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静岡サレジオ高等学校 授業レポート No.2(2023年10月5日)

 2023年10月5日に静岡サレジオ高等学校を訪問し、田中春士 先生が担当する高校2年生ソフィアコースのIBDP(国際バカロレアディプロマプログラム)の日本語A:文学の授業を参観させていただきました。この授業はグループで1台ずつ電子黒板を使ってディスカッションができるラーニングコモンズで行われました。生徒たちは一人1台のChromebookを持ってラーニングコモンズへ来て、グループごとに座ります。

 授業では、『若きウェルテルの悩み』をクラス全体で読み深めていました。『若きウェルテルの悩み』を読み深めるための授業スライドを田中先生が用意して、クラスで共有してあります。授業スライドのページごとに、「ロッテからウェルテルへの愛について」「語り手について」「ウェルテルとアルベルトの対比について」「ウェルテルの苦悩について」などと課題テーマが設定されています。

 どのグループも同じ授業スライドにアクセスしていますが、グループごとに違うテーマに取り組んでいるので、それぞれのグループが別のページにどんどん書き込んでいきます。各グループのなかで1人ずつが電子黒板に接続して画面を映しながら話し合っていきます。電子黒板に接続している一人以外も全員、自分のChromebookからどんどん共有している授業スライドなどにアクセスします。

 各グループがそれぞれ課題テーマに自律的に取り組んでいる様子がとてもよかったと思います。それぞれのグループで、必要であれば各自一人で本を読む時間をとり、その後で話し合う時間をとっていました。
 グループのなかで「本を読んで、見つけた部分をどんどん書いていっていい?」「いいよー。後でまとめよう」というふうに方針を自分たちで決めたら、本を読んで課題テーマに関連する部分を見つけた生徒は、共有された授業スライドのメモのところに書き込んだり、グループのメンバーで共有しているGoogleドキュメントにまとめたりしていました。

 田中先生は各グループを回って、より深く読むための問いを投げていきます。ときには、「このページのこの部分だけどさ…」と自分でも『若きウェルテルの悩み』の一節を読んで生徒たちと一緒に考える場面もありました。先生がそうして一文ずつを生徒たちと一緒に丁寧に読んでいくからこそ、生徒たちにも丁寧に文章を読む姿勢が育つのではないかと思いました。
 田中先生は、「焦点を定めて一貫して考えていく、そういう読み方をできるようになってください」と言っていましたが、生徒たちにしてもらいたい読み方を先生が同じようにしているのはとてもいいなと思いました。

 『若きウェルテルの悩み』を読み進めていくなかで、文中にある表現や文中に出てくる社会的な背景などについても自分たちでどんどん検索して、電子黒板でみんなで一緒に見て共有していました。一緒に読むからそこから問いが生まれることもあります。グループ数だけ電子黒板があるラーニングコモンズだからこそできる授業の進め方だと感じました。

 また、ディスカッションの途中で意見などをまとめたほうがいいときには、自分たちでGoogleドキュメントで表を作ってまとめたり。与えられたテンプレートに入力していくだけでなく、自分たちでツールとしてICTを活用している様子が感じられました。

 授業全体を通して感じたのは、生徒たちが課題書である『若きウェルテルの悩み』を何度も何度も手にとって読むということと、先生たちが与えられた課題テーマに受動的に回答していくだけでなく、自分たちで「どう情報を扱うか」ということを考えていて、それに慣れているということでした。
 こうした授業を繰り返していくことで、情報活用能力が確かに育っていきそうだと感じる授業でした。

 No.3に続きます。
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(為田)