝読しました。
気になる箇所からピックアップしてざっくり読んだだけで恐縮なのですが、現時点での感想をお送りします。

まず、前提として私が担当している地域の学校の課題として大きく2つあると捉えています。

1.タブレットを使うためのインフラが十分でない
2.先生方がどのようにタブレットを活用していいか分からない

4月の導入当初から最近までは、1でつまづくことが多いという現状がありました。
具体的には、

タブレットのスペックの問題で新たなアプリをDLすることが許可されていない
②ネットワークの帯域や契約内容の問題で、校内で同時にタブレットを使える台数が圧倒的に少ない

ことがあげられます。
ですので、書籍の第1章については「真似できない、、、」という切ない気持ちが生まれたもの正直なところです。
でも、これらのアプリが役に立つのであれば、それをヒントに私たちの持つタブレットでそれに代わるやり方がないかと考えられます。
今後いくつか検証をしていきたいと思っています。

私が最も大きな気づきを頂いたのは、「はじめに」に書かれていた、「iPadをかしこくなるための道具として位置付けて、子どもたち自身が使用の是非を判断している」という点です。

私たちの学校でも、子どもたちはタブレットに馴染んできています。
ICTに疎い先生もいらっしゃる中で、子どもたちのほうがタブレットで何ができるのか詳しく知っているというケースも散見されます。
そんな中で、子どもたちにモラルを身に付けてもらい、安全にタブレットを活用してもらうためには、子どもたち自身に判断する力を育んでもらうほかないと気づきました。
そのためには、「タブレットがどんな存在なのか」を定義することから始める必要があります。
それがそれぞれの学校でなんと定義されるかは未知数ですが、ICT支援員としてこの本から得られた知見やヒントを現場にフィードバックして、先生方のサポートを続けていきたいと思っています。【ランラン@ICT支援員(熊本県)さん】

 第1章だけだと、「うちの学校はこんなの無理…」となるかもしれませんが、その根底にあるルール作りの部分は、さまざまな学校の状況に合わせて適応できることも多いと思っています。ぜひ、先生方のサポートのお役に立てていただければと思います。

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 こうして感想を直接お寄せいただくことで、また僕自身も考えをアップデートしていきたいと思っています。感想をお寄せいただいた皆様、本当にありがとうございました。

(為田)